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地球防衛隊に憧れて
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21XX年、紀伊半島の奥地にひっそりと佇む、地球防衛隊本部。
この地に、エイリアン達の侵略から地球を守る精鋭達が集結されている。
緑のラインが、袖口と襟とズボンの裾の付近に入った白いスーツに、同じく緑のラインが縁付近に入った白いキャップ。
これが、地球防衛隊の男性隊員である大和隊のユニフォーム。
この制服は一見、ラフな装いに見えるが、軽量ながらも電磁波や放射線、火山性ガスなどの毒ガス等にも幅広く対応出来る機能が備わっている。
緑は、22世紀の地球でも、平和を象徴する色。
そして、今もなお失われていない紀伊半島の大自然を尊ぶ意味合いも含め、制服のラインに選ばれた色だった。
そのシンプルで衛生的なデザインと緑のラインが、彼らの黒髪と茶褐色の瞳をよく映えさせている。
彼らの中には、自分の髪の毛を染めたり、カラーコンタクトで瞳の色を変えている人は誰一人としていない。
なぜなら、彼らは皆、自分が日本人として生を受けた事に、何よりも誇りを感じており、敢えて、その容姿を欧米人のような容姿に変えよう真似などは、誰にも想像すら及ばないのだった。
世界最強と言われる地球防衛隊の男性隊員である大和隊は、22世紀の今や全地球人にとって、平和を守る象徴として憧れの存在。
海外では、彼らの黑い髪や茶褐色の瞳に憧れ、日本人風に黒くヘアカラーしたり、茶褐色のカラーコンタクトする人々で溢れ返っていた。
かつて、20~21世紀の若年層を筆頭にした日本人達が、日本人特有のものを軽んじて、色んな髪色に染めたり、瞳を様々な色に変えて見せていた事を海外の人々に話しても、誰も信じないだろう。
宇佐田颯天もまた、日本人として生まれた事を誇りに思い、物心ついた時から、将来は地球防衛隊への入隊を切望していた。
地球防衛隊には、ごく少数存在しているという、超sup遺伝子を持つ者のみが入隊する資格が有った。
sup遺伝子は、日本人の2割が持つ、他者を救う為なら捨て身にさえなれるような性分の別名、『親切遺伝子』とか、必要な時に自分が思っていた実力以上の力が発揮できるという『火事場の馬鹿力遺伝子』と称されている、同じアジア系でも、日本人以外には見られないという特殊な遺伝子。
sup遺伝子の有無は、日本人として誕生した時に、唾液による遺伝子検査で簡単に確認されていた。
颯天の場合、運良く家族全員がsup遺伝子というサラブレッド的な家系に生まれ、当然ながら、その遺伝子を持って生まれる事が出来ていた。
問題は、例え検査上、その身体にsup遺伝子が確認されても、sup遺伝子の真の能力が発揮出来るか否かは、その後の彼らの経験に左右されるという事だった。
たまたま発揮すべく状況に置かれないまま生涯を閉じた場合は、例え、sup遺伝子を所持していた場合でも、宝の持ち腐れ状態となる。
世界中の誰もが憧れるその遺伝子を持って生まれながら、それを生かすような機会に巡り合わなないまま生を終えるような事となっては、せっかくのsup遺伝子が無駄になる。
それを避ける為、sup遺伝子保持者は、非保持者とは幼稚園から大学まで、全て分け隔てられた進路を辿る事に決まっていた。
更に、小学校からは男女別の校舎に分かれ、高校卒業時までは完全に接触を断たれ、男女交際などは現実的に不可能な境遇に置かれた。
その特殊な環境に身を置かれた彼らの中から、超sup遺伝子を持つ精鋭達のみが、地球防衛隊へのパスポートを所持出来る事となる。
超sup遺伝子は、sup遺伝子を持つ人々の中に、僅か1%弱ほどの確率で存在していると言われている。
颯天の周りには、超sup遺伝子を持つと思われる人物はいなかった為、颯天も、その周囲の人々も、超sup遺伝子の確認の方法を知らなかった。
その確認法は、地球防衛隊と関係者だけが知るトップシークレットだった。
周りの学生達と同様、sup遺伝子を所持しているとはいえ、颯天にとって地球防衛隊の人々は、テレビや動画で目にする事は有るものの、間近で見た事は一度も無く、あたかも空の上の人々のような存在だった。
幼少期には、特撮ヒーローのように架空の人物達のように思えていた事も有ったが、彼らの功績は確実に、日夜、テレビやネットのニュースを通じて伝えられ、目立つ活躍をしている隊員達の名前は、仲間内でもよく話されるようになった。
颯天が最も憧れているのは、地球防衛隊の大和隊の中で、右に出る者はいないと言われる強者の荒田大輝。
特にエイリアン達との空中戦において、天下無双とも称されている荒田は、その攻撃能力もさることながら、端正な顔面と細マッチョな体形で、地球人女性達の殆どを虜にしている。
自分では到底敵わないと思いつつも、荒田のような隊員を目指し、常にメディアでの彼の功績をマークしていた颯天。
そして、大和隊員の荒田とは別に、颯天が、いつしか淡い思慕のような想いを抱くようになっているのが、地球防衛隊の女性隊員達、大和撫子隊でアイドル級の美貌を持ち、細やかな配慮と慈しみの溢れる笑顔が、男女問わず大人気の新見透子。
彼女はその親しみやすい恵まれたルックスから、地球防衛隊、及び大和撫子隊の広告塔として、慈善活動などでも活躍していた。
高等部に上がって以来、寮生活をしていた颯天は、ルームメイトの矢野川雅人にバカにされるほど、壁という壁に、透子の笑顔のポスターを貼りまくっていた。
天井に貼った地球防衛隊専用のパジャマ姿のポスターは、颯天の大のお気に入りだった。
そのポスターの笑顔の透子を見ていると、就寝時や起床時に、透子と一緒に過ごせているようで幸せ気分になれていた。
特に朝は、その透子の笑顔が、颯天にとってのモチベーションアップに繋がっていた。
雅人もまた、大和隊員では颯天と同様、荒田に憧れていたが、大和撫子隊員では、メリハリが際立つ男性好みのプロポーションで癒し能力の高い淡島花蓮に惹かれ、颯天ほどではないが、3枚の大きなポスターを壁に貼っていた。
男女交際が御法度で、女性とは隔離された環境に生活する彼らにとって、唯一の癒しが、大和撫子隊員達のポスターだった。
超sup遺伝子は、特に男性の方が能力開花しやすく、女性は開花しないままの人もいた。
その場合でも、母から娘へと継承しているrup遺伝子という癒し効果が高い遺伝子が、超sup遺伝子を持つ女性のみ開花する場合が多い。
透子も花蓮も、メディアが伝える功績を見る限り、後者のタイプのようだった。
たまに、輪野田季代のように超sup遺伝子を持つ男性達をも凌駕しているような、ひときわ攻撃力に長けた大和撫子隊員もいた。
地球防衛隊はグループに分かれて行動するが、大抵の場合、大和隊員3名に対し、大和撫子隊員1名という内訳だが、季代の所属するグループに限っては、大和隊員2名、大和撫子隊員2名で、季代は大和隊員として扱われていた。
彼ら地球防衛隊員達もまた、颯天と同じ地球防衛隊本部内にいるのだが、広大な敷地の中、教育棟から離れている施設にいる為、接触はおろか、直に目にする機会も皆無だった。
この地に、エイリアン達の侵略から地球を守る精鋭達が集結されている。
緑のラインが、袖口と襟とズボンの裾の付近に入った白いスーツに、同じく緑のラインが縁付近に入った白いキャップ。
これが、地球防衛隊の男性隊員である大和隊のユニフォーム。
この制服は一見、ラフな装いに見えるが、軽量ながらも電磁波や放射線、火山性ガスなどの毒ガス等にも幅広く対応出来る機能が備わっている。
緑は、22世紀の地球でも、平和を象徴する色。
そして、今もなお失われていない紀伊半島の大自然を尊ぶ意味合いも含め、制服のラインに選ばれた色だった。
そのシンプルで衛生的なデザインと緑のラインが、彼らの黒髪と茶褐色の瞳をよく映えさせている。
彼らの中には、自分の髪の毛を染めたり、カラーコンタクトで瞳の色を変えている人は誰一人としていない。
なぜなら、彼らは皆、自分が日本人として生を受けた事に、何よりも誇りを感じており、敢えて、その容姿を欧米人のような容姿に変えよう真似などは、誰にも想像すら及ばないのだった。
世界最強と言われる地球防衛隊の男性隊員である大和隊は、22世紀の今や全地球人にとって、平和を守る象徴として憧れの存在。
海外では、彼らの黑い髪や茶褐色の瞳に憧れ、日本人風に黒くヘアカラーしたり、茶褐色のカラーコンタクトする人々で溢れ返っていた。
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宇佐田颯天もまた、日本人として生まれた事を誇りに思い、物心ついた時から、将来は地球防衛隊への入隊を切望していた。
地球防衛隊には、ごく少数存在しているという、超sup遺伝子を持つ者のみが入隊する資格が有った。
sup遺伝子は、日本人の2割が持つ、他者を救う為なら捨て身にさえなれるような性分の別名、『親切遺伝子』とか、必要な時に自分が思っていた実力以上の力が発揮できるという『火事場の馬鹿力遺伝子』と称されている、同じアジア系でも、日本人以外には見られないという特殊な遺伝子。
sup遺伝子の有無は、日本人として誕生した時に、唾液による遺伝子検査で簡単に確認されていた。
颯天の場合、運良く家族全員がsup遺伝子というサラブレッド的な家系に生まれ、当然ながら、その遺伝子を持って生まれる事が出来ていた。
問題は、例え検査上、その身体にsup遺伝子が確認されても、sup遺伝子の真の能力が発揮出来るか否かは、その後の彼らの経験に左右されるという事だった。
たまたま発揮すべく状況に置かれないまま生涯を閉じた場合は、例え、sup遺伝子を所持していた場合でも、宝の持ち腐れ状態となる。
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その特殊な環境に身を置かれた彼らの中から、超sup遺伝子を持つ精鋭達のみが、地球防衛隊へのパスポートを所持出来る事となる。
超sup遺伝子は、sup遺伝子を持つ人々の中に、僅か1%弱ほどの確率で存在していると言われている。
颯天の周りには、超sup遺伝子を持つと思われる人物はいなかった為、颯天も、その周囲の人々も、超sup遺伝子の確認の方法を知らなかった。
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颯天が最も憧れているのは、地球防衛隊の大和隊の中で、右に出る者はいないと言われる強者の荒田大輝。
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自分では到底敵わないと思いつつも、荒田のような隊員を目指し、常にメディアでの彼の功績をマークしていた颯天。
そして、大和隊員の荒田とは別に、颯天が、いつしか淡い思慕のような想いを抱くようになっているのが、地球防衛隊の女性隊員達、大和撫子隊でアイドル級の美貌を持ち、細やかな配慮と慈しみの溢れる笑顔が、男女問わず大人気の新見透子。
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特に朝は、その透子の笑顔が、颯天にとってのモチベーションアップに繋がっていた。
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男女交際が御法度で、女性とは隔離された環境に生活する彼らにとって、唯一の癒しが、大和撫子隊員達のポスターだった。
超sup遺伝子は、特に男性の方が能力開花しやすく、女性は開花しないままの人もいた。
その場合でも、母から娘へと継承しているrup遺伝子という癒し効果が高い遺伝子が、超sup遺伝子を持つ女性のみ開花する場合が多い。
透子も花蓮も、メディアが伝える功績を見る限り、後者のタイプのようだった。
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地球防衛隊はグループに分かれて行動するが、大抵の場合、大和隊員3名に対し、大和撫子隊員1名という内訳だが、季代の所属するグループに限っては、大和隊員2名、大和撫子隊員2名で、季代は大和隊員として扱われていた。
彼ら地球防衛隊員達もまた、颯天と同じ地球防衛隊本部内にいるのだが、広大な敷地の中、教育棟から離れている施設にいる為、接触はおろか、直に目にする機会も皆無だった。
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