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いくら仲良しでも適度な距離は必要です。

あたしの天使の初恋のお話(真由香視点)

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「ぼく、おおきくなったらはるととけっこんできる?」


幼なじみのゆうちゃんが、目をキラキラさせてあたしにそう言ったので、あたしはおもわずもっていたおかしをおとしました。

「まゆかねぇちゃん、おとしちゃったよー?あーあ、これはもうたべられないねぇ」

ゆうちゃんは土の上におちたおかしをひろって、だいじそうに手のひらにのせて一生けんめいほろってくれました。

「このあめは、ふくろに入ってるからだいじょぶー。せんべいはつちがついちゃったから、ぼくのはんぶんあげるね」

あたしがだいすきなおせんべいを、力いっぱい半分にわろうとしたゆうちゃんは、勢いあまってぜんぜん半分じゃないかたちにわってしまいました。

「はい、はんぶんこー」

あきらかに大きいほうのせんべいをあたりまえみたいにあたしの手ににぎらせて、ゆうちゃんはにっこり天使みたいにわらいました。

「か、かわいい…」

「え?ごめん、きこえなかったぁ、もっかいいってー?」

こころの声がときどき口から出てしまうのはあたしの悪いくせだけど、幼なじみのゆうちゃんがあたしはかわいくてかわいくてしかたがないのです。

ゆうちゃんがあたしとおない年だったら恋におちていたかもだけど、そういうきもちじゃなくすごく大切なたからものみたいな子なんです。

おかあさんに「ゆうちゃんはまゆかの推しなのね」って言われたけど、あんまりよくわかりませんでした。

「ゆうちゃん、はるとが…すきなの?」

「うん、だいすき」

「ゆうちゃんが、はるとをすきなの?」

「うん?そうだよ、へん?」

「はるとがゆうちゃんをすきなんじゃなくて?」

「…はるともぼくのことすきだったらうれしいけど、どうなのかなー?」

はるとならぜったい半分こになんかしてくれないし、あたしとゆうちゃんがいっしょにいるといつもめちゃくちゃにらんでくるのに、あんなうつわの小さいおとこにゆうちゃんはもったいなくてあげられません。

「はるとはろくでもないやつだよ!ゆうちゃん、しっかりして!」

「まゆかねぇちゃん、なんではるときらいなのー?おとーとなのに、だめだよー」

首をかしげるしぐさも超かわいくて、くらくらしました。

でもあたしは知っています。
はるとがゆうちゃんのことをとってもとってもすきなことを。

「でもね…」

ゆうちゃんはすこしかなしそうにうつむきました。

「はるとは、さくらぐみのミナちゃんとひまわりぐみのアヤちゃんにもけっこんしてっていわれてたんだよ、ぼくみたんだ…」

はるとはろくでもないやつなのにモテるのももちろんあたしはわかっています。

でもあたしは、100人おんなの子がたばになってもかなわないくらい、はるとはゆうちゃんの方がすきなんだとおもいます。

でもこんな小さなうちから、ゆうちゃんをはるとのどくがにかけるのはゆるせません。

だからあたしは、ちゃんとおしえてあげることにしました。

「ゆうちゃん、日本ではね、おとこの子どうしでけっこんは、できないんだよ。ほうりつできまってるの」

きょとんとしてるゆうちゃんは、あたしのはなしをききながらどんどんかなしそうなかおになりました。

「それに、おとこの子どうしだと赤ちゃんもきてくれないんだって。ぱぱとままじゃないとだめなんだって」

「じゃあ、はるとは…おおきくなったらぼくといっしょにいてくれないの?」

「おさななじみだったらきっとずっといっしょにいられるよ?それじゃあだめなの?」

「ぼく、はるとのいちばんがよかったな…」

この日、ゆうちゃんはすごくさみしそうにうつむいて、ぽろぽろいつまでも泣いていました。

小さくてなにもしらなかったからきずつけてしまったけど、あたしはそれをずっとこうかいしていて、それからもゆうちゃんを大切にしてあげました。

ゆうちゃんは、あたしにそんなこくはくをしたことをすっかり忘れてなにもいわなくなりました。

あまりにショックできおくにふたをしたんだとおもったし、あたしが幼かったから、ゆうちゃんにトラウマをつくってしまったんだとはんせいしました。

だからあたしがさいごに言ったことも、きっと忘れちゃったんだとおもいます。






「でも大きくなってもきもちが変わらなかったら、ゆうきを出してはるとにすきだってちゃんと言うんだよ。そのときはおうえんするからね」

















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