思いがけず、生き延びて

ゆりえる

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劣等感と戦った時間⑴

思いがけず、生き延びて

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 懐かしい理佳の声、わんぱくな子供達相手に怒鳴る事が多いのか、けっこうかすれていた。
 何年も電話して無かったから、いきなり電話するのは、躊躇われたけど、結果、大好きな友達が、残す時間を家族達と有意義に過ごす事が出来るようになった。
 電話して良かった!

 もうすぐ終わりを迎えると気付いている人々は、残された時間を大好きな人達と分かち合う事が出来る。
 家庭を持っている理佳は、モチロン、家族と過ごす事を選んでいる。
 家庭が無い人も恋人がいる人達は、一緒に締め括りを迎える事だろう。
 趣味の合う友達がいる人は、そうやって仲間内で打ち上げしたりしながら、その時を待つのかも知れない。

 知らせた事に後悔なんて、もちろんしてない。
 
 例え、私に誰一人として、今、その時を迎える相手がいなかったとしても。

 そう、私は孤独だった。
 気付いた時から、孤独慣れしていた。
 
 皆、自分達と似たような容姿の人達で群れて、私のような風変りな容貌を持つ者などには、警戒したり見下して、誰も近付かず、あからさまに笑って来る事も多かった。
 今まで、友達なんて、言葉の意味も知らずに生きて来た。
 生まれた時から、私は、ボッチが宿命付けらられていたかのように。

 高2の夏、理佳と話すようになるまで。

 理佳は、最初、1軍入りしていた活発な陽キャラだった。
 それが、高2の夏、理佳が、クラスメートだった今の伴侶である中内君と付き合い出してから、形勢が変わった。
 中内君は、理佳の元友人の彼氏で、理佳には友人から奪い取った悪女のレッテルが貼られるようになった。

 以来、理佳は仲間からはじかれ、1人でいる事が多くなった。
 そんな時に、体育の授業でペアを組んで柔軟体操をする時、あぶれた私と理佳がペアを組み、以来、不思議と意気投合したのだった。
 理佳は、初めて出来た友達だった。


 職場でも、仕事内容以外の事は、誰も尋ねないし、ついそういう空気を読んで、私からも声をかけない。
 暗黙の了解のようになっていた。
 イジメとかは無かったが、中傷のようなヒソヒソ話は、よく耳に入っていた。
 それでも、仕事上での付き合い、これで、お金を貰って生活しているのだからと割り切って、日々、仕事に勤しんでいた。
 勤務態度は、多分、バカがつくくらい他の人より真面目だったと思う。
 他の人達は、雑談して手を抜いているような時でも、書類と向かい合って、他の人達より早いペースで仕上げていた。
 他の部下には注意しまくっている上司からも、褒められる事は無かったが、けなされた事も一度も無かったから、そこそこ評価されていたのだと思う。

 仕事は、可もなく不可もない代わりに、これといったやり甲斐も感じられなかったが、こんな容姿の自分に出来る仕事など限られているだろうと、そこで働き続ける事に疑問を感じずにいた。
 その仕事とも、もうお別れ。
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