夢のゆめ

飛朔 凛

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第一章 夢

第一章 夢(出来事)

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  ピピッ……ピピッ……。

6時を告げるアラームが鳴る。
布団の中から手を伸ばし、その音を止めて体を起こした。
カーテンの隙間から朝日が差し込み、外ではすずめが元気に飛んでいる。

「……夢」

ボソリと呟いた夢姫ゆめ
辺りを見渡してみても、そこは自分の部屋。
あの不思議な場所ではない

今は中学3年の春。
受験のことはまだちょっと考えたくない時期
机の上に置いてあった眼鏡をかけて携帯を見る。
今日は、……金曜日。

学生服に着替えてリビングに顔を出すと母は台所、父はいち早く食卓テーブルについて新聞を広げていた。
ごく、普通の一般家庭である。

「おはよー」
「おはよ。夢姫ゆめ、今日お父さんもお母さんも遅くなるから夕飯置いておくね。それと学校帰りにでも夢依めいに着替え持ってってくれる?」
「わかった」

夢姫ゆめには両親の他に双子の姉、夢依めいがいる。

彼女らがまだ小学校低学年の時、
小学生と幼稚園児を対象とした日帰りバスツアーに参加した。
勿論保護者も参加できるものだ。ただ、この日は運が悪く両親はツアーに参加できなかった。
子供達だけの参加も配慮して、ガイドさんは何人かついていてくれた。
楽しい1日を過ごすはずだった、
そのバスは事故に巻き込まれることとなる。

夢姫ゆめには、その当時の記憶がない。
部分的なものではあるが、所謂いわゆる『記憶喪失』というやつだ。

その時の事故の後遺症で夢姫ゆめの姉は入退院を繰り返し、今はまた病院にいる。

両親は共働きをしていて、夜に家族全員が揃う日なんて1年の間に片手で数えられるくらいしかない。
でも、そんな暮らしも随分前からしている。
もう慣れっこだ。

顔を洗って朝ごはんを食べる。
テレビを見れば朝のニュースをやっていた。
ここ最近の出来事、天気予報、占い……。

ニュースの人、新聞を作る人。1日の時間は24時間。
その間にこの人たちはどうやってこんなに多くの、しかも世界中の話題を持ってくるのだろう




夢姫ゆめ、バス乗り遅れるわよ」
「ん!ほんとだ、いってきまーす」

ニュースをぼーっと見ていたらいつの間にか学校に行く時間になっていた。
慌てて鞄と姉の着替えが入った袋を持って家を出た。


家を出て約5分、バス停に着くと夢姫ゆめと同じ制服を着た学生が数人立っている。
その中の1人が手を上げて夢姫ゆめに手を振った。

「おはよ姫依きい

彼女……織橋 姫依おりはし きい夢姫ゆめ夢依めいの幼馴染み。
セミロングの、ふわふわとカールさせた髪
顔立ちもばっちり、モテるの間違いないくらい綺麗だし可愛い。
これで彼氏が出来たことがないというのだから驚きだ

「おはよー、今日夢依めいのお見舞い行くんだ?」

右手に持っていた紙袋を見て姫依きいは訪ねてきた。


「私も行っていい?」
「うん、いいよ」
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