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侯爵令嬢として婚約破棄を言い渡されたけど、実は私、他国の第2皇女ですよ!

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「オリヴィア!貴様はエマ・オルソン子爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺様の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄をここに宣言する!!」

 王立貴族学園の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、エリアス・セデール。ここ、セデール王国の王太子殿下。

 王太子の婚約者である私はカールソン侯爵家の長女である。今のところ。

「エリアス王太子殿下、発言の許可をお願いします」
「なんだ!」

 コイツは一々怒鳴る。普通に話せないのかしら?たしか「馬鹿は声が一々デカい」だそうだ。うん、納得だ。

「私はエマ様を虐めてなどおりません」 
「虐めていない?嘘をつくな!!」

 エリアス殿下は唾を飛ばしながら怒鳴る。だからうるさい、って!

「嘘ではありませんが、虐め、とはどのような事でしょうか?」
「フン!白々しい。エマの悪評を広げる、暴言、教科書を破る、アクセサリーを壊す。挙げ句の果に、階段から突き落とすなどだ!これは重大な犯罪だ!」

 はて、全く身に覚えのないワードのオンパレードだ。それに「エマ」って呼び捨て?

「なぜ私がそのような事をしたと言えるのですか?」
「決まっておる!貴様が俺様とエマとの仲に嫉妬してやったのであろう」
「と、いう事は殿下は私という婚約者が居ながら、エマ様と不貞をしていた。という事でしょうか?」
「不貞ではない!これは真実の愛だ!」

 出ました!「真実の愛」。

 元々下位貴族に人気があったロマンス小説だが、近年出版された小説が大流行したのだ。
 その小説は、身分差のある2人が真実の愛に目覚め、艱難辛苦を乗り越えて結ばれる、というもの。

 そういう類の小説が数多く出版され、ロマンス小説など下世話な本として敬遠していた高位貴族にまで広まったのである。
 しかし、その手の本は基本的に女性向けであり、実際に愛読しているのもほとんど女性である。

 エリアス王太子殿下が読むとも思えないが...あっ!
 王太子殿下の横でニタニタと気色の悪い笑みでこっちを見てる奴が居る。

 ルーカス・ヨハンソン伯爵令息。王太子殿下の側近で宰相閣下の息子だ。
 きっとヤツの入れ知恵だろう。

「真実の愛?まぁそれはいいとして、婚約破棄、了承致しました」
「んなっ!貴様それで良いのか?」

 いいも何も婚約を破棄するって言ったのは王太子殿下だぞ!
 それとも「許して下さい」などと泣き縋るとでも思ったのか!

「婚約を破棄すると言ったのは、王太子殿下です。...それで、私がエマ様を虐めていたという証拠はあるのですか?まさか「嫉妬しているからやるはず」だけ、という事はないでしょう?」
「うぐっ!む、無論だ!ルーカス!」
「はっ!」

 王太子殿下に呼ばれ、勝ち誇ったように壇上から私を見下ろすルーカス伯爵令息。

「オリヴィア嬢とエマ嬢が2人で居る所を見た、と言う目撃者が多数おります。その中にはエマ嬢が泣いていた、との証言もあります。それでオリヴィア嬢に睨まれたくないクラスの者達から避けられ、エマ嬢は孤立している、との事です」
「これでもシラを切るか!!」

 ルーカス伯爵令息が言い終わると、王太子殿下が唾を飛ばしながら怒鳴った。
 だからうるさいっつーの!

「それをエマ様に確認したのですか?」

 そういえば肝心のエマ様が居ない。
 こういう時、流行りの小説では、王太子殿下の腕にぶら下がって登場するものなのだが...

「そ、それは今からする。おい!エマを呼べ」

 だから呼び捨て!ってまぁいいや。
 壇上の奥から騎士団長の息子に付き添われた女性が姿を現した。

 ヒューゴ・スヴェンソン伯爵令息。騎士団長の息子だ。
 王太子、宰相の息子、騎士団長の息子、子爵令嬢。登場人物は流行りの小説と同じだ。こういうのを「テンプレ」というらしい。

 騎士団長の息子の横でエマ子爵令嬢はビクビクして青い顔をしている。
 こういう時は、涙を浮かべて王太子殿下に助けを求めながらも、他の人には分からないように私を見て、ニヤりと勝ち誇った顔をするのがテンプレなのではあるが。

「それで、エマを虐めていたのは、そのオリヴィアだな?」
「え...えっと...王太子殿下...」
「エリアスと呼べと言っただろう。怖がらなくても良い、俺様が付いている」

 あら、婚約者である私には名前呼びさせないのに、エマ様には許可をしている。
 不貞の証拠を自ら提供するとは...

「......ありません」
「え?聞こえないぞ」

 王太子殿下は、だらしない顔をしてエマ様に話し掛ける。
 へぇ、あんな顔もするんだ。気持ち悪いけど...

「わ、私はオリヴィア様に虐められた事はありません」
「え?」

 耳を澄まして聞いていたのだろう。パーティー会場中の皆がキョトンとなった。

「え、あ、いや、大丈夫だ。本当の事を言っても。俺様や、他の皆もエマの味方だ」
「だから、本当にオリヴィア様に虐められた事はありません!」

「どういう事だ」などと会場内がざわつき、もはや隠す事なく皆がこちらを注目している。

「王太子殿下。と、いう事ですが?」

「どう責任を取る?」という意味を込めて、シレっと嫌味を言ってみた。

「だってオリヴィアと2人で居たのだろう?それに泣いていた、とも」

 どうしても私が虐めていた事にしたいらしい。
 まあ、あれだけはっきりと犯罪者扱いしたのだから、当然といえば当然か。

「私がオリヴィア様に「王太子殿下に言い寄られて困っている」と相談していたのです」
「な、何!!」

 衝撃の事実に王太子殿下の顔が青くなった。
 側近2人も同様だ。

「い、虐められていたんじゃないのか?悪評や暴言、教科書を破る、アクセサリーを壊す、階段から突き落とされそうになった、などは本当ではないのか?」
「虐められていた事は本当です。でもそれらをしたのはオリヴィア様ではありません」
「なっ!」

 王太子殿下は元より、宰相閣下の息子、騎士団長の息子も愕然としている。

「どうしてそれを言わなかった?」
「何度も言いました。でも、その度に「オリヴィアに脅されているんだろう」と信じてくれなかったじゃないですか!」
「.........」

 それはそうだ。下位貴族の令嬢が、王族や高位貴族の令息にそう言われ続けられたら何も言えなくなる。
 それに、この王太子殿下は自分の言った事を覚えていない。致命的だ。

 では、そろそろこのテンプレ茶番劇を終わらせるとするか。

「王太子殿下よろしいでしょうか?」
「なな何だ」

 あら、最初の威勢はどこへやら、だ。
 まあ、冤罪で婚約破棄を突きつけられたから、もう隠しておく必要はないし、早くこの場から立ち去らなければならない。
 そろそろ爆弾を投下する事にしよう。

「王太子殿下、貴方は先ほど私が「嫉妬」している、と言いましたよね?」
「そ、それが何だ」
「勘違いしているようだから言っておきますけど、私はあくまで国家間の関係のために殿下の婚約者となったのです。つまり完全に政略的なものです。なので、嫉妬などあり得ません」

 これだけは、はっきりさせなければならない。後で「本当は俺様が好きだったのだろう?」などと気持ちの悪い事を言わせないためだ。

「は?国家間の関係?」
「私はこの国の者ではありません。グレナダール帝国の第2皇女です」 
「は?はぁぁぁっ!」

 王太子殿下だけでなく、会場中がどよめいた。


 グレナダール帝国。
 ここ、セデール王国の南方に位置する大国である。隣接してはいないが。
 肥沃な広大な大地。良質な鉱石が採れる鉱山。良質な水源。
 これら豊富な資源を有する帝国は技術や経済の発展したとても豊かな国である。

 当然ながら、この豊かな土地を欲する他国からの侵略の脅威に晒されていた。
 しかし、それを予想していた帝国は、かねてより準備していた強力な軍隊により、侵略者を悉く撃退したのであった。
 現在の帝国は、大陸最強の軍隊を持ち、更には複数の従属国も有している。
 そのため、帝国に侵攻しようとする国家などはここ十年以上皆無である。


「グレナダール帝国の第2皇女がどうして侯爵令嬢と名乗っておるのだ!?」

 冤罪の事は?なかった事にしようとしているのか?まあいい。というかまた怒鳴る。うるさい!

「現在のセデール王国の状況はご存知ですか?」
「はぁ?何の事だ!」
「自国の経済状況や周辺諸国との関係の事です」
「.........」

 何も知らないのだろう、固まって何も言わなくなった。

「貴方は本当に王太子なのですか?本当に何も知らないようですね」
「......っ」

 痛い所を指摘されたのか、王太子殿下は何も言い返せないようだ。
 そう、王太子殿下は自国の経済や社会情勢の事はほとんど知らない。
 それだけではない。
 王太子殿下はとにかく勉強が嫌いで、ほとんど家庭教師の講義や学園の授業をまともに受けていない。
 元々賢いわけでもなく、知識も備えていない。教養とは全く無縁な人物なのである。


「この国の状況ですが............」


 ここ、セデール王国は数年前、冷害による不作で飢饉に見舞われた。
 セデール国王は、隣国のトゥルク王国よりの援助を得る事に成功。国難を乗り越えた。

 当然トゥルク王国からの援助金は返済しなければならない。
 翌年には豊作、と言えないまでも、例年の収穫量に達しており、現在は余裕が全くない訳ではない。

 しばらくして、トゥルク王国から援助金の返済を求められた。
 しかし、セデール王国はのらりくらりと返済を遅らせた。

 実は、危機を脱した事で満足してしまい、返済金や再発防止の為の資金など、本年度の予算に計上していなかったのである。
 この事に激怒したトゥルク王国は、セデール王国との国境付近の砦に軍を集結させた。

 数年前の冷害は、セデール王国ほどではないが、トゥルク王国も被害に遭っていたのだ。
 それにも関わらずセデール王国に援助したのである。

 まさに「恩を仇で返された」思いであり、当然と言えば当然である。
 こうして、隣国との関係は一気に悪くなり、現在緊張状態となっているのだ。

 一応セデール王国も国境の辺境伯軍が有事に備えて待機しているが、常備軍を持つトゥルク王国軍に対抗出来るものではない。
 セデール国王は、トゥルク王国に謝罪し、一旦緊張状態は解除された。

 しかし、トゥルク王国はこの事を理由に、返済金の大幅な増額を要求してきたのである。
 セデール国王は悩んだ末にグレナダール帝国との友好条約の締結を望んだ。
 グレナダール帝国の後ろ盾を得てトゥルク王国と交渉するためだ。

 セデール王国には、これといった産業も資源も無く、グレナダール帝国にとっては利のある話ではない。
 しかし、このまま突き放すのも惜しい、という事で友好条約の締結の条件として、第2皇女であるオリヴィアと、セデール王国の王太子との婚約が決定したのだった。

 ただし正式な婚約は、オリヴィア本人が王太子の資質を見極める期間を設ける事を条件とした。
 そして、その期間中オリヴィアはあくまでセデール王国の貴族として王太子に接する事とするため、一時的にセデール王国のカールソン侯爵家の養女となった。

 ちなみに、セデール王国で、この事を知っているのは、セデール国王とカールソン侯爵だけである。


「......という訳で婚約しましたが、この通り婚約は破棄となりましたので、セデール王国との友好条約は当然白紙です。更に冤罪による婚約破棄、という事で慰謝料を請求する事になるでしょう。国際問題となるかも知れませんね」

 事実を知ってしばらく呆けていた王太子殿下だったが、再起動してとんでもない事を言い放った。

「えっ、あっ、虐めてはいないのであろう、では婚約破棄をする理由もない、よって今回のことはなかったことにする」

 はあああぁ!バカかコイツ!
 今は王立貴族学園の創立記念パーティーの最中。
 学園生はもとより、そのご家族や親族。教師、学園関係者、教育関係大臣や文官。他国からの留学生には王族や高位貴族子女もいる。

「王太子殿下!このような場所で冤罪とはいえ、私を犯罪者同然として婚約破棄を宣言されたのです。簡単に発言が撤回出来るとお思いで?」

「は?」と言いながら王太子殿下は周りを見渡し、皆の冷たい視線に晒されている事に気づき、さすがにこのバ...王太子殿下もマズいと思ったのか、黙って俯いた。

「それに、ルーカス・ヨハンソン伯爵令息。ヒューゴ・スヴェンソン伯爵令息も同罪ですよ」
「わ、私は王太子の指示で」
「俺もです」

 宰相閣下の息子が言い訳をして、騎士団長の息子が後に続いた。

「それに貴方達は今まで、私に暴言を口にしたり、随分と偉そうにしていましたね」
「それは、グレナダール帝国の第2皇女殿下とは知らずに...」
「あら、私は今までカールソン侯爵令嬢と名乗っていました。この国では侯爵より伯爵の方が偉いのかしら」

 私の嫌味に会場中から失笑された2人も俯いて、なにも言えないようだ。

「とにかく私はこの事を報告しなければなりません。それでは皆様ごきげんよう」

 私は完璧なカーテシーをしてくるりと反転。颯爽とパーティー会場を後にした。





 その後、王太子達の愚行を知らされたセデール国王は激怒し、厳しい処分を下した。

 エリアス王太子は廃嫡となり、今後は監視付きの軟禁生活を強いられる事になる。
 ルーカス・ヨハンソン伯爵令息(宰相の息子)、ヒューゴ・スヴェンソン伯爵令息(騎士団長の息子)は勘当となった。

 宰相であるヨハンソン伯爵、騎士団長であるスヴェンソン伯爵も職を辞した。
 さらに降爵処分を言い渡され、子爵となった。

 当然ながら、グレナダール帝国との友好同盟は白紙。更に第2皇女に対する冤罪により、多額の慰謝料を請求される事となった。
 そして、今後一切の取引は停止。セデール王国に出店している全てのグレナダール帝国関係の商会とその関連企業は完全撤退する事となった。



 後にセデール王国は、グレナダール帝国に多額の慰謝料を支払い、国力が低下した上、激怒したトゥルク王国に侵攻され、地図から消える事となる。



 ◆



 オリヴィアは皇城の自室でボヤいていた。それはそれはボヤいていた。

「ないわー!あれはない!」
「何がですか?」

 オリヴィアの専属メイド、マヤが不思議そうに尋ねた。

「エリアスとかいう王太子よ!何で私があんなバカと婚約しなければならなかったのよ!」
「婚約は破棄されたのだから良いではないですか」
「まあ、正式に婚約していたわけじゃないから、傷は付いてないんだけどね」
「なら良いじゃないですか」
「しかし、お父様も見る目が無いわね。あんなバカを選ぶなんて」

 オリヴィアは第2皇女ではあるが、皇位継承順位も低く、皇族の中でも立場は高いとは言えない。
 しかし、自分の事は置いておいて帝国の事だけで考えても、あの王太子...いやあの国、セデール王国との繋がりが良いものとは思えなかったのだ。

「皇帝陛下は初めからこうなると思っていたと思いますよ。でもあんな大きなパーティーの会場で婚約破棄を宣言する、とまでは思っていなかったでしょうけど」
「では、お父様はわざと私に?」
「皇帝陛下はあのセデールとかいう国王を嫌っていたようですし、あの国との関係も切りたかったみたいでしたので、計画通り!という事でしょうね」
「ななな、わ、私はその犠牲になった、という事?」
「いえ、立派な任務です。任務完了です」
「はあぁ?」

 オリヴィアの周りには釣書がたくさん散らばっている。

「お嬢様、いったい何をなさっているのですか?」
「決まってるでしょ!結婚相手を探しているのよ!オヤジ皇帝に任せていたら、またとんでもない人を選びそうだし」 
「その方達はダメですよ」
「え、どうして?」
「もう既にお相手がいます。売り切れです」
「えー」

 マヤは、一枚の書類を取り出した。

「そういえば、皇帝陛下から依頼がありました」
「何?」
「今度はリアム様。グレンホルメン王国の第2王子です」
「やだ」
「かなり女性関係のトラブルが多いみたいですね。お嬢様の婚約者ターゲットにピッタリです!」
「だから嫌だって!」
「次も婚約破棄の慰謝料をガッポリ稼ぎましょう」
「それって婚約詐欺じゃない?」
「いいえ、れっきとした依頼です。相手は女性の敵です。人助けです!」


「はぁ」と溜め息をついて星空を眺めながらオリヴィアはポツリと呟いた。


「どこかにいい男、落ちてないかなぁ...」






 おわり
 
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