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第二章
第20話「色づく世界」
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俺は突然のアキラの涙に、矢に射抜かれたような衝撃を受けた。
アキラはそのまましゃがみこむ。嗚咽を押さえても涙は止まらない。
――ビックリした。
まるで女の子が泣くところを、初めて見たかのように……胸を衝かれた。
「……うれしい……私、うれしくて……」
二年前のあの夜……思えばアキラは、けして泣かなかった。
手術の恐怖、病気との葛藤、知らない土地への不安、一人きりの孤独感……そんなものを抱えてたはずなに……。
あの強がりは、弱い自分に負けないための精一杯の虚勢……。
本当は弱くて、脆くて、儚くて、でも、それに負けないように精一杯頑張ってる……アキラは変わってなんか、いなかった。
しゃがみこむアキラが、二年前のアキラと被って見える……
どんなに背が伸びようが、大きくなろうが、アキラはやっぱりアキラなんだ……
俺はそのまましゃがんでいるアキラの肩を、背中から抱え込んだ。
なんだか、そうしたかった。
見ためより、ずっと小さく感じた。
「皓平……」
「ん?」
「私、やっぱり神様信じるよ」
「え?」
「きっと、だれの中にも神様はいて……もしかしたら、皓平は私にとって神様だったのかもね」
何を言い出すんだと……正直慌てた。
俺は平凡で、何の取り柄もない、普通の人間だし、これからもそうだろう。でも、こんな俺でも、だれかの役に立てたなら……うれしい……。
必要とされたことが、うれしい……こんな気持ち初めてだ。
「私……皓平と逢えて、よかった」
アキラの顔を照らす朝日の光が、他のものも染めていく……
暗くて何の色もついてなかった世界を、染めていく……
こんな朝焼け見たことない。
闇を溶かすように、朝日は空に景色に……広がっていった。
今まで知らなかった……世界ってこんなに綺麗だったんだ。
世界が、色づきはじめたのだと思ったけど……それは違う。
きっと俺の方が変わったんだ。
(アキラとの出会いが、俺を変えた――)
アキラの横で見るほかの景色は、どんなのだろうか?
この先もずっと、色んな景色をアキラの隣で見てみたいな……
……なんて、ふと思ったけど、
「皓平……?」
「……うん……俺も、アキラに逢えてよかった……」
今の俺には、これが精一杯だった。
いつか……この時感じた素直な気持ちを、伝えられる日が来るといいなと、アキラの横顔を見つめながら……そう思った。
***
もし君が約束の地へたどり着いて、神様と出会ったなら……
君の本当の望みは、叶えられるだろう……
もし、彼女が俺の神様なら、俺の本当の望みも、幸せも……
――彼女にしか、叶えられない。
おわり
アキラはそのまましゃがみこむ。嗚咽を押さえても涙は止まらない。
――ビックリした。
まるで女の子が泣くところを、初めて見たかのように……胸を衝かれた。
「……うれしい……私、うれしくて……」
二年前のあの夜……思えばアキラは、けして泣かなかった。
手術の恐怖、病気との葛藤、知らない土地への不安、一人きりの孤独感……そんなものを抱えてたはずなに……。
あの強がりは、弱い自分に負けないための精一杯の虚勢……。
本当は弱くて、脆くて、儚くて、でも、それに負けないように精一杯頑張ってる……アキラは変わってなんか、いなかった。
しゃがみこむアキラが、二年前のアキラと被って見える……
どんなに背が伸びようが、大きくなろうが、アキラはやっぱりアキラなんだ……
俺はそのまましゃがんでいるアキラの肩を、背中から抱え込んだ。
なんだか、そうしたかった。
見ためより、ずっと小さく感じた。
「皓平……」
「ん?」
「私、やっぱり神様信じるよ」
「え?」
「きっと、だれの中にも神様はいて……もしかしたら、皓平は私にとって神様だったのかもね」
何を言い出すんだと……正直慌てた。
俺は平凡で、何の取り柄もない、普通の人間だし、これからもそうだろう。でも、こんな俺でも、だれかの役に立てたなら……うれしい……。
必要とされたことが、うれしい……こんな気持ち初めてだ。
「私……皓平と逢えて、よかった」
アキラの顔を照らす朝日の光が、他のものも染めていく……
暗くて何の色もついてなかった世界を、染めていく……
こんな朝焼け見たことない。
闇を溶かすように、朝日は空に景色に……広がっていった。
今まで知らなかった……世界ってこんなに綺麗だったんだ。
世界が、色づきはじめたのだと思ったけど……それは違う。
きっと俺の方が変わったんだ。
(アキラとの出会いが、俺を変えた――)
アキラの横で見るほかの景色は、どんなのだろうか?
この先もずっと、色んな景色をアキラの隣で見てみたいな……
……なんて、ふと思ったけど、
「皓平……?」
「……うん……俺も、アキラに逢えてよかった……」
今の俺には、これが精一杯だった。
いつか……この時感じた素直な気持ちを、伝えられる日が来るといいなと、アキラの横顔を見つめながら……そう思った。
***
もし君が約束の地へたどり着いて、神様と出会ったなら……
君の本当の望みは、叶えられるだろう……
もし、彼女が俺の神様なら、俺の本当の望みも、幸せも……
――彼女にしか、叶えられない。
おわり
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