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リシャールの嫉妬(2) ※

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 ――よかった、騎士たちには気付かれずに済んだわ……。

 怖がらせてしまったのは申し訳ないとは思ったものの、それでもコルネリアは心からほっとした。リシャールは、そんなコルネリアの耳元に唇を寄せ、低く囁く。

「安心している暇はないと思うのですが」
「えっ……? ああぁっ……、んっ……」

 次の瞬間、リシャールはコルネリアを後ろから抱きすくめたまま一気にコルネリアを貫いた。両足が浮くほど強く穿たれて、コルネリアは瞳を大きく見開く。
 蜜壺はさして解されていないのにも関わらず、予期したほどの痛みはない。むしろ、待ち望んでいた強烈な快楽に、身体中が歓喜している。もっとこの熱がほしいと、浅ましく柔壁が奥へ奥へ引き込もうとぎゅうぎゅう締め付けている。

「ふふ、解さなくてもちゃんと受け入れられましたね……」
「ひぃっ、や、……あ、ああんっ……」

 シャールはゆっくりと抽送を開始する。背後から立ったまま繋がったため、いつも刺激されないような場所にリシャールの先端が当たる。子宮口を突かれる度に、息が止まるほどの快楽がコルネリアの全身を駆け巡った。

「だめ、それ……ふかいっ……」

 必死につま先立ちで身体を支えようとするものの、押し上げられるように激しく揺さぶられて、それさえもままならない。もうこれ以上入らないと思う場所のさらに奥を、リシャールは激しく責め立てる。
 今のコルネリアにとってその激しさは快楽以外の何物でもなかった。リシャールが動くたび、目の前が真っ白になるような強烈な悦楽に襲われて、意識が飛びそうになる。コルネリアの唇から再び甘い悲鳴が漏れ始めた。

「あんっ……ふ、ふぅっ……」

 コルネリアの両脚がガクガクと震える。いつもは大切に扱おうとしてくれていたリシャールだが、今日はまるで余裕がない。優しい交わりとは全く違う、ただただコルネリアの身体を貪り尽くすような激しい性交。
 強すぎる快楽から逃げようとしても、リシャールの大きな手がコルネリアの細い腰を掴んで、離さない。

「やっ……ぁんっ! ああぁっ!」
「あまり大きな声を出すとあの騎士たちが戻ってくるかもしれませんよ?」
「や……、だめ……」
「まあ、聞かせてやってもいいんですけどね。コルネリアは俺のものだと、皆が知ることになるから」
「はぁっ、あ、あっ、……もう、もう許して……」

 リシャールが激しく動くたびに、身体を凭せ掛けている机がギシギシと音を立てた。視界に白い靄がかかっていく。絶頂が近いのを感じて、コルネリアは必死に頭を振った。

「あ、ああっ……だめっ……だめぇっ! もう、イっちゃ……」
「イっていいですよ」

 吐息交りに許可を与えると、リシャールはコルネリアの奥地をさらに強くぐちゅぐちゅと穿つ。コルネリアの身体は呆気なく達してしまった。結合部からとろとろと透明な液体が漏れ出し、身体中の力がふわふわと抜けていく。膝から崩れ落ちそうになったところをリシャールに抱き留められ、そのまま机の上に仰向けに寝かされた。
 リシャールの冷たいアイスブルーの瞳が、じっとこちらを見下ろしている。その瞳の奥には、暗い翳りが揺らめいていた。

 ──ああ、わたくしはリシャールを不安にさせてしまったんだわ。

 身体の奥に燻る快楽の余韻に朦朧としながらも、コルネリアは悟る。気の利いたことを言って慰められればいいのに、こういう時に限って言葉が出てこない。
 コルネリアは逡巡し、両手を広げてリシャールを抱きしめた。剥き出しの柔らかな乳房が、シャールの滑らかな胸板に押し付けられ、形を変える。

「不安にさせて、ごめんなさい。愛しているのはリシャールだけよ」

 コルネリアは心からそう言った。
 何度も、リシャールから離れようとした。この国から逃げようとしたことすらある。それでも、どうしても離れられなかった。この感情が愛でないなら、いったい何だと言うのだろう。

「本当に……?」

 不安そうに揺れる瞳に、コルネリアの心臓がどくりと大きく脈打つ。

 ――わたくしは、おかしくなってしまったのかしら。リシャールにこうして嫉妬されて、なぜか嬉しいと思ってしまう。

 コルネリアはこくりの喉を鳴らすと、リシャールの頬に手を添えて、そっと口付けた。そして、ドレスのスカートの裾を腰あたりまでたくし上げ、未だに身体の中心でそそり立ったままの肉楔に手を添えて、自分の秘所にそっと導く。

「……こういうことをしたいと思うのも、貴方だけなのよ」

 コルネリアの滑らかな手の中で、リシャールのものがびくりと震える。
 自分が唇から滑り出たあまりに淫猥な言葉に、コルネリアは頬を赤くした。羞恥のあまり、眉間に皺が寄る。

 ――なんて、はしたないのかしら……。

 気の利いた言葉が出なかったからとはいえ、こんな誘い方はあまりにもあまりにも直接的過ぎる。先ほどの騎士たちが言う理想的な淑女であれば、絶対に口にしないだろう。
 リシャールはしばらく、何も答えなかった。不思議に思い、おずおずと上目遣いでリシャールを見ると、リシャールの白皙の顔が見たこともないほど真っ赤になっていた。

「リシャール、顔が真っ赤……」
「ああもう、ベッテラムくそったれ!」
「きゃっ!」

 リシャールはコルネリアの両脚を抱くと、強く引き寄せる。コルネリアの腰が浮き、リシャールはコルネリアに覆いかぶさるような姿勢になった。先ほどより質量を増した屹立が、コルネリアの秘裂に押し当てられ、ゆっくりと内壁を擦りながら侵入していく。
 先ほど達したばかりの敏感な身体には刺激が強すぎて、コルネリアは悲鳴のような嬌声を上げた。

「あぁっ! やぁ、だめぇ…っん…っ!」
「……コルネリアは本当に俺を喜ばせるのがうますぎる。俺は、怒ってたんですからね!」

 リシャールがぐしゃりと前髪を搔き上げ、唇を舐める。その仕草があまりに扇情的で、コルネリアは子宮の奥がきゅんと疼くのを感じた。コルネリアの両脚をしっかりと抱え、リシャールは腰を打ち付け始めた。最奥まで突き上げられ、ぎりぎりまで引き抜かれる。潤んだ内壁を擦り上げられ、最奥を何度も突かれるたびに、コルネリアは目の前に火花が散るような快楽を感じた。

「んっ、ぁああ……」

 下腹がみっちりと隙間なく埋め込まれる感覚に、身体中が歓喜に戦慄く。
 身体が打ち付けられるたびに、はしたない水音混じりの音が響く。コルネリアの内部が収斂して屹立を締め付けてしまう。その締め付けを楽しむかのように、リシャールは何度も腰を打ち付けた。そのたびに、彼の先端が子宮の入り口を抉り、コルネリアの身体がびくびくと痙攣する。喘ぐばかりの口は、閉じることすらままならない。

 ――きっと今、わたくしはひどい顔をしているわ……。

 快楽に蕩けきっただらしのない顔をリシャールに晒していると思うと恥ずかしくて、コルネリアは両手で顔を覆った。しかし、リシャールはコルネリアの両手首をつかみ、強引にテーブルの上に押さえつける。

「ダメじゃないですか、コルネリア。ちゃんと顔を見せてくれないと」
「あぅ……」

 欲情でぎらついたアイスブルーの瞳が、コルネリアをひたと見据えている。冷たく、それでいて熱のこもった視線。その視線に射抜かれただけで、コルネリアは下腹の奥が潤むのを感じた。

「……リシャール、薄々思っていたのだけど、……貴方って時々、とても意地悪だわ」
「今更、なにを仰るのですか」

 リシャールはコルネリアの太腿を掴むと、さらに大きく脚を開かせる。いよいよ彼のものがより深く入り込み、コルネリアはたまらず甲高い声を上げた。
 コルネリアの身体を折り曲げるようにして、リシャールが体重をかける。もうこれ以上入らないと思っていた場所のさらの奥まで屹立を埋め込まれ、コルネリアは頭の芯が焼き切れるような感覚に陥った。
 そのまま、まるで子宮をこじ開けようとするかのごとく、激しく腰を打ち付けられる。結合部からあふれた蜜が飛び散り、半分着たままのドレスやテーブルに染みを作っていく。

「コルネリア、貴女は俺だけのものです」

 リシャールはコルネリアの首筋に歯を立て、汗でしっとり濡れた肌に赤い痕を刻み込む。まるで自分のものだと主張するかのように。

「他の誰にも、渡さない……ッ!」
「あっ……んっ……、お腹の奥、とけちゃ……」

 隘路の最奥をひときわ強く打ち付けた瞬間、リシャールの溢れるほどの熱がコルネリアの胎内で迸る。

「全部、受け入れて……っ」

 遅れてコルネリアの視界が白く染まり、身体が弓なりに反り返る。あまりの法悦に、コルネリアは声すら上げられなかった。
 荒い息を整えたあと、リシャールはコルネリアの胎内から自身をゆっくりと引き抜く。栓を失った蜜口からドロリと白濁した粘液があふれ出し、ドレスを汚していく。
 快楽の余韻で陶然としているコルネリアの唇を、リシャールは優しく奪い、そのまま舌を絡ませる。互いの唾液が混ざり合う音がした。長い接吻が終わると、コルネリアの身体は糸が切れたマリオネットのようにぐったりと弛緩する。

「愛しています、コルネリア」

 掠れた声で囁かれた言葉は、コルネリアの心の奥深くに染み込んでいく。コルネリアは陶然としたまま、小さく頷いた。

「わたくしも、愛しているわ。貴方だけを、ずっと……」

 リシャールはぐったりとしたコルネリアの身体を抱き起こし、その腕の中に閉じ込める。愛しい人の温もりの中で、コルネリアの意識はまどろみの中に沈んでいった
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