夢のゆめ

飛朔 凛

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第一章 夢

第一章 夢(二度目の夢)

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「うん、そうだね。夢喰いバクのことは最初に教えた方がいいと思ってた。」

ライカはその場に座り直して夢姫ゆめを見る。

「そもそも、俺らは夢喰いバク退治をしてるんだ」
夢喰いバク……退治?」
「昨日も少し見たと思うけど、ここはちょっと『普通』から離れてる。まあ、夢の世界だからってのもあるけれど」

それぞれ持ち合わせてる『能力』というものがある、とライカは続ける。
夢の世界ここは現実世界と同じで『普通の人』も存在する。能力を持たない人だ。
そんな人たちが突然夢喰いバクになるという。
はっきりとした理由はわかっていない、
ただ、その夢喰いバクはまた人間に戻すことができるらしい。

「……そして、夢喰いバクを浄化できるのがユメア。人の姿に戻すことができるのが、夢姫ゆめ、お前なんだ。」

浄化……
マスコットサイズの石にする、それが浄化。
それをまた、人の形に戻すことができるのが夢姫ゆめの持ち合わせている能力らしい。

「え、じゃあ昨日の夢喰いバクは……」
「ここにある。」

そう言ってユメアは腰に下げていた小袋から夢喰いバクの石を取り出した。

「それを、どうやったら人に戻せるの?」

ライカとユメアは顔を見合わせた。

「あのね、夢姫ゆめの能力は夢姫ゆめしかわからないの」

彼らの間に割って座っていたアリスが言った。

「……そうだな、使い方とかは本人にしかわからない。」

期限とかはないから、思い出したら夢喰いバクになってしまった人を戻してあげればいい
ライカはそんなことを言ったけど

私は夢の世界ここの私とは別人。
私は現実世界の夢姫ゆめだ。
思い出すもなにも、この世界の夢姫ゆめが戻ってこないと始まらないだろう。


「うーーーん、おはよー」

よく寝たぁ、とキーリが起きた。
ドールは……まだ寝てる。

「おー寝ぼすけやっと起きたか」
「さっき1回起きたもん」

むぅ、と頬を膨らましながらキーリは夢姫ゆめの肩に座った。

「で、何の話してたの?」
夢喰いバクと、みんなの持ってる能力の話だよ。」
「なるほど、どこまで話したの?」
「俺らが夢喰いバク退治してるってことと
俺と夢姫ゆめの能力……までだよな」

人間から夢喰いバクになってしまった人たちを浄化して戻す、通称夢喰いバク退治。
その浄化をできるのがユメア、浄化されて、小さな石になった夢喰いバクを元の人間に戻す役目をするのが夢姫ゆめ
……簡単に言うと今のところこんな感じである

「アリスはね、歌で夢喰いバクに幻覚を見せるの」

夢姫ゆめは昨日のことを思い出す。
アリスが歌った時、夢喰いバクは動きを止めて大きな目だけをせわしなく動かしていた。
夢喰いバクにしか見えない何かを目で追っていたのだろう。

「俺の能力は、夢喰いバクの声が聞こえること」
「え……夢喰いバクって喋るの?」
「うーん、喋ると言ってもテレパシーに近いものかな。」

夢喰いバクを浄化まで導くには急所を突かないとだめらしい。
ライカいわ
夢喰いバクに攻撃をすると、「そこはやだ」とか「痛い」とか言うからそれで急所を特定できるらしい。
想像してみるとなんだかちょっと可愛いし、可哀想。

「私はわからないんだよねー、夢喰いバクの気配を感じるってことくらいしかできないし
それ能力って言うのかなーって」
「そうなんだ。……えっと、ドールの能力は?」
「ドールはね、夢喰いバクべるの」

アリスの言葉に夢姫ゆめは数回瞬きをした。

「……べる?」
「なんて説明したらいいかな、喋れないのと関係あるんだけどー……」
「……あ、ドールおはよ」

ライカが言いかけた時、ユメアがドールの方を振り返った。
眠たそうな顔でゆっくり頷くドール。
昨日はマフラーで見えなかったが、口の右端は赤い糸でバツに縫われていた。

「簡単にいえば、ドールの口はブラックホールになってる。」

その口を開いたら、目の前にあるものを一瞬にして消し去る。とユメアは続けた。
口が縫われているのはその口を容易たやすく開かないようにだろう。
ドールはのそのそと枕替わりにしていたマフラーを首に巻いた。

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