秋良と伊織のHappy Ending

ぼくの楽しいハネムーン

第一話

　今日はとても気分がいい。

　だって目のまえに広がるのは、白い砂浜にエメラルドグリーンの海、ヤシの木と鮮やかな花、それに寒さとは無縁の頑張る太陽だ。

　伊織さんがハネムーンにと、ぼくを連れてきてくれたのは西海岸。カルフォルニア州はロサンゼルス郡のビバリーヒルズだ。

　とはいえ現地に着くまで、まさか西海岸だとは思わなかった。到着してのお楽しみだと、伊織さんが行先を教えてくれなかったのだ。

　海だとは聴いていた。だからてっきり熱海か、いいとこ沖縄あたりかと想像したのだけれど、まさか八千キロ以上も離れた海外だとはつゆと思わなかった。

　やはり伊織さんがとる行動は、凡人であるぼくには理解不能だ。しかも金銭感覚が麻痺している。ファーストクラスのチケットを見た瞬間に気づくべきだった。

　けれどもそんなケチな考えは、現地のビューを目にした途端に吹っ飛ぶ。

　これから十日間、ぼくと伊織さんは西海岸を満喫する。