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林間学校の開始と……

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 バスの席は、 詩奈しいなの足を考慮され、若葉と隣同士の最前列だった。
 休憩の度に、窓際と通路側で交代した2人。
 通路を挟んで、反対側には、 瑞輝みずきと 凌空りくがいた。
 
(幸せだな~! ワクワクが止まらない! 昨日も、緊張して眠れなかったから、ホントは眠いけど……隣に矢本君いるし、寝顔見られたくないから、ガマンしなくては! あっ、でも、矢本君も眠そうにキャップ下ろしてる……)

  バスガイドは20代後半くらいの慣れた女性で、最初はゲームなどを全員でしていたが、後部席の反応が薄かった為、背中を向けて座り休憩し、それ以降は自由時間となった。

「このクラスって、そういうところ有るよね。なんか馴染めないわ~」

 コソッと 詩奈しいなに耳打ちした若葉。

「確かに、若葉達がいてくれなかったら、私、引き籠り続けそうだった……」

「気持ち分かるよ……悪い意味での協調性が有るよね。それってホント、無くてもいいやつなんだけど」

 若葉の交友関係は元のクラスである4組の方が良かったらしく、たまに4組から元のクラスメイト達が若葉に会いに来る事も有った。
 
「若葉は、4組に戻りたい?」

「ううん、今は、 詩奈しいなと一緒にいたいし、 凌空りくに勉強の分からないところ聞けるし、何より 瑞輝みずきが一緒だから、このままがいいな~!」

 若葉の言葉で、胸を撫で下ろした 詩奈しいな

(でも、私の怪我が治ったら、若葉も矢本君も4組に戻るのかな? このまま1組に残っていて欲しいけど、それは、私のワガママなのかな……?)

  詩奈しいなが、そんな心配をしているとは知らず、通路を挟んで向こう側にいる 瑞輝みずきにちょっかいを出していた若葉。

「何だよ~? 眠いのに!」

 顔にキャップを被り、寝ていたところを邪魔をされ、不快そうな 瑞輝みずき

「ねぇ~、だから、肝試し!」

 甘えたような声で話しかけている若葉。

「その話は、さっき、もう終わった!」

 再び、キャップを顔に被せて寝ようとしている 瑞輝みずき

「どうしたの? 何のこと?」

(肝試しの話なんかしてたかな……?)

「朝、 詩奈しいなが来る前に、3人で話していたの。肝試しって、男女ペア行動なんだよね。グループ毎で固まるんだけど。私、 瑞輝みずきと組みたかったのに、 瑞輝みずきは 詩奈しいなと組むって言うから……」

(矢本君が私と……?)

 膨れっ面をしながら、 瑞輝みずきの太腿をドンドン叩いた若葉。

「痛いな~! 人の睡眠妨害するなよ~!」

「だって~、 瑞輝みずきと組みたい~!」

  瑞輝みずきが自分と組む事を宣言してくれたのは嬉しかったが、若葉の気持ちも分かる 詩奈しいな

「私なら、大丈夫よ! 怖いの強いし! 1人でもいいくらいだから!」

  瑞輝みずきが若葉とペアになっても構わないつもりで、いつもの口調で言った 詩奈しいな

「ほら、一番心配な人に気を遣わせるなよ! 牧田の怪我が治るまでは、俺が付いているって決めたんだから!」

  瑞輝みずきの言葉が、心にズッシリと重く響いた。
 
(怪我が治るまでは……って、言った。怪我が治ったら、矢本君はもう私のそばにいてくれないの? これは、治るまでっていう、期間限定のお友達ごっこなの? 最初っから、矢本君達はそのつもりだったの……? そうだよね、元々、こんな怪我が無かったら、私なんか一緒にいられるはずの無い相手だったのに。いつの間にか、この状態が居心地良すぎて、私の方が期待し過ぎてしまっていた……バカみたい、私……怪我が治っても、ずっと皆で一緒にいられる事を期待していたなんて……)

  詩奈しいなが沈んだ雰囲気でいる事に気が付いた 凌空りく

「まずは、落ち着いて、考えよう! 怖がりは、この中には誰かいる?」

「はい!」

 すかさず挙手した若葉を睨んだ 瑞輝みずきと 凌空りく

「却下! 有り得ない!」

「バレた~? でも、急に脅かされるのは苦手だよ、私」

(あれっ? 入院していた時に、ホラー映画誘われて、怖いの苦手って北岡君が言っていたのに……あれは映画の誘いを断る為の方便だったの?)

 今更ながら、 凌空りくの気遣いが嬉しく感じられた 詩奈しいな

「怖いとか、怖くないとかの問題じゃなく、問題なのは、暗いのと、足場が悪い事! だから、俺が牧田と行く!」

 それだけ言い切り、 瑞輝みずきが寝る態勢になった。

「つまんないの!」

「役不足の僕が相手で悪いね~、若葉」

  凌空りくも若葉と同様、複雑な心境だったが、それを誤魔化して笑った。

「別に、 凌空りくでもいいんだけどね~」

 諦めたような声の若葉。

「ゴメンね、若葉。私が怪我しているせいで、矢本君と組めなくて」

  詩奈しいなは謝りつつも、それ以外の時はいつでも、2人は一緒に行動出来る事を知っていたから、それほど心は咎めてなかった。

「ううん、私こそ、なんか、独占欲の固まりみたいになって、みっともなかった。ゴメンね!」

「分かってるじゃん、若葉!」

 寝ているのかと思ったら、若葉の発言を聞いて、同調した 瑞輝みずき

「うるさい、バカ、バカ~!」

 そう言いながら、また 瑞輝みずきの太腿をバシバシ叩いた若葉。

(こんなに若葉みたいな明るくて甘え上手な可愛い女子に思われて、矢本君はどう思っているんだろう? 男子だったら、絶対嬉しいよね……そうじゃなかったら、休みの日に2人で出かけないだろうし……)

 既にキャップに顔を隠されて眠っていそうな 瑞輝みずき越しに、外を見ている 凌空りくが目に入った。

(そういえば、北岡君って、どうなんだろう? 北岡君も若葉が好きなのかな? 一緒にいる時間が長いし、矢本君に遠慮しているのかも知れないけど、男子だったら皆、若葉みたいな快活で可愛い女子が好きになるよね。友達同士なだけに複雑だよね。若葉をめぐって、矢本君と泥沼化しないのかな? 北岡君の性格だったら、無難に切り抜けそうな気もするけど……)

  凌空りくが自分を想っている事など露知らず、勝手に、 瑞輝みずきと 凌空りくと若葉の三角関係を妄想していた 詩奈しいな
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