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もりひろ

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キーパーソン

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 お風呂をもらう前の少しの時間、ソファーのところで、世界星図のホログラムを見せてもらった。前に、サイズの船の中で見たやつだ。
 しかし、きょうのは、ルキレナ先生の授業つき。
 俺たちの目指すモデュウムバリは、やっぱり一番奥にあった。
 上座という言葉が、ふと頭に浮かんだ。それに重なるようにして、ルキレナさんの熱弁が耳に飛び込んできた。
 近年、開発事業が活性化して、さまざまな星が開拓されている。でも、貴重な資源や自然のあるところはスクリーンされ、越圏制限がかかる。
 それと、宇宙空間に点在している基地は、管制などのために造られたものでもあるけど、もう一つ、大きな役割がある。
 その役割の説明に入ったところで、うつらうつらしていた俺のまぶたは、とうとう閉じた。
 ルキレナさんに悪いと思ったけど、この眠気には勝てそうもない。おいしいご飯のあとの難しい話は、ある意味、睡眠薬よりも強力なんだ。

「……考えてもみなさいよ」

 不意に、ルキレナさんの尖った声がした。
 俺は目を開け、また取り込まれそうな眠気と闘いながら、半身を起こした。
 サイズが使っていたかわいい毛布がかかっている。それを掴んだとき、さっきよりもきつくなったルキレナさんの声がした。

「おかしな話でしょ。あの少佐、そんなにマザーコンピュータシステムに精通してたかしら」
「……もしかしたら、なにかしらの集団でも作っていたのかもしれない」
「それもないわ。身分証のリレキカイジは絶対だもの。そう簡単にトトーは組めないはずよ」
「とにかく、あのマッドなハカセは死んだ。俺が、この目で見届けた。それはたしかなんだ」

 ──ハカセ。
 話している内容はわからなかったけど、その言葉を噛み砕いて呑み込んだ瞬間、俺の頭の中でなにかが弾けた。
 心臓が一音、大きく脈打つ。
 眠気を取り払い、俺はソファーから起き上がった。胸を押さえる。
 若干重みの増した頭を抱えながら、声のするほうを見た。ルキレナさんとサイズは、俺に背を向けて立っていて、まだ言葉の応酬を繰り広げていた。

「スノー」

 インヘルノが鋭い声を上げた。俺が起きたのを知らせるためか、二人にも目をやる。
 ルキレナさんが、すかさずソファーの前に跪いた。

「ごめんなさい。起こしたわね」
「あのさ、俺、そのハカセって人、知ってるかもしれない」

 サイズもこっちに来た。
 ルキレナさんもそれに気づいて、後ろを見上げた。
 俺は、知っているかもしれないことを説明しようと、改めて口を開けたけど、言葉は出てこなかった。ついさっきまで見えていたはずの映像と声が、頭から消えた。
 まただ。
 眠っているときははっきり見えていたものが、意識を戻すと、なくなってしまう。
 俺は、がっくりと項垂れた。

「ごめん……。やっぱり知らない人だ。わかんなくなった」
「アキさん」

 サイズに呼ばれて顔を上げると、頭を撫でられた。

「あったかい湯船に浸かって、そろそろベッドに入ったほうがいいですよ」
「うん……」

 本当は眠りたくなかった。もう少し、「ハカセ」のことを探ってみたかった。
 でも、一度手放したものは簡単に取り戻せないのもわかりきっていたから、毛布を剥ぐと同時に諦め、俺はソファーを離れた。



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