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もりひろ

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humanoid

モデュウムバリ

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 エスカレーターが終わると、目の前にはホールみたいに広いコンコースが現れた。
 コンコースを抜けて外へ出る。外とはいえここも海中だろうから、空はない閉塞的な空間だ。
 ロータリーには、四、五台のバスが停まっていた。
 ロータリーの中央は壁になっていて、ポスターみたいな画面がいくつもある。すべて違う映像が流れていた。
 バスに乗ってすぐ、サイズと落ち合うことになっているというホテルへ着いた。
 濃い茶色とも黒ともつかない重厚感のある色を基調としたホテルだった。広いロビーもエレベーターも円形で、案内された部屋の造りも丸みがあった。横に長い窓は緩やかにカーブしている。
 俺は部屋へ入って一番に窓から外を見た。
 遠くに点々と建物がある。遠近感でそう見えているのかもしれないけど、太さも高さもまちまちだ。
 その中でも、ここから最も近い建物は変わった造りだった。
 いや、変わっているというより、なにか特異な建物のように見える。
 俺のいる四十階と同じ高さで、まるで絵画のような彫刻が至るところにあしらわれてあった。てっぺんには、いくつもの教会を盛ってくっつけたような建物が乗っかってある。
 その建物から少し離れた四方には、大きな彫刻像が一体ずつ、海から突き出るようにしてある。
 女神っぽいきれいな女の人だったり、顔は人間、それもかなりのイケメンなのに足が明らかに動物のそれだったり、ものすごい装飾の服を着たじいさん、どう見ても悪魔な出で立ちの獣もいる。
 そして、教会群の真ん中にも大きな像がある。角が四本生えたクールビューティーなお兄さんが上半身裸でいて、両手にゴツい武器を持っている。

「四神が見えるところだったのか」
「しじん?」

 ジェノバユノスが俺の横に立ち、首を動かしてあの建物を眺める。

「大地の四方を守る神だ」
「けど、上のを入れたら五つじゃん」
「あれも四神だ。宇宙、太陽、大気、海を司る大神だ。あの建物は、それらを祀っているいわゆる寺院みたいなところで、ウェーバラの観光名所の一つでもある」
「もしかしてこの部屋……めっちゃいいとこ?」
「そりゃあ、ほら。取ったのがあのサイズだ」

 寝室がべつにある時点で、それなりのところかなとは思っていた。
 ジェノバユノスはひとしきり辺りに目をやったあと、リビングの真ん中にでんとある三人がけのソファーに腰を下ろした。
 そのとなりに俺も座る。
 インヘルノはもうだいぶ前から、俺たちの向かいのソファーで寛いでいた。
 腰を落ち着けた途端、眠気に襲われた。肘かけにゆっくりと頭を倒す。
 そうだ。俺はゆうべ、ほとんど寝ていないんだ。

「アキ、眠いのか。寝るなら寝室のほうが──」

 覆い被さるようにして、ジェノバユノスが俺の顔を覗き込んだ。

「うん……落ち着いたら急に……ごめん」

 ごめん、のときには、俺のまぶたはだいぶ重くなっていた。
 ジェノバユノスがなにか言ったようだったけど聞き取れなかった。



 はっと目を開け、俺はすぐに体を起こした。
 頭がはっきりしない中、きょろきょろと見回す。部屋は異様に静かだった。
 どのぐらい眠っていたんだろう。
 それを考えながら髪に手をやって、体にかかっていた薄い布団を剥いだ。絨毯へ降り立つ。
 インヘルノはすぐに見つかった。窓の下の隅っこで香箱座りをしていて、俺が起きたのに気づくと前足を伸ばし、そばまで来た。
 しかし、ジェノバユノスはどこにもいない。呼んでも返事がない。
 俺は首をひねるしかなかった。
 不安にも襲われる。
 どうしてみようもなくて、ちょっとうろうろしたあと、窓に引かれてあるカーテンを割った。
 いつの間にか夜になっていた。
 あの寺院は、薄めの青でライトアップされてある。その向こうにある建物も、いろんな色の光を発していた。

「アキ、起きたの?」

 ビショップの声がした。
 俺はぱっと振り返って声のしたほうへ目をやった。
 でも、一人だと広すぎる部屋には、インヘルノの姿しかない。

「ビショップ? どこにいんの」
「そこにいるわけじゃないのよ」
「え? なに、どういうことだよ」

 俺は喋りながら声の出どころを探す。すると、ソファーのあいだのテーブルに、小さくて丸い機械が置いてあるのを見つけた。声は、そこから聞こえていた。

「なにこれ。……ていうかビショップ。ジェノバユノスがいない」
「そうなの。これを残していったのはそのジェノバユノスなの。これはメッセンジャーという機械なのよ」
「メッセンジャー? 残したのはジェノバユノスなのに話すのはビショップ?」
「あたしのメッセンジャーなの。なにかあったときのために、殿下がジェノバユノスへ差し上げたものよ」
「サイズが……。そうだ、サイズは? 着いた?」
「もうすぐ来られるわ。それまでおとなしく待ってて」
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