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男と女のラブゲーム その2
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「ただいまぁ」
「おう、お帰り。」
今日は早く上がれたので、近所のスーパーの値引き品を買うことができた。刺身をつまみに一杯やれる。ありがたいことだ。
「で、その刺身をいただけるってことでいいのかな?」
「ほほう。やはり狙ってくるか。」
「どうせ話を聞いてほしいんだろ?」
「聞いてほしいって程じゃぁ」
「いらないと」
「どうぞ。お召し上がりください。」
「うむ。苦しゅうない。」
「ぐぬぬ。」
「さ、言ってみたまえ。」
「まあ、大した話じゃないんだけどさ。服部君のシフトをどうしようかと思ってね。」
「ハットリ君?」
「往年のアニメみたいに言うなよ。」
「ほう。君にはセリフが見えると?」
「そんなことはいいんだよ。で、服部君のシフトをいま試行錯誤中なんだよ。」
「ところで、そのハットリくんって誰だ?新入りか?」
「あれだよ。大友女史ファンの大学生。ストーカー青年だ。」
「ああ、あの通い詰めてた客か。で、お前がバイトで雇うという、大チョンボをしたやつだな。」
「チョンボじゃねぇし。むしろ英断だっつーの。」
「英断ねぇ。」
「とりあえず、最初は大友女史の上り時間から、高校生バイトが入ってくるまでの谷間時間を頑張ってもらってたんだけど……」
「ちょっとまてぇい!!」
「ん?」
「なんで、大友女史の上り時間後なんだ。入れ替わりか。」
「そ、入れ替わり。何か問題ある?」
「いや、問題も何も、ハットリくんは大友女史に会うために働いてるんじゃなかったのか?」
「そうだろうね。たぶん。」
「で、いまハットリくんの勤務は?」
「彼が出勤する。着替える。勤務すると、大友女史が抜ける。ってな感じ」
「不憫すぎる。」
「そう?ちょうどよくない?」
「お前、鬼畜だな。まったく触れ合わせないわけじゃなく、いつも顔は見るけどほとんど話せないって、どんな拷問だよ。」
「思いってのは、そうやって募ってゆくものじゃないのかなぁ。プラトニックラブってやつ。美しいよね。」
「いやいや、一層拗らせてストーカーになるだろうが!」
「え~。大丈夫じゃない?」
「せめて、少し時間的な重なり作って会話させてやれよ。それか、教育係を大友女史にさせるとかさ」
「いやだよ。もったいないじゃん。大友女史はエースだよ。エースで四番だよ。背番号のないエースなんだよ。」
「そんなスローカーブ放り投げそうなエースは知らんよ。」
「いや、猫のくせにおかしくない?何で知ってんの?まあいいや。でもね。大友女史はうちのエースなの。だから、少人数でも安定して回せる数少ない逸材なのよ。そんな人を新人の教育に充てちゃったら、その時間回せないじゃない?」
「お前がいるだろ!その時間。」
「ほら、僕その時間店長会議行くから。」
「また出た、イマジナリー店長会議。茶店タイムじゃねぇか」
「大事なんだってば。でね。大友女史を新人育成に使うなんて贅沢なことできないからさ、彼の教育係は、高校生か3軍のパートのおばちゃんなの。」
「ひでぇ」
「で、高校生の数が増えてきたら、彼用なしだからさ。上がってもらうのさ。」
「まんまブラック企業の社長だな。」
「なんだよ。ひでえ言いようだな。」
「どっかから文句は上がらないのか?本橋女史とかさ。」
「よくわかるね。本橋さんからも言われたし、何より本人からクレーム上がったよ。」
「ハットリくんからか?」
「そ、厚かましいよね。新人風情が店長にたてつこうなんざ」
「急に大きく出たな。」
「まあ、一応真摯に聴いたんだけどさ。」
「で、ハットリくんはなんて?」
「「どうせ大友さんと組めないなら、せめて合わない時間にしてくれ」ってさ」
「それ、末期じゃねぇか。「どうせかなわぬ恋なら、いっそ殺してくれ」くらいの内容だと思うのは俺だけか?」
「本橋女史も同じ意見だったね。でも俺は好意的に受け止めたよ。彼も前向きになったなと。踏ん切りがついたなと」
「いや、そうじゃあるまい。」
「まあ、まあ、そういうなよ。彼の成長を喜ぼうよ。と言う訳で、夜シフトに移しました。」
「移したのか。鬼畜全開じゃねぇか」
「そんなことないさ。最初は夢遊病患者みたいにふらふらしてたんだけど」
「ほら見ろ。末期じゃねぇか。」
「大丈夫。復活したから。」
「復活したってことはやっぱり堪えてたんじゃねぇか!」
「まあ、そう言いなさんな。でね。夜メンバーとずいぶん打ち解けて、最近は楽しくやってたのよ。でもさ。」
「でね。じゃねぇよ。まあいい。で、何か問題でもあったのか?」
「夜は夜で、メンバーが厚くなるのはありがたい事なんだけど、やっぱり、大友女史と高校生の谷間の時間に戻ってきてほしいのさ。」
「まるっきりお前の都合じゃねぇか。でも、本人の意見はどうなんだ?」
「夜メンバーの、とくに村上と仲がいいんだよね。」
「ああ、ダブルワーカーか。大人だし、そういう相手はうまいのかもな。」
「たぶんね。それに好みも似てるしな。」
「と言うと?」
「村上本人はばれてないつもりだろうけど、大友女史にぞっこんだ。」
「接点あるのか?」
「何回かヘルプで来てもらったことがあるんだよ。本業が休みの日の日中に。奴は結構頼りになるからさ。ピークタイムでもキッチンワンオペ楽勝だ。やっぱり社会人は仕事が速い。」
「高校生や大学生とは違うか。」
「ああ、物が違うね。で、そん時に結構会うんだよ。大友女史と。フロアとキッチン両方ワンオペみたいな感じで。」
「あれ、お前は?」
「店長会議」
「ふざけんな。このイマジナリーが。」
「変なあだ名付けんなよ。で、一緒にやってるとき楽しそうだよ。正直両方独身だしさ。良い感じだと思うんだけどね。」
「まずはお前が動いた方がいいと思うけどな。で、村上は大友女史命ってか?」
「そ、だから同じ人を愛する者同士、引き合うものがあるのかもな。」
「奪い合わねぇのか?」
「お互いにわかってんじゃない?高嶺の花だって。」
「まあ、そんなもんか。」
「でも、夜で固定は困るんだよね。一応、ポンコツだけど大泉がいるからさ。いなきゃ、ハットリくんプラスで万々歳ってとこなんだけど。」
「なるほどね。まあ、お前が屑だってことはわかったよ。」
「なんでそうなる?」
「お前の都合しかないもんな。」
「そりゃそうでしょ。僕はいつだってマネジメント最優先だからね。」
「そうですかい。で、今後はどうしたいと思ってんだ?」
「そうね。一応、日中の谷間時間にも戻ってきてもらおうかと思ってね。」
「どうやって。」
「一応、秘策的なものはあるんだよ。」
「秘策?」
「大友女史ほどじゃないけど、変な色気があるパート主婦がいるんだよ。」
「変な色気?」
「そう、森本女史28歳。大友女史よりちょい年下だが、人妻で変な色気がある。」
「変な……を強調するな。」
「なんとも形容しづらいんだよ。「変な」としか。なんていうんだろうな。まあ、美人なんだけどね。ちょっとケバ目の。夫婦ともどもパチンカスらしい。俺はよく知らんが、ほかのパートがそう言ってた、で、金がないのか、シフトすげー入ってんの。大友女史に次ぐ位。だから、彼女を教育係にしようかなぁと。」
「森本女史は教育係にしていいのか?」
「まあ、2軍だしね。大体二人から三人で組ませてるから、余裕あるシフトなんだよ。さて、彼女の色香がどう出るか。楽しみだねぇ。」
「ゲスイな。クズでゲスイって。お前ある意味凄いな。」
「そんなに褒められてもねぇ。」
「さいですか。じゃあ、ゆっくり休みな。」
「優しいこって。」
黒猫は一鳴きして窓から出ていった。
「おう、お帰り。」
今日は早く上がれたので、近所のスーパーの値引き品を買うことができた。刺身をつまみに一杯やれる。ありがたいことだ。
「で、その刺身をいただけるってことでいいのかな?」
「ほほう。やはり狙ってくるか。」
「どうせ話を聞いてほしいんだろ?」
「聞いてほしいって程じゃぁ」
「いらないと」
「どうぞ。お召し上がりください。」
「うむ。苦しゅうない。」
「ぐぬぬ。」
「さ、言ってみたまえ。」
「まあ、大した話じゃないんだけどさ。服部君のシフトをどうしようかと思ってね。」
「ハットリ君?」
「往年のアニメみたいに言うなよ。」
「ほう。君にはセリフが見えると?」
「そんなことはいいんだよ。で、服部君のシフトをいま試行錯誤中なんだよ。」
「ところで、そのハットリくんって誰だ?新入りか?」
「あれだよ。大友女史ファンの大学生。ストーカー青年だ。」
「ああ、あの通い詰めてた客か。で、お前がバイトで雇うという、大チョンボをしたやつだな。」
「チョンボじゃねぇし。むしろ英断だっつーの。」
「英断ねぇ。」
「とりあえず、最初は大友女史の上り時間から、高校生バイトが入ってくるまでの谷間時間を頑張ってもらってたんだけど……」
「ちょっとまてぇい!!」
「ん?」
「なんで、大友女史の上り時間後なんだ。入れ替わりか。」
「そ、入れ替わり。何か問題ある?」
「いや、問題も何も、ハットリくんは大友女史に会うために働いてるんじゃなかったのか?」
「そうだろうね。たぶん。」
「で、いまハットリくんの勤務は?」
「彼が出勤する。着替える。勤務すると、大友女史が抜ける。ってな感じ」
「不憫すぎる。」
「そう?ちょうどよくない?」
「お前、鬼畜だな。まったく触れ合わせないわけじゃなく、いつも顔は見るけどほとんど話せないって、どんな拷問だよ。」
「思いってのは、そうやって募ってゆくものじゃないのかなぁ。プラトニックラブってやつ。美しいよね。」
「いやいや、一層拗らせてストーカーになるだろうが!」
「え~。大丈夫じゃない?」
「せめて、少し時間的な重なり作って会話させてやれよ。それか、教育係を大友女史にさせるとかさ」
「いやだよ。もったいないじゃん。大友女史はエースだよ。エースで四番だよ。背番号のないエースなんだよ。」
「そんなスローカーブ放り投げそうなエースは知らんよ。」
「いや、猫のくせにおかしくない?何で知ってんの?まあいいや。でもね。大友女史はうちのエースなの。だから、少人数でも安定して回せる数少ない逸材なのよ。そんな人を新人の教育に充てちゃったら、その時間回せないじゃない?」
「お前がいるだろ!その時間。」
「ほら、僕その時間店長会議行くから。」
「また出た、イマジナリー店長会議。茶店タイムじゃねぇか」
「大事なんだってば。でね。大友女史を新人育成に使うなんて贅沢なことできないからさ、彼の教育係は、高校生か3軍のパートのおばちゃんなの。」
「ひでぇ」
「で、高校生の数が増えてきたら、彼用なしだからさ。上がってもらうのさ。」
「まんまブラック企業の社長だな。」
「なんだよ。ひでえ言いようだな。」
「どっかから文句は上がらないのか?本橋女史とかさ。」
「よくわかるね。本橋さんからも言われたし、何より本人からクレーム上がったよ。」
「ハットリくんからか?」
「そ、厚かましいよね。新人風情が店長にたてつこうなんざ」
「急に大きく出たな。」
「まあ、一応真摯に聴いたんだけどさ。」
「で、ハットリくんはなんて?」
「「どうせ大友さんと組めないなら、せめて合わない時間にしてくれ」ってさ」
「それ、末期じゃねぇか。「どうせかなわぬ恋なら、いっそ殺してくれ」くらいの内容だと思うのは俺だけか?」
「本橋女史も同じ意見だったね。でも俺は好意的に受け止めたよ。彼も前向きになったなと。踏ん切りがついたなと」
「いや、そうじゃあるまい。」
「まあ、まあ、そういうなよ。彼の成長を喜ぼうよ。と言う訳で、夜シフトに移しました。」
「移したのか。鬼畜全開じゃねぇか」
「そんなことないさ。最初は夢遊病患者みたいにふらふらしてたんだけど」
「ほら見ろ。末期じゃねぇか。」
「大丈夫。復活したから。」
「復活したってことはやっぱり堪えてたんじゃねぇか!」
「まあ、そう言いなさんな。でね。夜メンバーとずいぶん打ち解けて、最近は楽しくやってたのよ。でもさ。」
「でね。じゃねぇよ。まあいい。で、何か問題でもあったのか?」
「夜は夜で、メンバーが厚くなるのはありがたい事なんだけど、やっぱり、大友女史と高校生の谷間の時間に戻ってきてほしいのさ。」
「まるっきりお前の都合じゃねぇか。でも、本人の意見はどうなんだ?」
「夜メンバーの、とくに村上と仲がいいんだよね。」
「ああ、ダブルワーカーか。大人だし、そういう相手はうまいのかもな。」
「たぶんね。それに好みも似てるしな。」
「と言うと?」
「村上本人はばれてないつもりだろうけど、大友女史にぞっこんだ。」
「接点あるのか?」
「何回かヘルプで来てもらったことがあるんだよ。本業が休みの日の日中に。奴は結構頼りになるからさ。ピークタイムでもキッチンワンオペ楽勝だ。やっぱり社会人は仕事が速い。」
「高校生や大学生とは違うか。」
「ああ、物が違うね。で、そん時に結構会うんだよ。大友女史と。フロアとキッチン両方ワンオペみたいな感じで。」
「あれ、お前は?」
「店長会議」
「ふざけんな。このイマジナリーが。」
「変なあだ名付けんなよ。で、一緒にやってるとき楽しそうだよ。正直両方独身だしさ。良い感じだと思うんだけどね。」
「まずはお前が動いた方がいいと思うけどな。で、村上は大友女史命ってか?」
「そ、だから同じ人を愛する者同士、引き合うものがあるのかもな。」
「奪い合わねぇのか?」
「お互いにわかってんじゃない?高嶺の花だって。」
「まあ、そんなもんか。」
「でも、夜で固定は困るんだよね。一応、ポンコツだけど大泉がいるからさ。いなきゃ、ハットリくんプラスで万々歳ってとこなんだけど。」
「なるほどね。まあ、お前が屑だってことはわかったよ。」
「なんでそうなる?」
「お前の都合しかないもんな。」
「そりゃそうでしょ。僕はいつだってマネジメント最優先だからね。」
「そうですかい。で、今後はどうしたいと思ってんだ?」
「そうね。一応、日中の谷間時間にも戻ってきてもらおうかと思ってね。」
「どうやって。」
「一応、秘策的なものはあるんだよ。」
「秘策?」
「大友女史ほどじゃないけど、変な色気があるパート主婦がいるんだよ。」
「変な色気?」
「そう、森本女史28歳。大友女史よりちょい年下だが、人妻で変な色気がある。」
「変な……を強調するな。」
「なんとも形容しづらいんだよ。「変な」としか。なんていうんだろうな。まあ、美人なんだけどね。ちょっとケバ目の。夫婦ともどもパチンカスらしい。俺はよく知らんが、ほかのパートがそう言ってた、で、金がないのか、シフトすげー入ってんの。大友女史に次ぐ位。だから、彼女を教育係にしようかなぁと。」
「森本女史は教育係にしていいのか?」
「まあ、2軍だしね。大体二人から三人で組ませてるから、余裕あるシフトなんだよ。さて、彼女の色香がどう出るか。楽しみだねぇ。」
「ゲスイな。クズでゲスイって。お前ある意味凄いな。」
「そんなに褒められてもねぇ。」
「さいですか。じゃあ、ゆっくり休みな。」
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黒猫は一鳴きして窓から出ていった。
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