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もりひろ

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ガランドウ

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 つまりは、星の中での犯罪は、そこの警察ないし軍みたいなのが取り締まるけど、外でのごたごたは治安局の出番という感じか。
 ほかにも、たとえば船の航行を取り仕切るような機関などもありそう。なにしろ、宇宙空間に道路はないんだ。そこをさまざまな船が行き交うのだから、その仕組みは、より複雑になっていると思う。

「……」

 それにしても不思議だ。
 こういうことは素直に理解できるのに、ロボットやコンピュータに関しては、頭にすんなり入ってこない。
 もしかしたら俺は、機械関係に疎かったのかもしれない。
 あと、家族や、住んでいた星でどういう生活をしていて、どんな友達がいたとか。そういう思い出みたいなものだけが、ごっそりと脳から抜け落ちているのも不思議だった。
 ジェノバユノスの話は続いている。俺は頭を振って、気を取り直した。

「その治安局の本部は、サイズがこれから行くダーグーニーにある。ダーグーニーは、この世界で一番大きい惑星であり、政治・経済の中心でもある。その一方で、モデュウムバリは手つかずの自然と資源が豊富にある、閉じられた惑星だ」
「閉じられてんの?」
「ああ、いろんな意味でな。モデュウムバリは、むかし、世界がまだ統一前提じゃなかったときの、とある星の皇族が住んでいた。その皇族は、星の中での扮装で亡命せざるを得なくなり、自衛のために、亡命先であるモデュウムバリにシールドを張った。それから、その皇族とモデュウムバリに元々いた種族が一つとなり、子孫を残していったと言われている。そのときのシールドがいまも生かされていて、安易に越圏ができないいわば鎖国状態な意味もあるが、資源が豊富だから、他の惑星の手を借りなくてもいい。だったら不要な迎え入れは避けようということもある」
「なら、俺はやっぱり、モデュウムバリには行かないほうがいいんじゃ……」
「サイズが来いと言ったんだから、お前が気にすることないだろ」

 ……でも、本当は迷っている。
 帰る家がないから仕方ないとはいえ、皇子さまのところにお世話になるんだ。
 とんでもなくきらびやかな宮殿だろう。俺の想像力じゃ追いつかないくらいの豪華さなのではないかと思う。
 こういうふうにご飯のおかわりなんてもってのほか。その辺でうたた寝するのもご法度だ。
 なんだか息が詰まりそう。……というか、俺が足を踏み入れてもいい場所なのだろうかと心配にもなる。
 ただ、サイズが言っていた、手つかずの自然には興味がある。できれば、この目で見てみたい。

「それにしても、サイズって、あんまり皇子さまっぽくないな」
「皇子であることに、あいつ自身があまり拘ってないからな。一人の人間として一目置かれるのは嫌いじゃないらしいが、皇子だからというスタンスでちやほやされるのは胸くそ悪いらしい」
「……なんか、いろいろ大変そう」

 俺は苦笑して、首をすくめてみせた。
 食事を終え、俺とジェノバユノスは席を立った。ビショップがいる格納ブロックへと向かう。

「じゃあ、サイズは治安局の人ってこと?」
「いや。ヤデューラという、新しい星の探索や研究、スクリーンの権限を持つ独立団体に所属していて、国政とも関わりのない仕事をしている。ただ、それの関係で、星と星を行き来することが多いから、自然と外交の窓口みたいになってはいる」
「忙しそうだよな。それなのに俺のことまで……」
「だから、俺に頼んだ」

 ジェノバユノスは振り返り、俺を指さした。

「え?」
「家族を失ったあと行方知れずになっていたお前の捜索。俺は、ボランティアでやってたわけじゃない。フリーランスの依頼として、サイズがお前の捜索を持ってきた。報酬はたっぷりもらっているから、お前に礼を言われる筋合いもないってわけだ。そのぶん、あいつにたくさん感謝しろ」

 俺はすかさず足を早め、ジェノバユノスの前に出た。

「サイズはもちろんだけど、ジェノバユノスもいなかったら俺はこうしてなかったと思うから、やっぱりありがとうだよ」
「……」
「二人のあいだのことはわからない。けど俺は、ジェノバユノスに感謝してもしきれない」

 しばし俺を見つめたあと、ジェノバユノスは呆れるようなため息をついて、ちょっとだけ笑みをこぼした。

「なら、そのありがとうは素直に受け取っておくか」

 いささか荒い手つきで、俺の頭を掻き乱す。そして、また歩き出した。
 ふと、さっき船の中でビショップが言っていたことを思い出した。
 慌ててジェノバユノスへ追いつく。

「じゃあ、こうして俺をちゃんと見つけられたわけだから、ジェノバユノスがサイズに頼まれたその仕事は終わり……ってこと?」
「ああ」
「もしかして……」
「ここでお別れだ」

 どことなく寂しい気持ちはあるけれど、仕事だったなら仕方ない。
 俺は、ジェノバユノスの後ろへ下がって歩きながら、目の前の大きな背中を見上げた。



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