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魔王の譚
紡ぐ者
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天命の書板を眺めていると、いつのまにか馬車は停車していたらしい。
「ウルフ様、到着いたしました」
御者が恭しくそう言いながら馬車の扉を開く。目の前には宮殿と呼んでも差し支え無さそうな立派な建物がそびえたっている。
「これは、王宮か?」
「いや。研究所だ。さ、行くぞ」
豪華な建物に圧倒されているルークスのローブをひっ掴んで歩かせる。ルークスはよろめきながらも俺の後を付いてきた。
立派な扉や廊下を抜け、数えきれないほどの衛兵から敬礼をされながらようやく目的の部屋に到着する。その頃にはルークスは疲れ切っていた。
「おい、大丈夫か?なんかとんでもない奴に会おうとしてるんじゃないか?」
「まあ、元魔導師団長だからな。お偉いさんと言えばお偉いさんだろうな」
「にしても仰々しすぎないか?」
「日本でも大臣クラスに会おうと思ったらそうなるんじゃねぇか?お付きの奴に連れられてSPに睨まれ、ボディーチェックされ……って、それから思えば軽いもんだろ?」
「そう言うもんかね?」
「そんなもんだよ。こんなことでいちいち驚いてたら体がもたんぞ。何事も慣れだ……っていうか、お前の方がよっぽど異常な生活してたと思うんだが、気のせいか?」
「そうか、つつましく暮らしてたと思うが……」
「粛清を受けるのも、撃退するのもつつましくはねえと思うぜ」
「ああ、まあ」
そんなやり取りをしていると、衛兵が扉をゆっくりと開く。その先には目的の人物。シャルロットがソファーに腰掛けこちらを手招きしていた。
「よう来た。さ、こっちにおいで」
『おい、聞いてたよりずいぶん若いじゃねぇか!』
ルークスは「念話(チャット)」で俺に詰め寄る。知らんよ。お前の勝手な想像だろうが。
『見た目はな』
齢200は超えている。が、見た目は40歳~50歳と言ったところだろうか。俗に言う美魔女ってやつだ。中身を知っている俺からすれば全く興味は無いが。
「なんじゃ?何を黙りこくっておる?はようこっちにこんか!」
シャルロットは、入り口に突っ立っている俺たち二人に苛立ちながら手招きする。
「婆は気が短くていけねぇな」
「爺に言われとうないわ」
シャルロットはツンと口をとがらせ横を向く。熟女好きならたまらないポーズかもしれないが、俺には全く響かない。
「おお」
と、思ったら意外と近くに響いてる奴が居た。なんだ、ルークスはそっち系か?
「お前熟女好きか?」
「いや、そう言う訳じゃないんだが、こういうタイプ初めてだからさ。ちょっと、ねぇ?」
ねぇじゃねえよ。知らん。
「まあ、あんまり婆を待たせると、一段と歳食うからな。座らせてもらおうか」
「いちいち言うことが癇に障るのぅ。おぬしのツンデレも磨きがかかってきたの」
「デレたことが無いんだが?勝手に記憶を作らんでもらいたい。痴呆が始まったか?」
「痴呆とは。差別じゃの。まあ良い。で、そ奴が面白い男か?」
シャルロットはそう言うと、やおら立ち上がりルークスに近づいてきた。足元からなめるように視線を這わせる。
「うわお!」
「喜ぶな!!」
気持ち悪い奴だな。なんだよ、一体。俺の周りには変な奴しか居ないのか?
「なんじゃ、えらく嬉しそうにしておるのぉ。もっと気持ち良くしてやろうか?」
「なんだ?婆ぁほんとの意味で昇天させるつもりか?」
「昇天?」
ルークスは気色ばんだ目でこちらを見る。やめろ!気持ち悪い。
「何興奮してんだよ!ホントに殺されるぞ?こいつは実験体を見つけると死ぬまで遊びつくすからな」
「死ぬまで!?」
いや、なんでそこに興奮するんだよ。おかしいだろ?なんか嫌になってきたな。帰ろうかな。
「人聞きの悪い事を言うな。にしても、なかなかいい素体だな。で、こ奴がどうした?」
もうめんどくせぇな。話が一向に進まねぇ。取り敢えずルークスの話題は後回しだ。
「いや、こいつの事じゃない。お前さんに聞きたいことがある」
シャルロットはルークスを名残惜しそうに見つめていたが、
「ほぅ」
大きくため息の様な返事をすると、自分のソファーに腰掛ける。
「で、ワシにメリットはあるのか?」
「業突く張りは嫌われるぞ?」
「正当な対価じゃ」
「そうだな。この変態小僧(ルークス)の秘密を教えてやるよ」
「変態小僧!」
ルークスはその異名に大きく目を見開きながら俺の事を睨みつける。が、その眼の奥には喜びが見える。
真正の変態じゃねぇか……挙句にドMと来た。救いようがねぇな。
やっぱり帰ろうかな……
「ウルフ様、到着いたしました」
御者が恭しくそう言いながら馬車の扉を開く。目の前には宮殿と呼んでも差し支え無さそうな立派な建物がそびえたっている。
「これは、王宮か?」
「いや。研究所だ。さ、行くぞ」
豪華な建物に圧倒されているルークスのローブをひっ掴んで歩かせる。ルークスはよろめきながらも俺の後を付いてきた。
立派な扉や廊下を抜け、数えきれないほどの衛兵から敬礼をされながらようやく目的の部屋に到着する。その頃にはルークスは疲れ切っていた。
「おい、大丈夫か?なんかとんでもない奴に会おうとしてるんじゃないか?」
「まあ、元魔導師団長だからな。お偉いさんと言えばお偉いさんだろうな」
「にしても仰々しすぎないか?」
「日本でも大臣クラスに会おうと思ったらそうなるんじゃねぇか?お付きの奴に連れられてSPに睨まれ、ボディーチェックされ……って、それから思えば軽いもんだろ?」
「そう言うもんかね?」
「そんなもんだよ。こんなことでいちいち驚いてたら体がもたんぞ。何事も慣れだ……っていうか、お前の方がよっぽど異常な生活してたと思うんだが、気のせいか?」
「そうか、つつましく暮らしてたと思うが……」
「粛清を受けるのも、撃退するのもつつましくはねえと思うぜ」
「ああ、まあ」
そんなやり取りをしていると、衛兵が扉をゆっくりと開く。その先には目的の人物。シャルロットがソファーに腰掛けこちらを手招きしていた。
「よう来た。さ、こっちにおいで」
『おい、聞いてたよりずいぶん若いじゃねぇか!』
ルークスは「念話(チャット)」で俺に詰め寄る。知らんよ。お前の勝手な想像だろうが。
『見た目はな』
齢200は超えている。が、見た目は40歳~50歳と言ったところだろうか。俗に言う美魔女ってやつだ。中身を知っている俺からすれば全く興味は無いが。
「なんじゃ?何を黙りこくっておる?はようこっちにこんか!」
シャルロットは、入り口に突っ立っている俺たち二人に苛立ちながら手招きする。
「婆は気が短くていけねぇな」
「爺に言われとうないわ」
シャルロットはツンと口をとがらせ横を向く。熟女好きならたまらないポーズかもしれないが、俺には全く響かない。
「おお」
と、思ったら意外と近くに響いてる奴が居た。なんだ、ルークスはそっち系か?
「お前熟女好きか?」
「いや、そう言う訳じゃないんだが、こういうタイプ初めてだからさ。ちょっと、ねぇ?」
ねぇじゃねえよ。知らん。
「まあ、あんまり婆を待たせると、一段と歳食うからな。座らせてもらおうか」
「いちいち言うことが癇に障るのぅ。おぬしのツンデレも磨きがかかってきたの」
「デレたことが無いんだが?勝手に記憶を作らんでもらいたい。痴呆が始まったか?」
「痴呆とは。差別じゃの。まあ良い。で、そ奴が面白い男か?」
シャルロットはそう言うと、やおら立ち上がりルークスに近づいてきた。足元からなめるように視線を這わせる。
「うわお!」
「喜ぶな!!」
気持ち悪い奴だな。なんだよ、一体。俺の周りには変な奴しか居ないのか?
「なんじゃ、えらく嬉しそうにしておるのぉ。もっと気持ち良くしてやろうか?」
「なんだ?婆ぁほんとの意味で昇天させるつもりか?」
「昇天?」
ルークスは気色ばんだ目でこちらを見る。やめろ!気持ち悪い。
「何興奮してんだよ!ホントに殺されるぞ?こいつは実験体を見つけると死ぬまで遊びつくすからな」
「死ぬまで!?」
いや、なんでそこに興奮するんだよ。おかしいだろ?なんか嫌になってきたな。帰ろうかな。
「人聞きの悪い事を言うな。にしても、なかなかいい素体だな。で、こ奴がどうした?」
もうめんどくせぇな。話が一向に進まねぇ。取り敢えずルークスの話題は後回しだ。
「いや、こいつの事じゃない。お前さんに聞きたいことがある」
シャルロットはルークスを名残惜しそうに見つめていたが、
「ほぅ」
大きくため息の様な返事をすると、自分のソファーに腰掛ける。
「で、ワシにメリットはあるのか?」
「業突く張りは嫌われるぞ?」
「正当な対価じゃ」
「そうだな。この変態小僧(ルークス)の秘密を教えてやるよ」
「変態小僧!」
ルークスはその異名に大きく目を見開きながら俺の事を睨みつける。が、その眼の奥には喜びが見える。
真正の変態じゃねぇか……挙句にドMと来た。救いようがねぇな。
やっぱり帰ろうかな……
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