25 / 45
25.
林間学校の開始と……
しおりを挟む
バスの席は、 詩奈の足を考慮され、若葉と隣同士の最前列だった。
休憩の度に、窓際と通路側で交代した2人。
通路を挟んで、反対側には、 瑞輝と 凌空がいた。
(幸せだな~! ワクワクが止まらない! 昨日も、緊張して眠れなかったから、ホントは眠いけど……隣に矢本君いるし、寝顔見られたくないから、ガマンしなくては! あっ、でも、矢本君も眠そうにキャップ下ろしてる……)
バスガイドは20代後半くらいの慣れた女性で、最初はゲームなどを全員でしていたが、後部席の反応が薄かった為、背中を向けて座り休憩し、それ以降は自由時間となった。
「このクラスって、そういうところ有るよね。なんか馴染めないわ~」
コソッと 詩奈に耳打ちした若葉。
「確かに、若葉達がいてくれなかったら、私、引き籠り続けそうだった……」
「気持ち分かるよ……悪い意味での協調性が有るよね。それってホント、無くてもいいやつなんだけど」
若葉の交友関係は元のクラスである4組の方が良かったらしく、たまに4組から元のクラスメイト達が若葉に会いに来る事も有った。
「若葉は、4組に戻りたい?」
「ううん、今は、 詩奈と一緒にいたいし、 凌空に勉強の分からないところ聞けるし、何より 瑞輝が一緒だから、このままがいいな~!」
若葉の言葉で、胸を撫で下ろした 詩奈。
(でも、私の怪我が治ったら、若葉も矢本君も4組に戻るのかな? このまま1組に残っていて欲しいけど、それは、私のワガママなのかな……?)
詩奈が、そんな心配をしているとは知らず、通路を挟んで向こう側にいる 瑞輝にちょっかいを出していた若葉。
「何だよ~? 眠いのに!」
顔にキャップを被り、寝ていたところを邪魔をされ、不快そうな 瑞輝。
「ねぇ~、だから、肝試し!」
甘えたような声で話しかけている若葉。
「その話は、さっき、もう終わった!」
再び、キャップを顔に被せて寝ようとしている 瑞輝。
「どうしたの? 何のこと?」
(肝試しの話なんかしてたかな……?)
「朝、 詩奈が来る前に、3人で話していたの。肝試しって、男女ペア行動なんだよね。グループ毎で固まるんだけど。私、 瑞輝と組みたかったのに、 瑞輝は 詩奈と組むって言うから……」
(矢本君が私と……?)
膨れっ面をしながら、 瑞輝の太腿をドンドン叩いた若葉。
「痛いな~! 人の睡眠妨害するなよ~!」
「だって~、 瑞輝と組みたい~!」
瑞輝が自分と組む事を宣言してくれたのは嬉しかったが、若葉の気持ちも分かる 詩奈。
「私なら、大丈夫よ! 怖いの強いし! 1人でもいいくらいだから!」
瑞輝が若葉とペアになっても構わないつもりで、いつもの口調で言った 詩奈。
「ほら、一番心配な人に気を遣わせるなよ! 牧田の怪我が治るまでは、俺が付いているって決めたんだから!」
瑞輝の言葉が、心にズッシリと重く響いた。
(怪我が治るまでは……って、言った。怪我が治ったら、矢本君はもう私のそばにいてくれないの? これは、治るまでっていう、期間限定のお友達ごっこなの? 最初っから、矢本君達はそのつもりだったの……? そうだよね、元々、こんな怪我が無かったら、私なんか一緒にいられるはずの無い相手だったのに。いつの間にか、この状態が居心地良すぎて、私の方が期待し過ぎてしまっていた……バカみたい、私……怪我が治っても、ずっと皆で一緒にいられる事を期待していたなんて……)
詩奈が沈んだ雰囲気でいる事に気が付いた 凌空。
「まずは、落ち着いて、考えよう! 怖がりは、この中には誰かいる?」
「はい!」
すかさず挙手した若葉を睨んだ 瑞輝と 凌空。
「却下! 有り得ない!」
「バレた~? でも、急に脅かされるのは苦手だよ、私」
(あれっ? 入院していた時に、ホラー映画誘われて、怖いの苦手って北岡君が言っていたのに……あれは映画の誘いを断る為の方便だったの?)
今更ながら、 凌空の気遣いが嬉しく感じられた 詩奈。
「怖いとか、怖くないとかの問題じゃなく、問題なのは、暗いのと、足場が悪い事! だから、俺が牧田と行く!」
それだけ言い切り、 瑞輝が寝る態勢になった。
「つまんないの!」
「役不足の僕が相手で悪いね~、若葉」
凌空も若葉と同様、複雑な心境だったが、それを誤魔化して笑った。
「別に、 凌空でもいいんだけどね~」
諦めたような声の若葉。
「ゴメンね、若葉。私が怪我しているせいで、矢本君と組めなくて」
詩奈は謝りつつも、それ以外の時はいつでも、2人は一緒に行動出来る事を知っていたから、それほど心は咎めてなかった。
「ううん、私こそ、なんか、独占欲の固まりみたいになって、みっともなかった。ゴメンね!」
「分かってるじゃん、若葉!」
寝ているのかと思ったら、若葉の発言を聞いて、同調した 瑞輝。
「うるさい、バカ、バカ~!」
そう言いながら、また 瑞輝の太腿をバシバシ叩いた若葉。
(こんなに若葉みたいな明るくて甘え上手な可愛い女子に思われて、矢本君はどう思っているんだろう? 男子だったら、絶対嬉しいよね……そうじゃなかったら、休みの日に2人で出かけないだろうし……)
既にキャップに顔を隠されて眠っていそうな 瑞輝越しに、外を見ている 凌空が目に入った。
(そういえば、北岡君って、どうなんだろう? 北岡君も若葉が好きなのかな? 一緒にいる時間が長いし、矢本君に遠慮しているのかも知れないけど、男子だったら皆、若葉みたいな快活で可愛い女子が好きになるよね。友達同士なだけに複雑だよね。若葉をめぐって、矢本君と泥沼化しないのかな? 北岡君の性格だったら、無難に切り抜けそうな気もするけど……)
凌空が自分を想っている事など露知らず、勝手に、 瑞輝と 凌空と若葉の三角関係を妄想していた 詩奈。
休憩の度に、窓際と通路側で交代した2人。
通路を挟んで、反対側には、 瑞輝と 凌空がいた。
(幸せだな~! ワクワクが止まらない! 昨日も、緊張して眠れなかったから、ホントは眠いけど……隣に矢本君いるし、寝顔見られたくないから、ガマンしなくては! あっ、でも、矢本君も眠そうにキャップ下ろしてる……)
バスガイドは20代後半くらいの慣れた女性で、最初はゲームなどを全員でしていたが、後部席の反応が薄かった為、背中を向けて座り休憩し、それ以降は自由時間となった。
「このクラスって、そういうところ有るよね。なんか馴染めないわ~」
コソッと 詩奈に耳打ちした若葉。
「確かに、若葉達がいてくれなかったら、私、引き籠り続けそうだった……」
「気持ち分かるよ……悪い意味での協調性が有るよね。それってホント、無くてもいいやつなんだけど」
若葉の交友関係は元のクラスである4組の方が良かったらしく、たまに4組から元のクラスメイト達が若葉に会いに来る事も有った。
「若葉は、4組に戻りたい?」
「ううん、今は、 詩奈と一緒にいたいし、 凌空に勉強の分からないところ聞けるし、何より 瑞輝が一緒だから、このままがいいな~!」
若葉の言葉で、胸を撫で下ろした 詩奈。
(でも、私の怪我が治ったら、若葉も矢本君も4組に戻るのかな? このまま1組に残っていて欲しいけど、それは、私のワガママなのかな……?)
詩奈が、そんな心配をしているとは知らず、通路を挟んで向こう側にいる 瑞輝にちょっかいを出していた若葉。
「何だよ~? 眠いのに!」
顔にキャップを被り、寝ていたところを邪魔をされ、不快そうな 瑞輝。
「ねぇ~、だから、肝試し!」
甘えたような声で話しかけている若葉。
「その話は、さっき、もう終わった!」
再び、キャップを顔に被せて寝ようとしている 瑞輝。
「どうしたの? 何のこと?」
(肝試しの話なんかしてたかな……?)
「朝、 詩奈が来る前に、3人で話していたの。肝試しって、男女ペア行動なんだよね。グループ毎で固まるんだけど。私、 瑞輝と組みたかったのに、 瑞輝は 詩奈と組むって言うから……」
(矢本君が私と……?)
膨れっ面をしながら、 瑞輝の太腿をドンドン叩いた若葉。
「痛いな~! 人の睡眠妨害するなよ~!」
「だって~、 瑞輝と組みたい~!」
瑞輝が自分と組む事を宣言してくれたのは嬉しかったが、若葉の気持ちも分かる 詩奈。
「私なら、大丈夫よ! 怖いの強いし! 1人でもいいくらいだから!」
瑞輝が若葉とペアになっても構わないつもりで、いつもの口調で言った 詩奈。
「ほら、一番心配な人に気を遣わせるなよ! 牧田の怪我が治るまでは、俺が付いているって決めたんだから!」
瑞輝の言葉が、心にズッシリと重く響いた。
(怪我が治るまでは……って、言った。怪我が治ったら、矢本君はもう私のそばにいてくれないの? これは、治るまでっていう、期間限定のお友達ごっこなの? 最初っから、矢本君達はそのつもりだったの……? そうだよね、元々、こんな怪我が無かったら、私なんか一緒にいられるはずの無い相手だったのに。いつの間にか、この状態が居心地良すぎて、私の方が期待し過ぎてしまっていた……バカみたい、私……怪我が治っても、ずっと皆で一緒にいられる事を期待していたなんて……)
詩奈が沈んだ雰囲気でいる事に気が付いた 凌空。
「まずは、落ち着いて、考えよう! 怖がりは、この中には誰かいる?」
「はい!」
すかさず挙手した若葉を睨んだ 瑞輝と 凌空。
「却下! 有り得ない!」
「バレた~? でも、急に脅かされるのは苦手だよ、私」
(あれっ? 入院していた時に、ホラー映画誘われて、怖いの苦手って北岡君が言っていたのに……あれは映画の誘いを断る為の方便だったの?)
今更ながら、 凌空の気遣いが嬉しく感じられた 詩奈。
「怖いとか、怖くないとかの問題じゃなく、問題なのは、暗いのと、足場が悪い事! だから、俺が牧田と行く!」
それだけ言い切り、 瑞輝が寝る態勢になった。
「つまんないの!」
「役不足の僕が相手で悪いね~、若葉」
凌空も若葉と同様、複雑な心境だったが、それを誤魔化して笑った。
「別に、 凌空でもいいんだけどね~」
諦めたような声の若葉。
「ゴメンね、若葉。私が怪我しているせいで、矢本君と組めなくて」
詩奈は謝りつつも、それ以外の時はいつでも、2人は一緒に行動出来る事を知っていたから、それほど心は咎めてなかった。
「ううん、私こそ、なんか、独占欲の固まりみたいになって、みっともなかった。ゴメンね!」
「分かってるじゃん、若葉!」
寝ているのかと思ったら、若葉の発言を聞いて、同調した 瑞輝。
「うるさい、バカ、バカ~!」
そう言いながら、また 瑞輝の太腿をバシバシ叩いた若葉。
(こんなに若葉みたいな明るくて甘え上手な可愛い女子に思われて、矢本君はどう思っているんだろう? 男子だったら、絶対嬉しいよね……そうじゃなかったら、休みの日に2人で出かけないだろうし……)
既にキャップに顔を隠されて眠っていそうな 瑞輝越しに、外を見ている 凌空が目に入った。
(そういえば、北岡君って、どうなんだろう? 北岡君も若葉が好きなのかな? 一緒にいる時間が長いし、矢本君に遠慮しているのかも知れないけど、男子だったら皆、若葉みたいな快活で可愛い女子が好きになるよね。友達同士なだけに複雑だよね。若葉をめぐって、矢本君と泥沼化しないのかな? 北岡君の性格だったら、無難に切り抜けそうな気もするけど……)
凌空が自分を想っている事など露知らず、勝手に、 瑞輝と 凌空と若葉の三角関係を妄想していた 詩奈。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
はじまりはいつもラブオール
フジノシキ
キャラ文芸
ごく平凡な卓球少女だった鈴原柚乃は、ある日カットマンという珍しい守備的な戦術の美しさに魅せられる。
高校で運命的な再会を果たした柚乃は、仲間と共に休部状態だった卓球部を復活させる。
ライバルとの出会いや高校での試合を通じ、柚乃はあの日魅せられた卓球を目指していく。
主人公たちの高校部活動青春ものです。
日常パートは人物たちの掛け合いを中心に、
卓球パートは卓球初心者の方にわかりやすく、経験者の方には戦術などを楽しんでいただけるようにしています。
pixivにも投稿しています。
【完結まで毎日更新】籐球ミットラパープ
四国ユキ
青春
主人公・阿河彩夏(あがわあやか)は高校入学と同時にセパタクロー部から熱烈な勧誘を受ける。セパタクローとはマイナースポーツの一種で、端的に言うと腕を使わないバレーボールだ。
彩夏は見学に行った時には入部する気はさらさらなかったが、同級生で部員の千屋唯(せんやゆい)の傲慢で尊大な態度が気に食わず、売り言葉に買い言葉で入部してしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる