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第7章
泉李Ⅲ
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片想い、失恋フラグが僕の前にふら付いているけど......
でもさ、考えてみたら、ずっと二次元オタクをしてきた僕だよ。
元々、平面女子達に片想いして来たようなものだから、その延長線上にいる感じで、別に片想いなんて、今に始まった事じゃないんだ!
今までは、僕の事になんて全く無関心な平面女子達に片想いしてきたけど、これからは、僕の所作が彼女の視界の範疇に入っている時も有るんだ!
さっきだって......
初めて会った日に、なんと会話まで出来たんだ!!
今まで好きだった二次元女子達は、声を聴く事が出来ても、それは明らかに僕に向けられたものでもなく、万人に向けられたものでしかない。
どんなに僕が声を大にして語り続けても、僕からの声は、一向に彼女達に届いてなかったんだ。
それが、すずかちゃんとは、双方で会話出来ていたんだよ!!
この現実世界の当たり前が、今の僕には、他の誰が感じるよりも、とても尊く感じられる!
だから、僕は、すずかちゃんとまた出逢う日の為に、彼女の傘を毎日持ち歩けるんだ!
「草丘、見慣れない傘持ってるな」
曇り空だが帰りは雨予報の登校中に、自分のコウモリ傘とすずかちゃんが貸してくれた水玉模様のビニール傘の2本持ちで歩いていると、友人の長田耕三が近寄って来た。
「ああ、これ? 僕が一目惚れした女の子の大事な傘なんだ」
「一目惚れした子から傘借りたんだ? スゲーな、草丘! それって、脈有りじゃん!」
肘で突いて来た耕三。
「いや、そんな、無理そうな感じだよ。だって、何だか、存在して無さそうなくらい希薄な感じの子だったし......」
「存在してないって......? 幽霊かよ?」
耕三が笑いながら訝しげに言った。
「幽霊って事は無いけど......なんていうか、この世の物とは思えないくらいにキレイで儚げ過ぎて、実体化しているのが嘘のように感じられるんだ」
「何だよ、狐に化かされたような感じだな! そんなキレイな子がいるなら、俺にも会わせろよ!」
狐......?
耕三に言われると、人間では無いような、そんな気もしないでもない。
でも、この傘......
この傘が今も存在しているという事は、彼女はまやかしでも何でも無く、普通に人間として存在しているって事なんだ!
「もしかしたら、また、子猫ちゃんの所で会えるかも知れない」
「子猫って、あの捨て猫の事か? お前、まだ通っていたのかよ?」
初めて子猫ちゃんを見付けた時、耕三も一緒だったんだ。
でも、耕三がいたのは、それっきりで、次の日からは先に帰っていたから、僕が1人で餌を持って行くようになっていた。
「その子も、子猫ちゃんに会いに来ていたんだ」
「そうか、じゃあ、俺も今日は行ってみようかな? その幽霊のようだけど、キレイな女の子に是非会いたいから」
「うん、今日の学校帰りに」
そうは言ったものの、考えて見ると、耕三は僕と違って、スポーツマンで塩顔イケメンで、女の子からは人気がわりと有る。
そんな耕三と一緒にいたら、僕なんか、すごく見劣りして、すずかちゃんは、耕三の方ばかり見てしまうかも知れない。
僕だけだったら、すずかちゃんは僕とちゃんと話してくれるだろうけど、耕三が一緒だと、耕三とばかり話してしまうかも知れない。
そして、耕三といる方が楽しくなって、僕の方なんか見向きもしないで、耕三の事を好きになってしまうかも知れない。
僕が先にすずかちゃんと知り合ったのに、耕三に取られてしまうのはイヤだ!
やっぱり、耕三と一緒に行くの、取り消した方がいいのかな?
その時はまだ、すずかちゃんとの再会が、そんな仰々しくなるとは思ってなかったんだ。
僕は、ただ、すずかちゃんに借りたこの傘をちゃんと返せたらと思っていただけだった。
あと......傘を返してしまったら、もう、すずかちゃんと話す口実が無くなってしまいそうな気がしていた。
いや、そんな事は無いはず!
だって、僕らには共通の黒い子猫ちゃんに会いに来ているという目的が有るのだから!
傘を返しても、僕はすずかちゃんと会った時には、ここで、しばらく子猫ちゃんを可愛がりながら、色んな話題を話せるに違いない。
だから、耕三が同行しても、耕三は子猫ちゃんに興味が無いし、抱きもしないから、すずかちゃんと共通の会話が全く無くて、僕の方が断然有利なんだ!
でもさ、考えてみたら、ずっと二次元オタクをしてきた僕だよ。
元々、平面女子達に片想いして来たようなものだから、その延長線上にいる感じで、別に片想いなんて、今に始まった事じゃないんだ!
今までは、僕の事になんて全く無関心な平面女子達に片想いしてきたけど、これからは、僕の所作が彼女の視界の範疇に入っている時も有るんだ!
さっきだって......
初めて会った日に、なんと会話まで出来たんだ!!
今まで好きだった二次元女子達は、声を聴く事が出来ても、それは明らかに僕に向けられたものでもなく、万人に向けられたものでしかない。
どんなに僕が声を大にして語り続けても、僕からの声は、一向に彼女達に届いてなかったんだ。
それが、すずかちゃんとは、双方で会話出来ていたんだよ!!
この現実世界の当たり前が、今の僕には、他の誰が感じるよりも、とても尊く感じられる!
だから、僕は、すずかちゃんとまた出逢う日の為に、彼女の傘を毎日持ち歩けるんだ!
「草丘、見慣れない傘持ってるな」
曇り空だが帰りは雨予報の登校中に、自分のコウモリ傘とすずかちゃんが貸してくれた水玉模様のビニール傘の2本持ちで歩いていると、友人の長田耕三が近寄って来た。
「ああ、これ? 僕が一目惚れした女の子の大事な傘なんだ」
「一目惚れした子から傘借りたんだ? スゲーな、草丘! それって、脈有りじゃん!」
肘で突いて来た耕三。
「いや、そんな、無理そうな感じだよ。だって、何だか、存在して無さそうなくらい希薄な感じの子だったし......」
「存在してないって......? 幽霊かよ?」
耕三が笑いながら訝しげに言った。
「幽霊って事は無いけど......なんていうか、この世の物とは思えないくらいにキレイで儚げ過ぎて、実体化しているのが嘘のように感じられるんだ」
「何だよ、狐に化かされたような感じだな! そんなキレイな子がいるなら、俺にも会わせろよ!」
狐......?
耕三に言われると、人間では無いような、そんな気もしないでもない。
でも、この傘......
この傘が今も存在しているという事は、彼女はまやかしでも何でも無く、普通に人間として存在しているって事なんだ!
「もしかしたら、また、子猫ちゃんの所で会えるかも知れない」
「子猫って、あの捨て猫の事か? お前、まだ通っていたのかよ?」
初めて子猫ちゃんを見付けた時、耕三も一緒だったんだ。
でも、耕三がいたのは、それっきりで、次の日からは先に帰っていたから、僕が1人で餌を持って行くようになっていた。
「その子も、子猫ちゃんに会いに来ていたんだ」
「そうか、じゃあ、俺も今日は行ってみようかな? その幽霊のようだけど、キレイな女の子に是非会いたいから」
「うん、今日の学校帰りに」
そうは言ったものの、考えて見ると、耕三は僕と違って、スポーツマンで塩顔イケメンで、女の子からは人気がわりと有る。
そんな耕三と一緒にいたら、僕なんか、すごく見劣りして、すずかちゃんは、耕三の方ばかり見てしまうかも知れない。
僕だけだったら、すずかちゃんは僕とちゃんと話してくれるだろうけど、耕三が一緒だと、耕三とばかり話してしまうかも知れない。
そして、耕三といる方が楽しくなって、僕の方なんか見向きもしないで、耕三の事を好きになってしまうかも知れない。
僕が先にすずかちゃんと知り合ったのに、耕三に取られてしまうのはイヤだ!
やっぱり、耕三と一緒に行くの、取り消した方がいいのかな?
その時はまだ、すずかちゃんとの再会が、そんな仰々しくなるとは思ってなかったんだ。
僕は、ただ、すずかちゃんに借りたこの傘をちゃんと返せたらと思っていただけだった。
あと......傘を返してしまったら、もう、すずかちゃんと話す口実が無くなってしまいそうな気がしていた。
いや、そんな事は無いはず!
だって、僕らには共通の黒い子猫ちゃんに会いに来ているという目的が有るのだから!
傘を返しても、僕はすずかちゃんと会った時には、ここで、しばらく子猫ちゃんを可愛がりながら、色んな話題を話せるに違いない。
だから、耕三が同行しても、耕三は子猫ちゃんに興味が無いし、抱きもしないから、すずかちゃんと共通の会話が全く無くて、僕の方が断然有利なんだ!
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