47 / 95
3rd round after
第47話「三周目〜対時〜」
しおりを挟む
ノックなどしない。オレは乱暴に図書準備室のドアを開けた。中では一人呑気に本を読みながら、昼食をとっている如月がいた。
突然部屋に入って来たオレの姿に、如月は目を丸くしていた。構わず如月に詰め寄る。
「お前、五十嵐陸と菊池将暉のこと、知ってるなっ」
「何なの、いきなり入って来て、部外者立ち入り禁止なんだけどっ」
「二人のこと、知ってるんだろっ!」
喧嘩腰のオレに、如月は立ち上がった。
「知らないって言ってるでしょっ!」
如月も負けじとオレに言い返す。鬼気迫る勢いだ。如月のことを知らなかった頃の自分なら、ここで引き下がったかもしれない。だがこいつの「演技力」はよく知っている。
「嘘だ、だったら何で、さっき将暉の席の方をじっと見てたっ。昨日だって、陸の席を見てただろ!」
「しつこいわね、知らないって言ってるでしょ!」
「お前、何か知ってるんだろ。二人が何で消えたか、知ってるんだろっ!」
女子に対して、こんなにムキになって怒鳴ったことなどない。オレはそれだけ追い詰められていた。それにこんな風に詰め寄られたら、普通の女子なら泣き出したかもしれない。なのに如月は一歩も引かない。そのことが、無性にオレを苛立たせた。
「……お前が、何か関係してるのか。まさか、お前が二人を消したのか。オレたちのこと、絶対許さないって言ってたもんな?」
すると如月は、驚いたようにオレを見つめてきた。言ってしまった後に言い過ぎだったとオレは思ったが、もう後には引けない。二人の存在が掛かってる。しばらくの後、如月はオレを冷めた目で見つめてきた。
「知らないわよ、二人が消えた理由なんてっ」
如月は次には、あざけるように吐き捨てた。
「ただ、あんな奴ら消えて良かったんじゃない? せいせいしたわっ」
その如月の態度に、オレの何かがブチッとキレた。体が勝手に動く。腕が如月の襟元を掴もうとする。
その瞬間――
如月は、自分に伸びてきたオレの手首を片手で掴み、もう片方の手でオレの肩を瞬時に掴んだ。そのまま下からオレの体を突き崩し、準備室のテーブルの上に押さえつけた。
「ぐわっ!」
肩を決められ、その反動で呻き声がオレの口から飛び出た。
「……痴漢撃退法、マジ、役に立った。八神、人を見た目で判断すると、痛い目に合うわよっ」
(な、何なんだ、こいつ!)
オレはどうして自分が机に押さえ込まれて、関節技を喰らっているのか、わけが分からなかった。
「女に平気で手を上げる根性、あんたたちみたいな奴ら、絶対ろくな大人にならない。消えた方が世の為よっ」
如月はそう叫ぶと、全体重を掛けてオレを締め上げてきた。
「痛たたたたっ、ちょっ、ちょっと待て!」
「挙句、人のせいにするなんて、あんたのせいじゃないのっ!」
そう言われて、ハッとした。オレのせい。そうだこれは完全に如月への八つ当たりだった。ただオレは何で「それ」を如月が知っているのか、締め上げられる中で疑問に思った。
如月は反動をつけ、トドメを刺すかのようにグッと力を込めて、テーブルにオレを更に押さえつけた。一層関節が締まり、オレは思わず「ぐわっ」と悲鳴を上げてしまった。
如月はオレから離れると、素早く自分の弁当箱を回収し、準備室のドアに手を伸ばした。
「次、おんなじことしたら、世間的に抹殺してやる」
そう捨て台詞を吐き、準備室を出て行った。
怖すぎる。女子にこんな恐怖を感じたのは、生まれて初めてだ。
元々告白ドッキリの件で、怖い奴だとは分かっていた。だがさっきの護身術は何なんだ、心身共に怖すぎる。今更ながらとんでもない女と関わってしまったと、オレは心の底から後悔した。
つづく
突然部屋に入って来たオレの姿に、如月は目を丸くしていた。構わず如月に詰め寄る。
「お前、五十嵐陸と菊池将暉のこと、知ってるなっ」
「何なの、いきなり入って来て、部外者立ち入り禁止なんだけどっ」
「二人のこと、知ってるんだろっ!」
喧嘩腰のオレに、如月は立ち上がった。
「知らないって言ってるでしょっ!」
如月も負けじとオレに言い返す。鬼気迫る勢いだ。如月のことを知らなかった頃の自分なら、ここで引き下がったかもしれない。だがこいつの「演技力」はよく知っている。
「嘘だ、だったら何で、さっき将暉の席の方をじっと見てたっ。昨日だって、陸の席を見てただろ!」
「しつこいわね、知らないって言ってるでしょ!」
「お前、何か知ってるんだろ。二人が何で消えたか、知ってるんだろっ!」
女子に対して、こんなにムキになって怒鳴ったことなどない。オレはそれだけ追い詰められていた。それにこんな風に詰め寄られたら、普通の女子なら泣き出したかもしれない。なのに如月は一歩も引かない。そのことが、無性にオレを苛立たせた。
「……お前が、何か関係してるのか。まさか、お前が二人を消したのか。オレたちのこと、絶対許さないって言ってたもんな?」
すると如月は、驚いたようにオレを見つめてきた。言ってしまった後に言い過ぎだったとオレは思ったが、もう後には引けない。二人の存在が掛かってる。しばらくの後、如月はオレを冷めた目で見つめてきた。
「知らないわよ、二人が消えた理由なんてっ」
如月は次には、あざけるように吐き捨てた。
「ただ、あんな奴ら消えて良かったんじゃない? せいせいしたわっ」
その如月の態度に、オレの何かがブチッとキレた。体が勝手に動く。腕が如月の襟元を掴もうとする。
その瞬間――
如月は、自分に伸びてきたオレの手首を片手で掴み、もう片方の手でオレの肩を瞬時に掴んだ。そのまま下からオレの体を突き崩し、準備室のテーブルの上に押さえつけた。
「ぐわっ!」
肩を決められ、その反動で呻き声がオレの口から飛び出た。
「……痴漢撃退法、マジ、役に立った。八神、人を見た目で判断すると、痛い目に合うわよっ」
(な、何なんだ、こいつ!)
オレはどうして自分が机に押さえ込まれて、関節技を喰らっているのか、わけが分からなかった。
「女に平気で手を上げる根性、あんたたちみたいな奴ら、絶対ろくな大人にならない。消えた方が世の為よっ」
如月はそう叫ぶと、全体重を掛けてオレを締め上げてきた。
「痛たたたたっ、ちょっ、ちょっと待て!」
「挙句、人のせいにするなんて、あんたのせいじゃないのっ!」
そう言われて、ハッとした。オレのせい。そうだこれは完全に如月への八つ当たりだった。ただオレは何で「それ」を如月が知っているのか、締め上げられる中で疑問に思った。
如月は反動をつけ、トドメを刺すかのようにグッと力を込めて、テーブルにオレを更に押さえつけた。一層関節が締まり、オレは思わず「ぐわっ」と悲鳴を上げてしまった。
如月はオレから離れると、素早く自分の弁当箱を回収し、準備室のドアに手を伸ばした。
「次、おんなじことしたら、世間的に抹殺してやる」
そう捨て台詞を吐き、準備室を出て行った。
怖すぎる。女子にこんな恐怖を感じたのは、生まれて初めてだ。
元々告白ドッキリの件で、怖い奴だとは分かっていた。だがさっきの護身術は何なんだ、心身共に怖すぎる。今更ながらとんでもない女と関わってしまったと、オレは心の底から後悔した。
つづく
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結】箱根戦士にラブコメ要素はいらない ~こんな大学、入るんじゃなかったぁ!~
テツみン
青春
高校陸上長距離部門で輝かしい成績を残してきた米原ハルトは、有力大学で箱根駅伝を走ると確信していた。
なのに、志望校の推薦入試が不合格となってしまう。疑心暗鬼になるハルトのもとに届いた一通の受験票。それは超エリート校、『ルドルフ学園大学』のモノだった――
学園理事長でもある学生会長の『思い付き』で箱根駅伝を目指すことになった寄せ集めの駅伝部員。『葛藤』、『反発』、『挫折』、『友情』、そして、ほのかな『恋心』を経験しながら、彼らが成長していく青春コメディ!
*この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件・他の作品も含めて、一切、全く、これっぽっちも関係ありません。
どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について
塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。
好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。
それはもうモテなかった。
何をどうやってもモテなかった。
呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。
そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて――
モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!?
最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。
これはラブコメじゃない!――と
<追記>
本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。
文化研究部
ポリ 外丸
青春
高校入学を控えた5人の中学生の物語。中学時代少々難があった5人が偶々集まり、高校入学と共に新しく部を作ろうとする。しかし、創部を前にいくつかの問題が襲い掛かってくることになる。
※カクヨム、ノベルアップ+、ノベルバ、小説家になろうにも投稿しています。
曙光ーキミとまた会えたからー
桜花音
青春
高校生活はきっとキラキラ輝いていると思っていた。
夢に向かって突き進む未来しかみていなかった。
でも夢から覚める瞬間が訪れる。
子供の頃の夢が砕け散った時、私にはその先の光が何もなかった。
見かねたおじいちゃんに誘われて始めた喫茶店のバイト。
穏やかな空間で過ごす、静かな時間。
私はきっとこのままなにもなく、高校生活を終えるんだ。
そう思っていたところに、小学生時代のミニバス仲間である直哉と再会した。
会いたくなかった。今の私を知られたくなかった。
逃げたかったのに直哉はそれを許してくれない。
そうして少しずつ現実を直視する日々により、閉じた世界に光がさしこむ。
弱い自分は大嫌い。だけど、弱い自分だからこそ、気づくこともあるんだ。
彼女は終着駅の向こう側から
シュウ
青春
ぼっちの中学生トヨジ。
彼の唯一の趣味は、ひそかに演劇の台本を書くことだった。
そんなトヨジの前に突如現れた美少女ライト。
ライトをみたトヨジは絶句する。
「ライトはぼくの演劇のキャラクターのはず!」
本来で会うことのないはずの二人の出会いから、物語ははじまる。
一度きりの青春を駆け抜ける二人の話です。
昨日屋 本当の過去
なべのすけ
青春
あの時に戻ってやり直したい、そんな過去はありませんか?
そんなあなたは昨日屋に行って、過去に戻りましょう。お代はいただきません。ただし対価として今日を払っていただきます。さぁやり直したい過去に帰りましょう。
昨日を売って、今日を支払う。その先に待っているのはバラ色の過去か?それとも……。
巡る季節に育つ葦 ー夏の高鳴りー
瀬戸口 大河
青春
季節に彩られたそれぞれの恋。同じ女性に恋した者たちの成長と純真の話。
五部作の第一弾
高校最後の夏、夏木海斗の青春が向かう先は…
季節を巡りながら変わりゆく主人公
桜庭春斗、夏木海斗、月島秋平、雪井冬華
四人が恋心を抱く由依
過ぎゆく季節の中で由依を中心に4人は自分の殻を破り大人へと変わってゆく
連載物に挑戦しようと考えています。更新頻度は最低でも一週間に一回です。四人の主人公が同一の女性に恋をして、成長していく話しようと考えています。主人公の四人はそれぞれ季節ごとに一人。今回は夏ということで夏木海斗です。章立ては二十四節気にしようと思っていますが、なかなか多く文章を書かないためpart で分けようと思っています。
暇つぶしに読んでいただけると幸いです。
魔法少女の敵なんだが魔法少女に好意を寄せられて困ってる
ブロッコリークイーン
青春
この世界では人間とデスゴーンという人間を苦しめることが快楽の悪の怪人が存在している。
そのデスゴーンを倒すために魔法少女が誕生した。
主人公は人間とデスゴーンのハーフである。
そのため主人公は人間のフリをして魔法少女がいる学校に行き、同じクラスになり、学校生活から追い詰めていく。
はずがなぜか魔法少女たちの好感度が上がってしまって、そしていつしか好意を寄せられ……
みたいな物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる