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3 王妃の部屋
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城での日々は憂鬱なものになるだろうと考えていたエルゼだったが、その予想は大幅に外れた。
「エルゼ、少しいいか。その、庭師から庭に薔薇が咲いたと言われて、持ってきたのだが……」
忙しい公務の合間をぬって、今日もまたロレシオがエルゼの部屋を訪ねてきた。エルゼは少し微笑むと、書き物をしていた手を止めて、ロレシオから薔薇を受け取った。
(今日は薔薇なのね……)
薔薇の瑞々しい濃やかな香りに、口元が自然にほころぶ。
エルゼは美しい礼をした。
「ありがとうございます」
「そうかしこまらなくていい。君が喜んでくれてよかった。庭師にも礼を言わねばな」
ロレシオは嬉しそうに目を細める。
ロレシオは一日に一度はこうしてエルゼの部屋を訪れた。「良い茶葉が手に入った」「確認してほしい書類がある」等々、律儀になにかしらの理由をつけて。そして、エルゼと紅茶を一杯だけ飲み、部屋に帰っていく。
邪魔もの扱いされると覚悟していたエルゼは、大いに拍子抜けした。長年片思いをしている相手がいるロレシオにとって、政略結婚した妻など疎ましい存在のはずなのに。
まあ、真面目なロレシオのことだ。王妃であるエルゼを尊重するために毎日訪れているに違いない。それでも、エルゼはロレシオの気遣いが嬉しかった。
(初夜以降は一度も夜のお相手に呼んでくださらないけれど、これ以上の待遇は、望めないわ)
ロレシオはエルゼを王妃として扱い、大事にしてくれている。エルゼ付きの侍女たちは、しきりに国王は若い王妃を寵愛していると噂しているようだ。
エルゼがロレシオの向かいの席に座ると、侍女たちが手早くアフタヌーンティーの用意を始める。侍女長がニコリと微笑んだ。
「王妃様、お茶を用意いたしましたわ。陛下から頂いた薔薇は花瓶にいれて飾りますので、こちらへ」
「ええ、ありがとう」
「それでは、私たちは失礼いたします。ごゆっくり、お過ごしくださいな」
侍女たちは折り目正しく一礼すると、にこやかに揃って出て行く。夫婦水入らずの時間を邪魔しないように配慮してくれているのだろう。
エルゼは改めてロレシオに向かいあった。
「とてもきれいな薔薇でしたわ。特に香りが素晴らしくて、ずっと手元に置いておきたいと思ってしまいました」
「ヴォルクレール城の庭の薔薇は素晴らしい。君も公務ばかりではなく、庭を散歩してみるがいい。それに、君が散歩をすれば侍女たちが喜ぶだろう。……実を言えば、侍女たちが君を働かせすぎだと私に文句をいってくるのだ」
「まあ、そうでしたの。みんな心配性なんだから……」
「皆が心配するのは、君がそれだけ大事にされるに値する人間だからだ」
「そっ、そんな……。光栄ですわ」
ロレシオの率直な褒め言葉に、エルゼは頬を赤らめる。
(ロレシオ様は些細なことでも必ず褒めてくれるから、舞い上がってしまうわ。前世では、どんなに頑張っても誰も褒めてくれなかったのに……)
優しい夫の役に立ちたい一心で、エルゼは張り切って王妃としての公務に励んだ。
王妃として2度目の人生歩んでいるため、エルゼの王妃としての手腕は並外れて優れていた。宰相たちはすぐにエルゼを城の女主人と認め、ロレシオもまたエルゼに多大なる信頼を寄せている。
いつもは忌まわしいとまで思ってしまうイヴァンカ・クラウンの記憶だったが、今回ばかりは大いに役に立ったようだ。
とにもかくにも、照れていては話が進まない。話題を変えようと、エルゼはロレシオに数枚の資料と一冊の本を渡した。
「この前お話いただいた件なのですが、役立ちそうな資料を見つけましたのでお渡ししておきますね。それから、頼まれていた午後の資料はこちらです。スペルミスがありましたので、直しておきました」
「ああ、ありがとう。いつも君には助けられてばかりだな。予算案も、君の鋭い指摘のおかげで良いものがまとまりそうだ」
「お役に立てて光栄ですわ」
「予算の話なのだが、城の改修に予算をまわそうという話もでてな。エルゼは、このヴォルクレール城に不満はないか?」
「不満、ですか?」
急な質問に、エルゼは小首をかしげる。ロレシオは鷹揚に頷いた。
「そうだ。このヴォルクレール城は無理な建て増しで、迷路のようなつくりになっているだろう。君には比較的簡単なつくりの東棟の部屋に住んでもらっているが、不便がないかと宰相たちが心配していてな。もし不便であれば、いっそ改修しようと」
「お気遣いいただきありがとうございます。今のところ、これといって問題ありません」
エルゼの答えに、ロレシオは心なしかホッとした顔をした。あまり城の改修には乗り気ではなかったのだろう。
「君が不満に思っていないのであれば、無理に城内のつくりを変える必要はないな。他に予算を充てるべき場所は山ほどある」
「陛下のご随意に」
「思えば、確かに君が城で迷ったという話は聞いたことがなかったな。私なんて、最初は食堂に行くたびに自室に帰れなくなったというのに」
「まあ、苦労されましたのね」
エルゼは口に手をあててクスクスと笑う。
確かに、この城のつくりは迷路のように入り組んでいる。エルゼが迷わないのは、イヴァンカの記憶のおかげだ。イヴァンカは目が悪く、あまり外にでたことがなかった。その代わりに、この城の間取りは誰よりも熟知していた。
楽しそうに笑うエルゼにつられて、ロレシオも目を細めた。
「エルゼ、君も知っての通り、この城は無駄に部屋だけはあるし、使っていない部屋も多い。もし必要であれば、どの部屋もエルゼの好きなように使ってもらっても構わない。今の部屋も手狭だろう」
ロレシオの申し出にエルゼは少しだけ考えた。
今の部屋は十二分に広いため、手狭であるとは思っていない。しかし、エルゼはかねてから移りたいと思っている部屋があった。
エルゼは、恐る恐るその願いを口にする。
「それでは、陛下の部屋の隣のお部屋をいただきたいのです。その部屋は、代々王妃が使ってきた部屋だと伺っております」
エルゼが求めたのは、代々王妃が使っていた部屋――それはすなわち、イヴァンカ・クラウンが一日の大半を過ごした愛着のある部屋だった。
お飾りとはいえ、エルゼは王妃だ。あの部屋を使う権利はあるはずだ。
しかし、エルゼの一言にロレシオの顔がさっと強張った。
ややあって、ロレシオは硬い声で答えた。
「すまない。その願いは聞き入れることができない。あの部屋は大事な人の部屋なんだ」
ロレシオの言葉に、エルゼは青くなる。歴代の王妃が使っていた部屋にエルゼを招き入れない理由。思い当たるのは一つしかない。
(ああ、例の片思いをしている方があの部屋を使っているということ……)
「……分かりました」
エルゼは弱々しく頷いた。鼻の奥がツンとする。
(わたくしったら、陛下から寵愛を受けたつもりになっていたんだわ……。本当は、わたくしなんかが愛なんて求めてはいけないのに)
うなだれたエルゼを見て、ロレシオは慌てた顔をする。
「あの部屋以外であれば、どの部屋だって使っていい。この城のものは全て君のものなのだから。君の王妃としての働きぶりは、私も認めるところだ。どんな宝石を贈っても、君の勲功に報いることはできないだろう。君の働きぶりは私の宝だ」
「陛下……」
「君が王妃になってくれて、本当に良かったと思っている。これだけは本心だと思ってくれ」
ロレシオの青灰色の瞳に、ふっと熱い光がよぎる。
エルゼはふいに蜃気楼のような奇妙な懐かしさを覚えた。ずっと昔に、この瞳を好ましく思っていた気がする。
ロレシオもまた、エルゼの瞳から目を逸らせないようだった。お互いの記憶を探るような、長い沈黙が二人の間に流れる。
やがて、ハッとしたエルゼが慌てて視線をそらした。
「……困らせるようなことを言ってごめんなさい。陛下が本心からそう言っていらっしゃるのは、ちゃんと分かっています」
会話を途切れさせないよう、エルゼはそれだけをやっと答えた。エルゼの瞳に見惚れていたロレシオも、ゆっくりと目を逸らす。どういうわけか、目元が少し赤い。
「すまない。不躾に、君をじっと見つめるようなことをして……。今日の私は、少しおかしいようだ。このあたりで切り上げさせてくれ」
ロレシオはカップの底に残ったぬるい紅茶をぐいっと飲み干し、早足で自室に戻っていった。
賑やかだった部屋に、再び静寂が訪れる。あまりに静かだ。エルゼは額に手を当てた。
(本当に駄目ね。わたくしったら、ロレシオ様を困らせてしまったわ……)
多忙なロレシオの心理的負担になるのは、エルゼにとっても本意ではない。
それでも、ロレシオの片思いの相手が部屋にいると思うと、エルゼの胸はぎゅうっと痛んだ。
(こんな嫉妬をするなんて、馬鹿げているわ。陛下の大事な方へのお気持ちを、ぽっと出のわたくしが変えることなんてできないのに)
ため息をつきつつ公務に戻ろうと立ち上がったその時、エルゼはとあることに気づいた。机の片隅に、書類が数枚置きっぱなしになっている。エルゼの渡した本もそのままだ。
「まあ、これって午後からの会議で使うんじゃなかったかしら」
どうやらロレシオは、何も持たずに帰ってしまったらしい。侍女を呼びつけてロレシオに届けさせようにも、近くに侍女たちの姿はない。
エルゼは慌てて立ち上がり、忘れ物を持って部屋を飛び出した。
「エルゼ、少しいいか。その、庭師から庭に薔薇が咲いたと言われて、持ってきたのだが……」
忙しい公務の合間をぬって、今日もまたロレシオがエルゼの部屋を訪ねてきた。エルゼは少し微笑むと、書き物をしていた手を止めて、ロレシオから薔薇を受け取った。
(今日は薔薇なのね……)
薔薇の瑞々しい濃やかな香りに、口元が自然にほころぶ。
エルゼは美しい礼をした。
「ありがとうございます」
「そうかしこまらなくていい。君が喜んでくれてよかった。庭師にも礼を言わねばな」
ロレシオは嬉しそうに目を細める。
ロレシオは一日に一度はこうしてエルゼの部屋を訪れた。「良い茶葉が手に入った」「確認してほしい書類がある」等々、律儀になにかしらの理由をつけて。そして、エルゼと紅茶を一杯だけ飲み、部屋に帰っていく。
邪魔もの扱いされると覚悟していたエルゼは、大いに拍子抜けした。長年片思いをしている相手がいるロレシオにとって、政略結婚した妻など疎ましい存在のはずなのに。
まあ、真面目なロレシオのことだ。王妃であるエルゼを尊重するために毎日訪れているに違いない。それでも、エルゼはロレシオの気遣いが嬉しかった。
(初夜以降は一度も夜のお相手に呼んでくださらないけれど、これ以上の待遇は、望めないわ)
ロレシオはエルゼを王妃として扱い、大事にしてくれている。エルゼ付きの侍女たちは、しきりに国王は若い王妃を寵愛していると噂しているようだ。
エルゼがロレシオの向かいの席に座ると、侍女たちが手早くアフタヌーンティーの用意を始める。侍女長がニコリと微笑んだ。
「王妃様、お茶を用意いたしましたわ。陛下から頂いた薔薇は花瓶にいれて飾りますので、こちらへ」
「ええ、ありがとう」
「それでは、私たちは失礼いたします。ごゆっくり、お過ごしくださいな」
侍女たちは折り目正しく一礼すると、にこやかに揃って出て行く。夫婦水入らずの時間を邪魔しないように配慮してくれているのだろう。
エルゼは改めてロレシオに向かいあった。
「とてもきれいな薔薇でしたわ。特に香りが素晴らしくて、ずっと手元に置いておきたいと思ってしまいました」
「ヴォルクレール城の庭の薔薇は素晴らしい。君も公務ばかりではなく、庭を散歩してみるがいい。それに、君が散歩をすれば侍女たちが喜ぶだろう。……実を言えば、侍女たちが君を働かせすぎだと私に文句をいってくるのだ」
「まあ、そうでしたの。みんな心配性なんだから……」
「皆が心配するのは、君がそれだけ大事にされるに値する人間だからだ」
「そっ、そんな……。光栄ですわ」
ロレシオの率直な褒め言葉に、エルゼは頬を赤らめる。
(ロレシオ様は些細なことでも必ず褒めてくれるから、舞い上がってしまうわ。前世では、どんなに頑張っても誰も褒めてくれなかったのに……)
優しい夫の役に立ちたい一心で、エルゼは張り切って王妃としての公務に励んだ。
王妃として2度目の人生歩んでいるため、エルゼの王妃としての手腕は並外れて優れていた。宰相たちはすぐにエルゼを城の女主人と認め、ロレシオもまたエルゼに多大なる信頼を寄せている。
いつもは忌まわしいとまで思ってしまうイヴァンカ・クラウンの記憶だったが、今回ばかりは大いに役に立ったようだ。
とにもかくにも、照れていては話が進まない。話題を変えようと、エルゼはロレシオに数枚の資料と一冊の本を渡した。
「この前お話いただいた件なのですが、役立ちそうな資料を見つけましたのでお渡ししておきますね。それから、頼まれていた午後の資料はこちらです。スペルミスがありましたので、直しておきました」
「ああ、ありがとう。いつも君には助けられてばかりだな。予算案も、君の鋭い指摘のおかげで良いものがまとまりそうだ」
「お役に立てて光栄ですわ」
「予算の話なのだが、城の改修に予算をまわそうという話もでてな。エルゼは、このヴォルクレール城に不満はないか?」
「不満、ですか?」
急な質問に、エルゼは小首をかしげる。ロレシオは鷹揚に頷いた。
「そうだ。このヴォルクレール城は無理な建て増しで、迷路のようなつくりになっているだろう。君には比較的簡単なつくりの東棟の部屋に住んでもらっているが、不便がないかと宰相たちが心配していてな。もし不便であれば、いっそ改修しようと」
「お気遣いいただきありがとうございます。今のところ、これといって問題ありません」
エルゼの答えに、ロレシオは心なしかホッとした顔をした。あまり城の改修には乗り気ではなかったのだろう。
「君が不満に思っていないのであれば、無理に城内のつくりを変える必要はないな。他に予算を充てるべき場所は山ほどある」
「陛下のご随意に」
「思えば、確かに君が城で迷ったという話は聞いたことがなかったな。私なんて、最初は食堂に行くたびに自室に帰れなくなったというのに」
「まあ、苦労されましたのね」
エルゼは口に手をあててクスクスと笑う。
確かに、この城のつくりは迷路のように入り組んでいる。エルゼが迷わないのは、イヴァンカの記憶のおかげだ。イヴァンカは目が悪く、あまり外にでたことがなかった。その代わりに、この城の間取りは誰よりも熟知していた。
楽しそうに笑うエルゼにつられて、ロレシオも目を細めた。
「エルゼ、君も知っての通り、この城は無駄に部屋だけはあるし、使っていない部屋も多い。もし必要であれば、どの部屋もエルゼの好きなように使ってもらっても構わない。今の部屋も手狭だろう」
ロレシオの申し出にエルゼは少しだけ考えた。
今の部屋は十二分に広いため、手狭であるとは思っていない。しかし、エルゼはかねてから移りたいと思っている部屋があった。
エルゼは、恐る恐るその願いを口にする。
「それでは、陛下の部屋の隣のお部屋をいただきたいのです。その部屋は、代々王妃が使ってきた部屋だと伺っております」
エルゼが求めたのは、代々王妃が使っていた部屋――それはすなわち、イヴァンカ・クラウンが一日の大半を過ごした愛着のある部屋だった。
お飾りとはいえ、エルゼは王妃だ。あの部屋を使う権利はあるはずだ。
しかし、エルゼの一言にロレシオの顔がさっと強張った。
ややあって、ロレシオは硬い声で答えた。
「すまない。その願いは聞き入れることができない。あの部屋は大事な人の部屋なんだ」
ロレシオの言葉に、エルゼは青くなる。歴代の王妃が使っていた部屋にエルゼを招き入れない理由。思い当たるのは一つしかない。
(ああ、例の片思いをしている方があの部屋を使っているということ……)
「……分かりました」
エルゼは弱々しく頷いた。鼻の奥がツンとする。
(わたくしったら、陛下から寵愛を受けたつもりになっていたんだわ……。本当は、わたくしなんかが愛なんて求めてはいけないのに)
うなだれたエルゼを見て、ロレシオは慌てた顔をする。
「あの部屋以外であれば、どの部屋だって使っていい。この城のものは全て君のものなのだから。君の王妃としての働きぶりは、私も認めるところだ。どんな宝石を贈っても、君の勲功に報いることはできないだろう。君の働きぶりは私の宝だ」
「陛下……」
「君が王妃になってくれて、本当に良かったと思っている。これだけは本心だと思ってくれ」
ロレシオの青灰色の瞳に、ふっと熱い光がよぎる。
エルゼはふいに蜃気楼のような奇妙な懐かしさを覚えた。ずっと昔に、この瞳を好ましく思っていた気がする。
ロレシオもまた、エルゼの瞳から目を逸らせないようだった。お互いの記憶を探るような、長い沈黙が二人の間に流れる。
やがて、ハッとしたエルゼが慌てて視線をそらした。
「……困らせるようなことを言ってごめんなさい。陛下が本心からそう言っていらっしゃるのは、ちゃんと分かっています」
会話を途切れさせないよう、エルゼはそれだけをやっと答えた。エルゼの瞳に見惚れていたロレシオも、ゆっくりと目を逸らす。どういうわけか、目元が少し赤い。
「すまない。不躾に、君をじっと見つめるようなことをして……。今日の私は、少しおかしいようだ。このあたりで切り上げさせてくれ」
ロレシオはカップの底に残ったぬるい紅茶をぐいっと飲み干し、早足で自室に戻っていった。
賑やかだった部屋に、再び静寂が訪れる。あまりに静かだ。エルゼは額に手を当てた。
(本当に駄目ね。わたくしったら、ロレシオ様を困らせてしまったわ……)
多忙なロレシオの心理的負担になるのは、エルゼにとっても本意ではない。
それでも、ロレシオの片思いの相手が部屋にいると思うと、エルゼの胸はぎゅうっと痛んだ。
(こんな嫉妬をするなんて、馬鹿げているわ。陛下の大事な方へのお気持ちを、ぽっと出のわたくしが変えることなんてできないのに)
ため息をつきつつ公務に戻ろうと立ち上がったその時、エルゼはとあることに気づいた。机の片隅に、書類が数枚置きっぱなしになっている。エルゼの渡した本もそのままだ。
「まあ、これって午後からの会議で使うんじゃなかったかしら」
どうやらロレシオは、何も持たずに帰ってしまったらしい。侍女を呼びつけてロレシオに届けさせようにも、近くに侍女たちの姿はない。
エルゼは慌てて立ち上がり、忘れ物を持って部屋を飛び出した。
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