308 / 321
終章
実験
しおりを挟む
「生方先生。やはりあなたに任せた甲斐がありました。お手柄ですよ」
天使に似つかわしくないその言葉を聞いて、サトシとフリードリヒの視線がルークスに注がれる。
ルークスは注目されている事すら気づかず呆気にとられていた。
全く理解が追い付かない。
日本語なのに聞き取れない。
言葉は判るが意味が解らない。
ルークスの目は、天使の頭の先からつま先まで、ぎょろぎょろと忙しなく動き回る。
しかし焦点が定まらない。
その様子を見てサトシは天使に攻撃を仕掛ける。
「茨」
呟きが天使に聞こえないように細心の注意を払いながら天使の体に超合金(イモータライト)の棘を生やす。
ザシュ!!
天使の体は一瞬にしてウニのように棘に包まれる。
が、
その棘が一本、また一本と地面に落ちてゆく。
すべての棘が地面に落ちたとき、天使は何事もなかったようにやさしくサトシに微笑みかける。
「面白いことが出来るんですね。なにより、冷静に行動を起こせるところが素晴らしい。柔軟な発想力と適格な判断力。見事です。流石生方先生」
サトシもその言葉の意味を理解することが出来なかった。
攻撃したことを褒められたかと思えば、ルークスを讃え始める。
その行動の異様さに、追撃することを躊躇っていた。
「どうしました?参拾参號。さあ、私が敵だと思うなら存分に攻撃して見なさい。あなたの力を見せてください。さあ!」
天使は両手を大きく広げ、ノーガードであることをアピールする。
サトシはその意図を探ろうと必死に思考を巡らせる。
フィキャ!!
激しい閃光が天使の首を貫く。
ドガァァァン!!!
わずかに遅れて衝撃波と爆風がサトシたちを襲う。
砂埃と蒸気で何も見えない。サトシは注意深く天使の気配を探る。
「その注意深さも素晴らしい。無防備に見える私に対して安易に攻撃しなかったことも評価に値します。
が、
七拾八號。あなたはいけませんね」
いまだ姿が見えない天使が講義でもするように楽し気に語り掛けてくる。
ブファァ!!!
サトシとルークスに向かって一陣の風が吹き抜ける。それと共に周囲の砂塵や蒸気が一気に晴れると、天使が悠然とこちらを見下ろしていた。
「私にそんなちんけな攻撃が通用すると思いますか?今まで何を見ていたんです?理解力が足りません。やはり強制的に接続を修正しなければ品質が低いということでしょうか」
天使はフリードリヒに視線を落とすと落胆の顔で言い放つ。
先ほどの閃光はフリードリヒが放ったものだった。
ルークスの記憶ログを頼りに渾身の魔力を込めて放った「高出力LASER」だったが、天使に毛ほどの傷をつけることも叶わなかった。
「自己修正でここまで改善できているという点は評価に値しますが……まあ、弐拾號よりはマシでしょうか」
「弐拾號……。か……カールの事か?」
フリードリヒの声が低く唸るようなものとなり、その言葉には激しい怒気が籠っていた。
天使に似つかわしくないその言葉を聞いて、サトシとフリードリヒの視線がルークスに注がれる。
ルークスは注目されている事すら気づかず呆気にとられていた。
全く理解が追い付かない。
日本語なのに聞き取れない。
言葉は判るが意味が解らない。
ルークスの目は、天使の頭の先からつま先まで、ぎょろぎょろと忙しなく動き回る。
しかし焦点が定まらない。
その様子を見てサトシは天使に攻撃を仕掛ける。
「茨」
呟きが天使に聞こえないように細心の注意を払いながら天使の体に超合金(イモータライト)の棘を生やす。
ザシュ!!
天使の体は一瞬にしてウニのように棘に包まれる。
が、
その棘が一本、また一本と地面に落ちてゆく。
すべての棘が地面に落ちたとき、天使は何事もなかったようにやさしくサトシに微笑みかける。
「面白いことが出来るんですね。なにより、冷静に行動を起こせるところが素晴らしい。柔軟な発想力と適格な判断力。見事です。流石生方先生」
サトシもその言葉の意味を理解することが出来なかった。
攻撃したことを褒められたかと思えば、ルークスを讃え始める。
その行動の異様さに、追撃することを躊躇っていた。
「どうしました?参拾参號。さあ、私が敵だと思うなら存分に攻撃して見なさい。あなたの力を見せてください。さあ!」
天使は両手を大きく広げ、ノーガードであることをアピールする。
サトシはその意図を探ろうと必死に思考を巡らせる。
フィキャ!!
激しい閃光が天使の首を貫く。
ドガァァァン!!!
わずかに遅れて衝撃波と爆風がサトシたちを襲う。
砂埃と蒸気で何も見えない。サトシは注意深く天使の気配を探る。
「その注意深さも素晴らしい。無防備に見える私に対して安易に攻撃しなかったことも評価に値します。
が、
七拾八號。あなたはいけませんね」
いまだ姿が見えない天使が講義でもするように楽し気に語り掛けてくる。
ブファァ!!!
サトシとルークスに向かって一陣の風が吹き抜ける。それと共に周囲の砂塵や蒸気が一気に晴れると、天使が悠然とこちらを見下ろしていた。
「私にそんなちんけな攻撃が通用すると思いますか?今まで何を見ていたんです?理解力が足りません。やはり強制的に接続を修正しなければ品質が低いということでしょうか」
天使はフリードリヒに視線を落とすと落胆の顔で言い放つ。
先ほどの閃光はフリードリヒが放ったものだった。
ルークスの記憶ログを頼りに渾身の魔力を込めて放った「高出力LASER」だったが、天使に毛ほどの傷をつけることも叶わなかった。
「自己修正でここまで改善できているという点は評価に値しますが……まあ、弐拾號よりはマシでしょうか」
「弐拾號……。か……カールの事か?」
フリードリヒの声が低く唸るようなものとなり、その言葉には激しい怒気が籠っていた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
公爵令息と悪女と呼ばれた婚約者との、秘密の1週間
みん
恋愛
「どうやら、俺の婚約者は“悪女”なんだそうだ」
その一言から始まった秘密の1週間。
「ネイサン、暫くの間、私の視界に入らないで」
「え?」
「ネイサン……お前はもっと、他人に関心を持つべきだ」
「え?えーっ!?」
幼馴染みでもある王太子妃には睨まれ、幼馴染みである王太子からは───。
ある公爵令息の、やり直し(?)物語。
❋独自設定あり
❋相変わらずの、ゆるふわ設定です
❋他視点の話もあります
文系男子と理系女子の恋愛事情
桐生彩音
ライト文芸
投資ファンドを立ち上げる目標を持つ理系女子、金子稲穂には変えられない過去がある。彼女の記憶にはなくとも、その心は精神的外傷(トラウマ)という鎖に縛られ、光が当たることはないと思っていた。彼に、演劇部で脚本家を担当しているクラスメイトの文系男子、黒桐蒼葉の本当の姿を知るまでは。
その姿に惹かれた稲穂は、蒼葉との雑談を機に告白した。
「さっさと答えなさい。『YES』か『NO』か」
「その前に好きだとか言う男の胸ぐら掴み上げてんじゃねぇ」
この物語は、文系男子と理系女子によるよくあるかどうか分からない、ラブコメっぽい何かです。
・2020年06月02日 第一巻分完結、第二巻分鋭意執筆中
・2020年06月23日 第二巻分掲載開始
・2020年10月 更新休止(詳細は近況ボードに記載しております)
・2021年01月05日 第二巻分完結、第三巻分鋭意執筆中
・2021年01月11日 『アイホン』→『アップルフォン』修正済
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
パーティーに裏切られた暗黒騎士はレベル1から錬金術師でやり直し!
秋風 司
ファンタジー
主人公のアクセルは、レベル999のカンストパーティーのメンバーであった。ステータスの総合値が世界で一番のアクセルは、パーティーの中でもエースで一際目立っていた。だがある日、パーティーの三人から言われる。
「お前のステータス俺たちによこせよ!」
言い放たれた言葉に戸惑うアクセルは、どういうことかと聞こうとするが三人とも聞く耳を持たずに戦うつもりのようだ。長年連れ添った仲間の裏切りに整理が出来ず、テレポーテーションをしてその場を離れる。
移動先を考えていなかったアクセルは見知らぬ森に飛んでしまう。そこで出会ったのは一人の少女フィアナ。職業(ジョブ)は錬金術師、聞いたこともない職業である。アクセルはこの機会にフィアナに手伝ってもらい錬金術師になりたいと提案した。するとフィアナは快く受け入れ、錬金術師へと職業変更(ジョブチェンジ)する。
レベル999暗黒騎士からレベル1錬金術師へと職業変更(ジョブチェンジ)したアクセルのやり直しの物語が始まる。
※この話にはステータス表示があります。一話辺りの文字数が1000〜2000字なので気軽に読めると思います。
小説家になろう様にも掲載しています。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。
【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?
紺
ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。
世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。
ざまぁ必須、微ファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる