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終章

化物

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「あ、大丈夫。生きてますよ」
「大丈夫って……誰が?」
「カルロスですけど」
「いや。むしろ死んでくれた方が良いんじゃない?」
「まあ、そう言えばそうですか。でも、そんなに簡単に死なれると、それはそれでなんか……ねぇ?」
「なぁ。サトシ。あのサトシだよな?お前そんな残酷な奴だっけ?」
 サトシの言葉にオットーが疑問を抱き確認する。
「あ~。いや。苦しんで死ねとかそう言う意味じゃなくてですね。ん~。なんていうか、簡単に倒せると、なんかこっちが罠にはまってる気がするんですよね」
「ああ、そう言う事かい」
 オットーはその言葉に納得する。確かにあれだけのスキルと能力を持つ男があっさり死ぬわけがない。

 まあ、これをあっさりと呼ぶのかどうかは別として。

 ようやくカールが斬撃の手を止める。
 砂埃が落ち着いたウルサンの街並みは、大災害直後と言った雰囲気だ。カールから見てカルロスがいた場所の後ろには何も障害物がない。建物がないばかりか地形すら変わっている。

 視界がクリアになったところに、片膝を付いたハルマン。つまりカルロスが肩で息をしながら佇んでいる。俯きながら何やらぶつぶつと呟いている様だ。

「……んの……」

「ん?なんか言った?」
 カールの素っ頓狂な言葉に、カルロスが切れる。

「っざけんな!!!でたらめにもほどがあるやろ!お前は昔からそうや!いつもそうや。俺の邪魔ばっかりシャーがって!!!ふざけんなこの糞餓鬼ゃ!!!!」



「まだ元気そうだな」
 そんなとぼけたセリフを残しカールは大きくフリードリヒ達の方へバックステップし距離を取る。
 フリードリヒ達もその様子に上空へと距離を取る。先程の攻撃を見てやばいと判断したのだろう。

 カールからカルロスの距離は200mほど。カールはその場で腰を下げ右手に持った日本刀を鞘に納めてから、左手をカルロスの方へと向ける。

『なあ』
 珍しくカールがフリードリヒに念話で語りかける。
『どうした!?』
 流石にこの行動に、フリードリヒも不穏なものを感じる。

『あんた。死んだ人間も生き返らせることできるよな?町も戻せるだろ?元に』
『あ、ああ。一応な』
『じゃあ、安心だ。後頼む』
『は?』
 
「ファイアボール」
 ぼそりと呟くと、辺りの空気が一気に動き出し、周囲から悍ましい量の魔力が吸いだされる。これは画面に表示されたパラメータを確認しなくてもわかるレベルの変化だった。

「な!?」
 会議室の画面に映し出されるカールのステータスはそのままだが、周囲に赤色で「警告(caution)」と点滅するダイアログが表示された。

「あー。やり過ぎちゃいましたね。これはまずいですね」
 サトシが「あちゃー」と言いながら額に手を当て天を仰ぐ。

「へ?どういうこと?」
 状況がつかめないルークス以下Sランク冒険者たちはサトシに詰め寄る。

「なんか、カールさんかなりの大技しようとして周囲から魔力吸い上げてるんですけど……」

「けど……なんだよ」
 おそるおそるオットーが尋ねる。

「ほら。魔力を周囲から吸い上げる時、自分の魔力量が基準になるじゃないですか?」
「ああ、俺は出来ねぇけど、そうらしいな。って。自分の魔力量って事は……」
「そう言うことです。ウルサン周辺の魔力が枯渇するほど魔力吸い上げたって事ですよ。たぶんこの警告はそれです」

「いったい何をしようとしてんだよ。あいつは」
「ファイアボールじゃないですかね?」
 オットーの言葉にサトシが冷たく答えるが、ここに居る全員が思った。
『そう言う事じゃない』

 そんなやり取りの間にも、カールの掌は白く輝き始める。その輝きは熱気を帯び太陽のように激しく輝き始める。

「あ~。ファイアボールのレベルじゃないですね。カールさんに呪文教えないとですね」
「あれをまだ強力にする気か?サトシ」
 ルークスの懸念は尤もだった。あの魔力量で高位の呪文を使われた日には、世界ごと消し飛ぶのではなかろうか。周囲の誰もがそう思っていた。

「あ、ならカールさん一人で天使型ドローン撃退出来そうですね。今度「ガンマ線バースト」使ってもらいましょうか」
「この世界壊す気か?」
「ああ、確かにそのくらいのレベルになりそうですね」
 その言葉に『おいおい。カールの知り合いは頭のオカシイやつばっかりか……』と、ここに居るカールの知り合いが全員考えていた。
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