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魔王の譚
天啓
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「天啓……ときたか」
「なんや。急に胡散臭なったとでも思たか?いや。ある意味天啓や。天から来た啓示やからな。そのまんまや」
何を言ってるのかよくわからん。新手の宗教に勧誘しようとしてるのか?
「せやから、さっきからちょいちょい失礼なこと考えてるやろ。なんやよう分らんけど、俺は至って真面目に言(ゆ)うてる。狂てるて言われてもしゃーないけど、真面目に言うてることは確かや。せやから君も真面目に聞き」
「そうかい。一応真面目に聞いてるつもりではあるんだがな」
「ホンマかぁ~?まあええわ。でや、理不尽で不条理なこの世界について考えながら……」
「!!」
またその言葉をカルロスが発した時、俺の背中を激しい悪寒が駆け抜ける。いや、悪寒という言うより痛みに近いほどの冷たさが背中を貫いた。
『マズイ!』
直感した。何がマズいのかはわからないが、これ以上この場に居ると取り返しがつかなくなる気がする。
俺は咄嗟に奴のステータスを管理者権限で確認する。
すると、複雑に入り組んだコードが奴の周りにまとわりついている。そのコードの内の幾つかには、すでにフラグが立っていた。
つまりすでに条件を幾つか達成しているということだ!
『条件完遂で何が起きる!?』
必死に頭を働かせ、複雑に絡み合ったコードを読み解こうと努めるが、どこにもそれを示す記述がない。
「今日はここまでだ!」
俺は慌ててカルロスの言葉を遮った。その言葉を聞いて、カルロスは呆気にとられたまま口を開けて黙り込んでしまった。
軽率だったか?
これが最後の条件だったら?
いくつもの考えが頭の中に浮かんでは消える。
が、しばらくたっても何も起こらない。
『考えすぎか?』
しかし、先ほどの悪寒は何か不気味なものを感じた。これと似た感覚……
そう、これは神罰を直接受けたときに近い感覚だ。
考えてみれば、奴がここまでぺらぺらと話す事にも違和感がある。何か意図が無ければこいつは情報をここまで開示しないはずだ。
それに奴が「啓示」と言っていた事も引っ掛かる。
「なんや急に!?俺の話聞きたいんやないんか?」
「楽しみは取っておくほうなんでな。それに俺は忙しいんだよ」
俺の言葉に呼応するように、部下たちが部屋へと入ってきた。サトシが転移で連れてきてくれたらしい。カールと違って役に立つな。
「け、さよけ。で、俺はここで何したらええんや?ボーっとしとれっちゅうんか?こんなかわいいお嬢さんが糞尿垂れ流してもええんか。この拘束具の中どえらい事になんで?」
「大丈夫だ。排泄しなくても問題ない体になってるよ。そいつは」
長期にわたって監禁する予定で作ったNPCだから飲食・排泄は不要になっている。基本魔力を流すことで生命活動は維持できる。世話役の部下たちがせっせと魔力を流してくれるから当分は……というか、永遠に大丈夫だろうな。魔力が尽きない限り。
「さすが魔王っちゅうことか。えげつないな」
カルロスはかわいらしい顔をわざと醜く歪めながら悪態をつく。
「まあええわ。で、次はいつ話を聞きに来てくれんねや?」
「気が向いたらな。さっきも言ったろ?忙しいんだよ」
「へいへい。ならのんびり待たせてもらいまっさ」
そう言うカルロスの目には、確実に何かを企んでいる色が窺えた。
『一筋縄ではいきそうにないな』
そんなことを考えながら、俺はカルロスに背を向け、サトシたちの元へとこの場を後にした。
「なんや。急に胡散臭なったとでも思たか?いや。ある意味天啓や。天から来た啓示やからな。そのまんまや」
何を言ってるのかよくわからん。新手の宗教に勧誘しようとしてるのか?
「せやから、さっきからちょいちょい失礼なこと考えてるやろ。なんやよう分らんけど、俺は至って真面目に言(ゆ)うてる。狂てるて言われてもしゃーないけど、真面目に言うてることは確かや。せやから君も真面目に聞き」
「そうかい。一応真面目に聞いてるつもりではあるんだがな」
「ホンマかぁ~?まあええわ。でや、理不尽で不条理なこの世界について考えながら……」
「!!」
またその言葉をカルロスが発した時、俺の背中を激しい悪寒が駆け抜ける。いや、悪寒という言うより痛みに近いほどの冷たさが背中を貫いた。
『マズイ!』
直感した。何がマズいのかはわからないが、これ以上この場に居ると取り返しがつかなくなる気がする。
俺は咄嗟に奴のステータスを管理者権限で確認する。
すると、複雑に入り組んだコードが奴の周りにまとわりついている。そのコードの内の幾つかには、すでにフラグが立っていた。
つまりすでに条件を幾つか達成しているということだ!
『条件完遂で何が起きる!?』
必死に頭を働かせ、複雑に絡み合ったコードを読み解こうと努めるが、どこにもそれを示す記述がない。
「今日はここまでだ!」
俺は慌ててカルロスの言葉を遮った。その言葉を聞いて、カルロスは呆気にとられたまま口を開けて黙り込んでしまった。
軽率だったか?
これが最後の条件だったら?
いくつもの考えが頭の中に浮かんでは消える。
が、しばらくたっても何も起こらない。
『考えすぎか?』
しかし、先ほどの悪寒は何か不気味なものを感じた。これと似た感覚……
そう、これは神罰を直接受けたときに近い感覚だ。
考えてみれば、奴がここまでぺらぺらと話す事にも違和感がある。何か意図が無ければこいつは情報をここまで開示しないはずだ。
それに奴が「啓示」と言っていた事も引っ掛かる。
「なんや急に!?俺の話聞きたいんやないんか?」
「楽しみは取っておくほうなんでな。それに俺は忙しいんだよ」
俺の言葉に呼応するように、部下たちが部屋へと入ってきた。サトシが転移で連れてきてくれたらしい。カールと違って役に立つな。
「け、さよけ。で、俺はここで何したらええんや?ボーっとしとれっちゅうんか?こんなかわいいお嬢さんが糞尿垂れ流してもええんか。この拘束具の中どえらい事になんで?」
「大丈夫だ。排泄しなくても問題ない体になってるよ。そいつは」
長期にわたって監禁する予定で作ったNPCだから飲食・排泄は不要になっている。基本魔力を流すことで生命活動は維持できる。世話役の部下たちがせっせと魔力を流してくれるから当分は……というか、永遠に大丈夫だろうな。魔力が尽きない限り。
「さすが魔王っちゅうことか。えげつないな」
カルロスはかわいらしい顔をわざと醜く歪めながら悪態をつく。
「まあええわ。で、次はいつ話を聞きに来てくれんねや?」
「気が向いたらな。さっきも言ったろ?忙しいんだよ」
「へいへい。ならのんびり待たせてもらいまっさ」
そう言うカルロスの目には、確実に何かを企んでいる色が窺えた。
『一筋縄ではいきそうにないな』
そんなことを考えながら、俺はカルロスに背を向け、サトシたちの元へとこの場を後にした。
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