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第一章 夢
第一章 『夢姫』
しおりを挟む手をかざす。
夢喰いは動きをやめて静かになる。
そして白い霧に包まれて、次に目の前に現れたのは1人の男性。
「……おわったよ」
振り返ってそう言うと、岩陰からキーリが飛んできた。
「夢姫おつかれ!」
ここは夢の世界。
ざっと分けて、普通の人間、能力をもつ人間、夢喰いの三種類がある。
夢姫とキーリは2番目の能力をもつ人間。
「あー、もう一人くらい仲間がいたら楽なのにな」
夢姫の能力は夢喰いを人にかえす。
『浄化』というらしい。
「そんなこと言って!私見たいのが増えても嫌でしょ?」
キーリの能力は夢喰いの気配を感じ取るというもの。
確かにキーリみたいな能力者が仲間になってくれても結局は戦うのは夢姫ひとりになる。
ふう、とため息をつきながら夢姫は歩き出した。
夢の世界。
ここに四季は存在しない
雨も雪も降らない。
夢……、みんなが思い描いてるような綺麗なものじゃない。
灰色に覆われた世界。戦いの毎日。
「それにしても、全然能力者と出会わないの不思議だよね」
毎日夢喰い退治をしながら歩いているのに、普通の人間と夢喰いにしか遭遇しない。
能力者なんて他にいるのだろうか?
夢姫は、気がついた時にはキーリと共に居ていつの間にか夢喰い退治をして回る毎日をもう何年も続けてる。
少し歩くと、ひとつ洞窟を見つけた。
……誰かがいる。
「こんにちは」
夢姫は躊躇せずその人影に近づく。
相手は驚いた様子で夢姫とキーリを見た。
「こ、……こんにちは?」
と、不思議そうに返してくれたその人は
少し明るめの茶髪を左側に一つでまとめて三つ編みをしている。
服装からして普通の人間ではなさそうだ。
言ってるそばから能力者と出会えた、という喜びから夢姫は少し笑顔になる。
「私は夢姫、こっちはキーリ。君の名前は?」
「……ユ、メア」
その人は下を向いてそう呟いた。
「ユメア?それが君の名前?」
「え?……う、うん」
「そう、ユメア能力者だよね?」
どんな能力を持ってるの?と聞くとユメアは腰に下げていた小袋から3つほど夢喰いの石を取り出した。
「これ。……夢喰いを封印するのが俺の能力。」
「封印……ってことは、浄化はできないのね」
ひょい、とユメアからその石を取り上げて地面に置く。
そして手をかざす夢姫
「なにを……?」
白い霧に包まれて、その霧が晴れると、先ほど石の置いた場所には3人の男女が横たわっていた。
それを見たユメアは開いた口が塞がらない。
「お前……浄化できるのか」
「お前じゃなくて、夢姫」
「ゆ、夢姫」
「ユメア、もしあなたがよければ一緒に夢喰い退治しない?」
そう言って夢姫はよろしくどう?と手を伸ばす。
キーリも、夢姫の肩の上からよろしく!と手を伸ばした。
ドキドキしながらユメアを見ていると、ふっと笑って手を握り返してくれた。
「こんな俺でよければ、夢姫の力になるよ。」
改めてよろしく、夢姫、キーリ。とユメアは照れくさそうに言う。
夢姫も よろしく、と返し
それから目を閉じた。
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