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まともなヒロインが欲しい

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なんでっ、終わらないぃぃぃ。



右手にリナという理性的に危ないモノを抱えながら、辺りから貞操的に危険な変態から襲われる。天国と地獄を行ったり来たりするような感覚に体も頭もオーバーヒートしている僕、カイザーです。



 しつこすぎるほどに追いかけてくれる獣の男性。なんで男だけかっていうとタフネスとスタミナがとんでもないからだ。



 銀虎族の女性陣は皆地面に倒れ気絶しているのに対し、男性陣は何度倒してもゾンビのように立ち上がってくるのだ。



 だれも得しない鬼ごっこ、森の中を走り続けて、数時間ほど。

 ありとあらゆる奇襲をくぐり抜けていると、見たことのない人物、しかし見覚えのある人物が倒れていた。それに気付いた俺はリナを即座に背負い空いた片手でその女性を掴む。



 今回の人生カイザーとして生まれてから一度も会ったことの無い人物だが、前世の情報からしっかりと覚えている。



 絶世の美人、背中から悪魔のような羽、尻尾が生えており、水着のような服にメガネをかけている知的な女性。

 そう、サキュバスだ。

 正確にはサキュバスクイーン。



 あの媚薬スライムを生み出したご本人だ。













「ぎょぷえっ!?」



 心地の良い感覚に身を浸していると、唐突に頭に響くような衝撃に眼を覚ます。



「目が覚めたか?」



 目の前には人差し指を突き出す形でこちらを見ている少年。今のはどうやらおでこを叩かれたらしい。

 この鬼族は、私の優秀な頭脳を叩いたというのだ。余りにも罪深い、その所業。度が過ぎた不敬に文句を言おうとするも、



「あ、あのー、ここはどこでしょうか?」

「ここは近くにあった崖の地帯の洞窟だ。」



 控えめに聞くに修めた。



 なぜなら、目の前に居るのは鬼族の子供。

 何故か血濡れの。



 いや、確実にやばい人じゃないですか?起きて最初に会う血まみれの人間に怒鳴り散らす?死ぬ、死ぬ、絶対死にます。

 と、とりあえずは気遣うように。



「あ、あのお体大丈夫ですか?」

「ん?ああ。ちょっと連中が面倒くさくてね、つい。」

「ははははははっ、そ、そ、そうでしたか。」



  最後のつい、で、フって意味深に笑うのが怖い。逃げる、そうだ。逃げよう、逃げるしかない。私の優秀な頭脳は逃走経路の手段でいっぱいだった。



(出口は一つだけ。この鬼の子供は幸いこちらに注意を向けていない。なら、選択肢は一つ。こっそりゆっくりと出て行くしかない。)



 壁の方を向いている少年。燃やしているたき火の光から生まれる影が恐怖を生ませるも、私は勇気ある一歩を踏み、



出そうとした。



「ここら辺でスライムが暴れ回っていたんですけどご存じですよね?」



 唐突に話し始めた少年は、私を確実に捉えた話し方だった。

 続けてその話をこちらがわかっている前提で話し続ける。



「あのスライムを作ったのは貴方ですもんね?」



 頭が真っ白になる。



(何なんですかっ、この子供。)



 体は血まみれだし、筋肉は年齢に似合わず厳ついし、何もかも見透かしてくるような

瞳に恐怖を覚えた。

 知能に特化している私の頭脳が今目の前の情報をイヤにでも伝えてくる。



「あのスライムのせいでそれはまあ、大変な目に遭いましてね。」



「どうしてやろうかなぁ、なんて考えていたんです。」



 あ、ダメだ、コレ。

 話す度に一際増していく威圧に、心なし体が大きくなっているような気がする。体が目の前の恐怖に耐えられず震え出す。足もしびれて動かない。逃走経路には自分を遮るように彼が。



 ジ・エンド。



「もう話はこれでいいですよ、ね?」

「は、はい。」



 抵抗するような気力も失い、目の前の存在を全て肯定する存在になった自分。怒り狂う鬼。これからどうなるかは明白だった。



 その夜、ある荒野の一帯で、獣のような鳴き声と、何かを叩くような音が響き渡りましたとさ。











 いや、まあ尻たたきしただけなんだけど。



 性欲も上手く発散できず、男に襲われる恐怖に追われ、その元凶を見つけたことで自分の中の何かが爆発しそうだったが、前世の成人社会人の理性がそれを止める。

 結果、子供の範疇で許されそうな領域で自分の役得にもなりそうなこと、そう。



 お尻ペンペンだ。



 叩く度に揺れる様が素晴らしかった。思わず一晩中叩いてしまった故に、叩かれた被害者はとんでもない有様になっているが、十分に許される範囲だろう。



 そしてそれ故に落ち着いた頭で、一度状況を整えることにした。



 銀虎族の男どもをどうにか撃退して、血にまみれた俺はすぐに他の場所に移動することにした。またいつ復活するか分からない不死身の集団を相手にするのはキツい。

 

 二人を抱えて身を隠せそうな洞窟に入ったというわけだ。



 一人はリナ。なんとか発情状態も落ち着いてきているし、直ぐに眠りについてくれた。

 そしてもう一人。

 それはサキュバスと言われる淫乱種族だ。



 エロゲでは敵役としてしか出て居らず、とても淫らな攻撃を仕掛けてくるのだが、それは一般のサキュバスだった場合。



 今よだれを垂らしながら白目をむいている美しい女性が今回のスライム事件の首謀者なのだから。






 何というか、とても哀れな姿だった。(主犯はコイツです。)





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