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第一章 夢
第一章 夢(二度目の遭遇)
しおりを挟む「突き飛ばすなんてひどいですぅ」
その言葉に、もしかして踵を返そうとしたシーラとぶつかったのかとシーラを見た。
だけど、シーラは困ったように首を横に振る。
みんなの隙間から、なんとか声の主を見ると、金髪を両サイドでツインテールにした橙色の瞳の少女が廊下に座り込んでいた。
あー。
多分、多分だけど、ヒロインだ・・・
しかも、転生者っぽい。
隙間から覗く私が見えたのか、その橙色の瞳をウルウルとさせて(でも涙は出てないけど)ヒロインは顔を両手で覆った。
「私が男爵家の娘だからって・・・どうしてこんな酷いことをするんですかぁ」
「・・・」
私やシーラだけでなく、護衛の人たちもどうしたものかと戸惑った。
シーラ自身もぶつかっていないというし、護衛の人たちも困り顔ということは、ぶつかっていないのだろう。
ということは、彼女は一人で転んで、こちらに文句を言って来た、ということである。
当たり屋か。
それにヒロインは理解していないみたいだけど、本当にぶつかっていたとしても、相手が王族である時点で、ぶつかった自分が悪いと言われるんだけど。
周囲には、生徒や訪れている父兄の姿もある。
ここは手早く撤収するべきだろう。
ハンカチは残念だけど、エルム兄様が戻ってきたら一応忘れ物がなかったか聞いてみよう。
「お父様、お母様。帰りましょう?シーラ、ハンカチは兄様にお願いするからいいわ」
「ああ、そうだな」
「護衛の方。彼女を起こして差し上げて」
お母様の指示で、護衛の方がヒロインの手を取って立ち上がらせる。
「どこのご令嬢かは知りませんけど、廊下は走るものでなくてよ?ご自分もそれから相手も怪我をしてしまうわ」
「わっ、私は突き飛ば・・・」
「王妃殿下の許可なく口を開くな!大体、我々は君が我々の後ろから駆けてきて、手前で転んだのを見ている。王族に嘘偽りを述べることが罪だと理解しているか?」
「グズッ。酷いですぅ。権力を笠に着て、身分の低い相手を断罪しようとするなんて。ぐすん・・・」
護衛の方は睨みつけてヒロインを叱責するけど、逆にヒロインは泣き真似をして周囲の同情を誘おうとしている。
何がしたいんだろうか。
私を悪役に仕立てたいのかもしれないけど、発言しているのはお母様だ。
それに、攻略対象がいない場所で、誰に同情してもらうつもりなんだろう。
この学園は貴族だけが通う学園、それはつまり成人した後に貴族として生きていくことを学ぶための場所、ということだ。
学園では身分なんて関係ない、なんてところも他国にはあるらしいが、ここは違う。
それを本当にヒロインは理解していないの?
その言葉に、もしかして踵を返そうとしたシーラとぶつかったのかとシーラを見た。
だけど、シーラは困ったように首を横に振る。
みんなの隙間から、なんとか声の主を見ると、金髪を両サイドでツインテールにした橙色の瞳の少女が廊下に座り込んでいた。
あー。
多分、多分だけど、ヒロインだ・・・
しかも、転生者っぽい。
隙間から覗く私が見えたのか、その橙色の瞳をウルウルとさせて(でも涙は出てないけど)ヒロインは顔を両手で覆った。
「私が男爵家の娘だからって・・・どうしてこんな酷いことをするんですかぁ」
「・・・」
私やシーラだけでなく、護衛の人たちもどうしたものかと戸惑った。
シーラ自身もぶつかっていないというし、護衛の人たちも困り顔ということは、ぶつかっていないのだろう。
ということは、彼女は一人で転んで、こちらに文句を言って来た、ということである。
当たり屋か。
それにヒロインは理解していないみたいだけど、本当にぶつかっていたとしても、相手が王族である時点で、ぶつかった自分が悪いと言われるんだけど。
周囲には、生徒や訪れている父兄の姿もある。
ここは手早く撤収するべきだろう。
ハンカチは残念だけど、エルム兄様が戻ってきたら一応忘れ物がなかったか聞いてみよう。
「お父様、お母様。帰りましょう?シーラ、ハンカチは兄様にお願いするからいいわ」
「ああ、そうだな」
「護衛の方。彼女を起こして差し上げて」
お母様の指示で、護衛の方がヒロインの手を取って立ち上がらせる。
「どこのご令嬢かは知りませんけど、廊下は走るものでなくてよ?ご自分もそれから相手も怪我をしてしまうわ」
「わっ、私は突き飛ば・・・」
「王妃殿下の許可なく口を開くな!大体、我々は君が我々の後ろから駆けてきて、手前で転んだのを見ている。王族に嘘偽りを述べることが罪だと理解しているか?」
「グズッ。酷いですぅ。権力を笠に着て、身分の低い相手を断罪しようとするなんて。ぐすん・・・」
護衛の方は睨みつけてヒロインを叱責するけど、逆にヒロインは泣き真似をして周囲の同情を誘おうとしている。
何がしたいんだろうか。
私を悪役に仕立てたいのかもしれないけど、発言しているのはお母様だ。
それに、攻略対象がいない場所で、誰に同情してもらうつもりなんだろう。
この学園は貴族だけが通う学園、それはつまり成人した後に貴族として生きていくことを学ぶための場所、ということだ。
学園では身分なんて関係ない、なんてところも他国にはあるらしいが、ここは違う。
それを本当にヒロインは理解していないの?
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