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第二章 起源
第二章 起源(買い物)
しおりを挟む「夢姫ー、こっちこっち」
待ち合わせ場所に5分遅れて着くと姫依が駅の入口で手招きしていた。
「ごめん遅れて、あと昨日寝落ちした」
「気にしてないよ、行こっ!」
ふふふ、と笑って姫依は歩き出す。
少し遅れて彼女の後を追い、横にぺったりついて歩いた。
姫依の私服はいつもボーイッシュな感じ。
背丈は夢姫とそんなに変わらないのに
こう、並んで歩くと姫依のほうが大きく見える。
「服見てからアイス食べに行く?」
「そうだね、ここから行くなら服が先か」
可愛い服あるかなー、なんてはしゃいでいる姫依だけど
夢姫には「これ似合いそう」とかかわいい系を選んでくれるのに
結局のところ自分はカッコイイ系の服を買っている。
わかってやっているのか、……天然なのか?
「土曜日って混んでるよねー」
目的地について、早速服選びをする。
平日学校帰りに寄ることもあるのだが、土日祝日はその時よりはるかに人が多い。
「そういえば夢姫、またあの変な夢って見たの?」
姫依に言われてはっとする。
そうだ、ノート
「見た、と思うんだけど
昨日見たいには覚えてないんだ。で、ノート買って記録しようかと思ってたの」
「記録?その夢を?」
ずっと見続けそうだから、と言うと姫依は「ずっと同じ夢は嫌だよね」と静かに返してきた。
「私も昔、ずっと同じ夢見てたことあるからその気持ちなんとなくわかる」
「え……姫依もそんなことあったんだ」
「内容は覚えてないけどね!「嫌だった」ってのははっきり覚えてる
……あ!この服可愛い!」
ほんの一瞬、姫依の寂しそうな顔が誰かに似ていた。
誰かは、わからないけど
多分知っている人。
「夢姫聞いてる?」
「う?」
「う?じゃなくて、ほらこれ試着!」
「え……えええ」
服を選び終え、購入した時時計は12時を指していた。
「うーんちょっとお腹空いたね」
「店の外ににホットドッグ売ってたよね」
「本当?私見なかった」
お昼はそれでいいか、アイスも食べるし
ということでお店の外に出る前に夢姫は文具売り場に寄ってノートを購入した。
学校で使うノートくらいの大きさじゃなくて
それよりひと回り小さいファイルタイプの、ルーズリーフをはさむやつ。
「もっとかわいげのあるノート買えばいいじゃん?」
「いいの、これで充分!」
単なる夢日記なんだから。
そう、あれは単なる夢……。
……私、何をそんなに気にしているのだろう?
購入したファイルを見つめて考えてみる。
たった2日、続いた同じ夢を見ただけじゃないか
もしかしたら、今日から見ることは無いのかもしれない?
夢のなかの私が戻ってくるまで
どうしてそう思った……?
「夢姫?」
「あ、ごめんぼーっとしてた」
「私でよければ何でも聞くからね、手助け……は多分出来ないよね」
夢姫は姫依の言葉にうん!と頷き、
そのつもりです、と言って顔を見合わせて笑った。
大丈夫、きっと大丈夫。
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