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魔王の譚
魔王王都へ行く
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一通り石油精製プラントを視察してから王都へと転移する。
「ここは?」
たどり着いたのはガランとした殺風景な一室だった。
「俺の事務所……というか、転移部屋だな」
ルークスはそう言うと出入口から外にでる。俺もその後について行く。すると、そこは王都職人街の一角だった。
「転移するためだけに借りてるのか?」
一応俺も王都に事務所を持ってるからな。それほど広くないにしろ職人街の家賃は安くないはずだ。
「ああ、基本寝泊りするわけじゃないからな」
「ログアウト用か?」
「さすが察しが良いな」
確かにそうだろうな。こいつはログアウトして現実世界に戻ることが出来る。ならわざわざこんなところで寝泊まりする必要はないだろう。つまり、周囲から見て自然にログアウトできるようにプライベートスペースが必要だっただけって事だ。
「にしても、このあたりの賃料は安くはねぇだろ?贅沢すぎやしねぇか?」
「そうでもないさ。と言うか、金は何とでもなるからな」
それもそうか。サトシのスキルで金を作ることも難しくないだろうし、何よりオイルマネーを握っているこいつらにとってみれば、こんな金額などはした金だろう。全く羨ましい限りだ。
「で、王都に来てどうする?侵略でもするのか?」
「全く……俺を一体何だと思ってんだよ。ちげーよ。情報収集だ」
「情報収集?」
ルークスは俺の真意を測りかねている様子だ。
「言葉通りだよ。あ、一応先に言っておくと、俺はこの街でも「ウルフ」って事になってるからな。そこんとこよろしく」
「ここでも「ウルフ」なのかよ。まあ、確かに「魔王」を名乗って騒ぎになるよりいいか」
「ところで俺の名前わかってるか?俺「魔王」じゃねぇぞ」
「え?違うの?」
何なんだよこいつ。俺を生粋の「魔王」だと思ってねぇか?
「俺の名前はフリードリヒだ」
「随分御大層な名前だな。まあ、「魔王」だしそんなもんか」
納得の仕方に釈然としないものを感じるが、まあ良いとしよう。
「で、どこに行くんだ?」
「知り合いの所だ」
「知り合いねぇ。その知り合いはお前が「魔王」だって事は知ってるのか?」
「ああ、知ってるな。昔からの馴染みだ」
「なるほどね。で、あんたの事を「魔王」だって知ってる知り合いは王都に結構居るのか?」
「そんなこと聞いてどうする?」
「いや。俺あんまり嘘つけない方だからさ」
「そうだな。ドン草そうだもんな」
「な!?」
事実を言っただけなんだが、随分ショックを受けている様だ。意外に繊細な奴だな。こんなんで研究なんてやってられるのか?もっと鈍感じゃないと研究者なんて務まらんと思うんだが。俺の偏見なんだろうか?
そんな会話をしながら職人街から王都の中央大通りに出て東へ向かう。やはり王都は今日もにぎわっている。いや、以前来た時よりも賑わいが増しているかもしれない。やはり石油の影響はあるんだろうか。
「なあ、こんなに王都は賑わってたか?」
その疑問をルークスにぶつけてみた。ルークスはこともなげな表情で答える。
「あ、ああ。そういや景気が良くなってるかもな。俺達最近いろんな新製品出してるから……ほら、やっぱりみんな便利な生活が良いんじゃない?」
「新製品か」
ここ数日、王都に居る部下からいくつかの報告が上がっているが、石油ストーブやガソリンコンロ、オイルランタンなど随分と便利になってきているようだった。また、簡易的なエンジンも発売したらしく職人街ではちょっとした祭り状態のようだ。
つくづく粛清を受けたのはルークスのせいなんじゃないかと心配になって来る。王都やそのほかの街も含めて奴らが攻め込んできたら、今の俺たちの戦力ではどの拠点も守ることは出来ないだろう。もう少しこいつらには自重してもらわないといけないな。
などと考えているうちに目的地に到着した。
「て、おい。ここって、もしかして」
ルークスが口を半開きにして正面に見える建物を呆然と眺めている。
「ああ。王宮だ」
「ここは?」
たどり着いたのはガランとした殺風景な一室だった。
「俺の事務所……というか、転移部屋だな」
ルークスはそう言うと出入口から外にでる。俺もその後について行く。すると、そこは王都職人街の一角だった。
「転移するためだけに借りてるのか?」
一応俺も王都に事務所を持ってるからな。それほど広くないにしろ職人街の家賃は安くないはずだ。
「ああ、基本寝泊りするわけじゃないからな」
「ログアウト用か?」
「さすが察しが良いな」
確かにそうだろうな。こいつはログアウトして現実世界に戻ることが出来る。ならわざわざこんなところで寝泊まりする必要はないだろう。つまり、周囲から見て自然にログアウトできるようにプライベートスペースが必要だっただけって事だ。
「にしても、このあたりの賃料は安くはねぇだろ?贅沢すぎやしねぇか?」
「そうでもないさ。と言うか、金は何とでもなるからな」
それもそうか。サトシのスキルで金を作ることも難しくないだろうし、何よりオイルマネーを握っているこいつらにとってみれば、こんな金額などはした金だろう。全く羨ましい限りだ。
「で、王都に来てどうする?侵略でもするのか?」
「全く……俺を一体何だと思ってんだよ。ちげーよ。情報収集だ」
「情報収集?」
ルークスは俺の真意を測りかねている様子だ。
「言葉通りだよ。あ、一応先に言っておくと、俺はこの街でも「ウルフ」って事になってるからな。そこんとこよろしく」
「ここでも「ウルフ」なのかよ。まあ、確かに「魔王」を名乗って騒ぎになるよりいいか」
「ところで俺の名前わかってるか?俺「魔王」じゃねぇぞ」
「え?違うの?」
何なんだよこいつ。俺を生粋の「魔王」だと思ってねぇか?
「俺の名前はフリードリヒだ」
「随分御大層な名前だな。まあ、「魔王」だしそんなもんか」
納得の仕方に釈然としないものを感じるが、まあ良いとしよう。
「で、どこに行くんだ?」
「知り合いの所だ」
「知り合いねぇ。その知り合いはお前が「魔王」だって事は知ってるのか?」
「ああ、知ってるな。昔からの馴染みだ」
「なるほどね。で、あんたの事を「魔王」だって知ってる知り合いは王都に結構居るのか?」
「そんなこと聞いてどうする?」
「いや。俺あんまり嘘つけない方だからさ」
「そうだな。ドン草そうだもんな」
「な!?」
事実を言っただけなんだが、随分ショックを受けている様だ。意外に繊細な奴だな。こんなんで研究なんてやってられるのか?もっと鈍感じゃないと研究者なんて務まらんと思うんだが。俺の偏見なんだろうか?
そんな会話をしながら職人街から王都の中央大通りに出て東へ向かう。やはり王都は今日もにぎわっている。いや、以前来た時よりも賑わいが増しているかもしれない。やはり石油の影響はあるんだろうか。
「なあ、こんなに王都は賑わってたか?」
その疑問をルークスにぶつけてみた。ルークスはこともなげな表情で答える。
「あ、ああ。そういや景気が良くなってるかもな。俺達最近いろんな新製品出してるから……ほら、やっぱりみんな便利な生活が良いんじゃない?」
「新製品か」
ここ数日、王都に居る部下からいくつかの報告が上がっているが、石油ストーブやガソリンコンロ、オイルランタンなど随分と便利になってきているようだった。また、簡易的なエンジンも発売したらしく職人街ではちょっとした祭り状態のようだ。
つくづく粛清を受けたのはルークスのせいなんじゃないかと心配になって来る。王都やそのほかの街も含めて奴らが攻め込んできたら、今の俺たちの戦力ではどの拠点も守ることは出来ないだろう。もう少しこいつらには自重してもらわないといけないな。
などと考えているうちに目的地に到着した。
「て、おい。ここって、もしかして」
ルークスが口を半開きにして正面に見える建物を呆然と眺めている。
「ああ。王宮だ」
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