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終章
権限
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「特等席だな。あ、ステータス表示できるよ。ほら」
「あ!凄いっすね。カルロスの手下もやっぱ強いなぁ。なんか耐性とか持ってるんすかね?」
「魔物じゃねぇんだから、って。あれ?毒耐性有るな。なんだよ。すげーな。そう言やあいつもステータスいじれるもんなぁ。何でもありだな」
大画面で映し出されるウルサンの様子を、サトシとルークスがキャッキャ言いながら眺めている。
それを呆れた様子で眺める三人のSランク冒険者たち。
「なあ、あれ何に見える?」
「能力値……ですかね」
ウルサンの街を闊歩するカルロスの手下たち。映し出された彼らの頭上にはステータスが表示されている。
『もしかして、サトシやルークスにはあんな風に俺たちが見えてるって事か?』
オットーはその現実に身震いする。Sランク冒険者の肩書も、自分には役不足だと思っていたくらいだ。実際彼の実力は歴代のSランク勝るとも劣らない。戦いにこそ不向きだが、索敵にかけては右に出る者はいない。要は自分より強い敵と戦わなければ負けない。最強なのである。
当然カールやエリザ達の実力を認めては居たが、Sランクを遥かに超越した存在だと理解していたし、自分もその一員である自負があった。
が、
目の前の光景は、その自負を完膚なきまでに打ち砕いていた。
そんな状況を知ってか知らずか、サトシとルークスは大画面を見ながらなおも盛り上がる。
「ハルマン大丈夫かなぁ……」
ルークスは画面に映るウルサン自由連合のハルマンを眺めながら一人ごちる。
「あれ、言ってませんでしたっけ?カルロスはハルマンに乗り移ってますよ。ほら、ハルマンにもステータス出してみてくださいよ。たぶん「カルロス」って出ますから」
「は!?マジで?あ!ホントだ。じゃあ、本物のハルマンどうなったのよ」
「知りませんよ。もともとハルマン本人に会ったことないですし」
「そ、そう言やそうか。
あ~。ハルマンやられちまったのかなぁ。せっかく手紙までくれたのに」
「ああ、文通仲間でしたっけ?そう言えば会えたんですか?あの時」
「文通してねぇし……ああ、一応会えたけどさ……」
ルークスはその時の様子を何とか思い出そうと頭をひねりながら考え込む。
「たぶんその時俺もう操られてたんだよね。カルロスに。なんか、思考がふわふわしてたから。で、朧げな記憶なんだけど、ハルマンもカルロスの言うなりだったような……」
「じゃあ、その時から支配下にあったんですねぇ。だったらもう無理じゃないっすか。諦めましょう」
「軽!いや、軽いぞ。まあ、大した付き合いじゃないけどさ。もうちょっと、ほら。こう。ね?」
「「ね?」じゃないですよ。良いから集中しましょう」
サトシはルークスの様子などお構いなしに周囲の様子を映すよう催促する。
「冷めすぎじゃない?まあ、いいか。っと。あれ?」
ハルマンを中心にカメラを左右に振る。すると、ハルマンの視線の先に小さな人影が複数現れた
「あの通りの向こうからやってくるの魔王達じゃない?」
「ですね。いよいよ対決ですか。さ、こっちもそろそろ準備しときましょうか」
サトシは画面に視線を向けたまま肩を回し始めた。その様子にルークスは、ガチンコ勝負を覚悟する。
しかし、実際に操られていたルークスからすれば、力技だけは避けたいというのが本音で、何とか搦め手で行きたいと考えていた。
「カルロスのステータス……本当に全部見えてんのかなぁ」
「ああ、一応管理者がバックについてるんですもんね。そのあたりアシストされてる可能性はありますね」
ルークスは手元の天命の書板を覗き込む。すると「管理者権限コマンド一覧」が表示されていた。
その中から「思考ログ表示」を選択する。
「おい!これは……」
後ろで固唾をのんでみていたオットーが驚きの声を上げる。
「あ、なに?」
ルークスはオットーの呟きに答えはするが、気もそぞろと言った様子だった。目まぐるしく表示されるNPCの思考ログを斜め読みする。
「これ……NPCが考えてる内容ですか。便利ですね」
表示されたログを見てサトシがルークスにサムズアップしていた。
「便利……って」
開いた口が塞がらないとはこの事だとオットーは思った。彼からすればまさに神の御業である。こんな馬鹿みたいな能力を「便利」の一言で片づける。そんな化け物が居るのかと我が耳を疑う程だった。
「あ~。でも、だめだ。ユーザーは制限掛かるな」
ルークスは周囲に居たユーザーにも同様に「思考ログ表示」を試してみた。
しかし、期待もむなしくユーザーの場合は表示内容が明らかにNPCの場合より少ない。そして、ダイアログの右下に「LIMITED」の表示が追加されていた。
「じゃあ、カルロスも……うわ!。こいつは管理者バリアかぁ」
カルロスの頭上に現れたダイアログには思考ログは一切現れず、一言だけ表示されていた。
「権限不足」
「ガチンコかぁ……」
ルークスはがっくりと首(こうべ)を垂れる。
サトシはルークスの肩を軽く叩くと
「まあ、仕方ないっすよ。ここは腹くくっていきましょう」
空中に映し出された映像の中ではフリードリヒがハルマンに何やら語りかけている。
「ハルマン。これはどういうことだ?」
「さ、始まりますよ」
サトシは胡坐を解き、正座をして画面を凝視する。
それに倣うように皆姿勢を正す。
「あ!凄いっすね。カルロスの手下もやっぱ強いなぁ。なんか耐性とか持ってるんすかね?」
「魔物じゃねぇんだから、って。あれ?毒耐性有るな。なんだよ。すげーな。そう言やあいつもステータスいじれるもんなぁ。何でもありだな」
大画面で映し出されるウルサンの様子を、サトシとルークスがキャッキャ言いながら眺めている。
それを呆れた様子で眺める三人のSランク冒険者たち。
「なあ、あれ何に見える?」
「能力値……ですかね」
ウルサンの街を闊歩するカルロスの手下たち。映し出された彼らの頭上にはステータスが表示されている。
『もしかして、サトシやルークスにはあんな風に俺たちが見えてるって事か?』
オットーはその現実に身震いする。Sランク冒険者の肩書も、自分には役不足だと思っていたくらいだ。実際彼の実力は歴代のSランク勝るとも劣らない。戦いにこそ不向きだが、索敵にかけては右に出る者はいない。要は自分より強い敵と戦わなければ負けない。最強なのである。
当然カールやエリザ達の実力を認めては居たが、Sランクを遥かに超越した存在だと理解していたし、自分もその一員である自負があった。
が、
目の前の光景は、その自負を完膚なきまでに打ち砕いていた。
そんな状況を知ってか知らずか、サトシとルークスは大画面を見ながらなおも盛り上がる。
「ハルマン大丈夫かなぁ……」
ルークスは画面に映るウルサン自由連合のハルマンを眺めながら一人ごちる。
「あれ、言ってませんでしたっけ?カルロスはハルマンに乗り移ってますよ。ほら、ハルマンにもステータス出してみてくださいよ。たぶん「カルロス」って出ますから」
「は!?マジで?あ!ホントだ。じゃあ、本物のハルマンどうなったのよ」
「知りませんよ。もともとハルマン本人に会ったことないですし」
「そ、そう言やそうか。
あ~。ハルマンやられちまったのかなぁ。せっかく手紙までくれたのに」
「ああ、文通仲間でしたっけ?そう言えば会えたんですか?あの時」
「文通してねぇし……ああ、一応会えたけどさ……」
ルークスはその時の様子を何とか思い出そうと頭をひねりながら考え込む。
「たぶんその時俺もう操られてたんだよね。カルロスに。なんか、思考がふわふわしてたから。で、朧げな記憶なんだけど、ハルマンもカルロスの言うなりだったような……」
「じゃあ、その時から支配下にあったんですねぇ。だったらもう無理じゃないっすか。諦めましょう」
「軽!いや、軽いぞ。まあ、大した付き合いじゃないけどさ。もうちょっと、ほら。こう。ね?」
「「ね?」じゃないですよ。良いから集中しましょう」
サトシはルークスの様子などお構いなしに周囲の様子を映すよう催促する。
「冷めすぎじゃない?まあ、いいか。っと。あれ?」
ハルマンを中心にカメラを左右に振る。すると、ハルマンの視線の先に小さな人影が複数現れた
「あの通りの向こうからやってくるの魔王達じゃない?」
「ですね。いよいよ対決ですか。さ、こっちもそろそろ準備しときましょうか」
サトシは画面に視線を向けたまま肩を回し始めた。その様子にルークスは、ガチンコ勝負を覚悟する。
しかし、実際に操られていたルークスからすれば、力技だけは避けたいというのが本音で、何とか搦め手で行きたいと考えていた。
「カルロスのステータス……本当に全部見えてんのかなぁ」
「ああ、一応管理者がバックについてるんですもんね。そのあたりアシストされてる可能性はありますね」
ルークスは手元の天命の書板を覗き込む。すると「管理者権限コマンド一覧」が表示されていた。
その中から「思考ログ表示」を選択する。
「おい!これは……」
後ろで固唾をのんでみていたオットーが驚きの声を上げる。
「あ、なに?」
ルークスはオットーの呟きに答えはするが、気もそぞろと言った様子だった。目まぐるしく表示されるNPCの思考ログを斜め読みする。
「これ……NPCが考えてる内容ですか。便利ですね」
表示されたログを見てサトシがルークスにサムズアップしていた。
「便利……って」
開いた口が塞がらないとはこの事だとオットーは思った。彼からすればまさに神の御業である。こんな馬鹿みたいな能力を「便利」の一言で片づける。そんな化け物が居るのかと我が耳を疑う程だった。
「あ~。でも、だめだ。ユーザーは制限掛かるな」
ルークスは周囲に居たユーザーにも同様に「思考ログ表示」を試してみた。
しかし、期待もむなしくユーザーの場合は表示内容が明らかにNPCの場合より少ない。そして、ダイアログの右下に「LIMITED」の表示が追加されていた。
「じゃあ、カルロスも……うわ!。こいつは管理者バリアかぁ」
カルロスの頭上に現れたダイアログには思考ログは一切現れず、一言だけ表示されていた。
「権限不足」
「ガチンコかぁ……」
ルークスはがっくりと首(こうべ)を垂れる。
サトシはルークスの肩を軽く叩くと
「まあ、仕方ないっすよ。ここは腹くくっていきましょう」
空中に映し出された映像の中ではフリードリヒがハルマンに何やら語りかけている。
「ハルマン。これはどういうことだ?」
「さ、始まりますよ」
サトシは胡坐を解き、正座をして画面を凝視する。
それに倣うように皆姿勢を正す。
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