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第46話「三周目〜更なる代償〜」
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七月十六日 水曜日
オレの体はまだ本調子ではなかったが、陸が消えたことは悪い夢か自分の気のせいで、今日は学校に陸が当たり前のように存在しているのではないかという、わずかな期待を持ち学校へ向かった。
体が重く中々ベッドから起き上がれなかった為、オレが学校に到着した頃は、遅刻ギリギリの時間になってしまっていた。
教室に入るともう全員着席しており、朝の出欠確認が始まっていた。「八神、早く席に着け」と担任に注意される。クラスメイトたちはクスクスと笑っていた。ただこの時、クラスの中で一人だけ笑ってない奴がいた。
オレは慌てて自分の席に着く。出席番号六番の加藤が呼ばれる。自分の出席番号は大分後なので、オレはホッと胸を撫で下ろす。次は七番の「菊池将暉」が呼ばれる筈だった。そうなる筈だった。
***
(将暉が、居ない。呼ばれない)
オレは、後続のクラスメイトが名前を呼ばれる中、生きた心地がしなかった。
(どうしてっ)
席数がまた一つ減っている。昨日まで座っていた将暉の席に別の奴が座っている。「菊池 将暉」が呼ばれないことを誰も気にしていない。担任さえも。
壮大な嫌がらせだった方がマシだ。非常に悪質なイジメだが、その方がまだマシだとオレは本気で思っていた。
消えるより、いい――
もしこれも陸が消えたことと同じ「原因」だったらと、オレは気が狂いそうだった。
その時たまたま目に入った。昨日まで座っていた将暉の席を、じっと睨んでる人間を。さっきピクリとも笑っていなかった人物、如月だ。間違いない、こいつは「菊池将暉」のことを、「五十嵐陸」のことを覚えてる――
***
如月が消失した時、自分以外の誰も如月のことを覚えていなかった。だか今回は、自分以外に如月にも二人の記憶がある。これがどういうことなのか分からないが、二人の消失に、何かしら関係があるとオレは考えた。
黒猫と会えない以上、もう如月しか手がかりがない。何としても聞き出す。
ただ、ことを問い詰めるのに授業間の休みでは短すぎると、オレは昼休みまで静かに待った。
如月は昼休みになると、あっという間に教室から出て行った。そういえば、昼食を教室でとっている如月を見たことがない。
オレは慌てて如月を追いかけた。
***
(図書室……)
如月は図書委員だ。委員会の仕事で来ていたとしても、何らおかしくはないが。
図書受付カウンターを覗き、各棚を歩き回ったが、誰もいない。
(おかしい。絶対図書室に入ったはず)
その時、オレは荷物運びを手伝った時、お茶のペットボトルを如月から受け取ったことを思い出した。
(図書準備室っ)
オレは逸る気持ちで、図書準備室に向かった。
つづく
オレの体はまだ本調子ではなかったが、陸が消えたことは悪い夢か自分の気のせいで、今日は学校に陸が当たり前のように存在しているのではないかという、わずかな期待を持ち学校へ向かった。
体が重く中々ベッドから起き上がれなかった為、オレが学校に到着した頃は、遅刻ギリギリの時間になってしまっていた。
教室に入るともう全員着席しており、朝の出欠確認が始まっていた。「八神、早く席に着け」と担任に注意される。クラスメイトたちはクスクスと笑っていた。ただこの時、クラスの中で一人だけ笑ってない奴がいた。
オレは慌てて自分の席に着く。出席番号六番の加藤が呼ばれる。自分の出席番号は大分後なので、オレはホッと胸を撫で下ろす。次は七番の「菊池将暉」が呼ばれる筈だった。そうなる筈だった。
***
(将暉が、居ない。呼ばれない)
オレは、後続のクラスメイトが名前を呼ばれる中、生きた心地がしなかった。
(どうしてっ)
席数がまた一つ減っている。昨日まで座っていた将暉の席に別の奴が座っている。「菊池 将暉」が呼ばれないことを誰も気にしていない。担任さえも。
壮大な嫌がらせだった方がマシだ。非常に悪質なイジメだが、その方がまだマシだとオレは本気で思っていた。
消えるより、いい――
もしこれも陸が消えたことと同じ「原因」だったらと、オレは気が狂いそうだった。
その時たまたま目に入った。昨日まで座っていた将暉の席を、じっと睨んでる人間を。さっきピクリとも笑っていなかった人物、如月だ。間違いない、こいつは「菊池将暉」のことを、「五十嵐陸」のことを覚えてる――
***
如月が消失した時、自分以外の誰も如月のことを覚えていなかった。だか今回は、自分以外に如月にも二人の記憶がある。これがどういうことなのか分からないが、二人の消失に、何かしら関係があるとオレは考えた。
黒猫と会えない以上、もう如月しか手がかりがない。何としても聞き出す。
ただ、ことを問い詰めるのに授業間の休みでは短すぎると、オレは昼休みまで静かに待った。
如月は昼休みになると、あっという間に教室から出て行った。そういえば、昼食を教室でとっている如月を見たことがない。
オレは慌てて如月を追いかけた。
***
(図書室……)
如月は図書委員だ。委員会の仕事で来ていたとしても、何らおかしくはないが。
図書受付カウンターを覗き、各棚を歩き回ったが、誰もいない。
(おかしい。絶対図書室に入ったはず)
その時、オレは荷物運びを手伝った時、お茶のペットボトルを如月から受け取ったことを思い出した。
(図書準備室っ)
オレは逸る気持ちで、図書準備室に向かった。
つづく
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