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魔王の譚
魔王の街
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「それじゃ、こっちに来てもらおうか」
俺は皆を連れてクレータ街の中央通りを進む。
この町は親っさん……つまり初代がカールの親父と作った街だ。二人とも日本人転生者なのでこの町の作りはどことなく日本風になっている。
中央通りは片側4車線で真ん中には路面電車が複線で走っている。
一応電車も動いてるようだし、信号機は……
ちゃんと点灯してるな。問題なく機能してるようだ。電磁パルスの影響はここまでは来なかったらしい。
いやはや、助かった。
俺も専門ではないから現象としての電磁パルスについてはよくわからんが、兵器としては理解している。
サトシがやったみたいに高高度で核爆発を起こすと、周囲に大量の電子が放出される。言ってみれば広範囲に雷が落ちるような状態になるため、電子回路なんかは配線が焼き切れてしまい使い物にならなくなるらしい。高度に電子化・情報化が進んだ近代国家がその攻撃を受けると都市機能のほとんどはマヒしてしまう。回復には膨大な時間とコストがかかるだろう。
本当にとんでもないことをしてくれる。せっかく作ったこの街が大混乱に陥るところだった。
「この町は一体……」
ルークスが周囲を見渡しながら呆気に取られている。
やっぱり「魂持ち」っぽいよな。それっぽい立ち振る舞いだけなら「魂無し」でも指示次第で可能だ。だが、こいつのそれは根本的に違う。こいつについてはじっくり確認してみないといかんな。
路面電車に乗り、中央公園前まで移動する。そこから俺の事務所は目と鼻の先だ。
「うわぁ。この感じ。子供の頃に載った路面電車そのまんまですよ」
サトシがルークスに向かって話しかけている。
「子供の頃?お前幾つだ?」
この路面電車は昭和だぞ!?転生前の俺が子供の頃でももっと近代的な造りになってたよ。だってエアコンも無くて扇風機が天井で回ってるんだぞ!?
「あ!いや。どこかのテーマパークだったと思いますよ。乗ったのは。子供の頃親に連れてってもらったんで」
「子供の頃?てーまぱーく?サトシこんなの見たことあるのか?小さいときに!?」
カールがサトシの言葉に食いつく。まあ、そうなるよな。
「いや。その」
このサトシってのも結構考え無しで動く方だな。気を付けておかないと何かしでかしそうだ……さて。
「あ~。カール。そこのサトシも転生者だ。それにそいつは以前の記憶を持ってる。その記憶は別の世界のもんだ」
「「「え!?」」」
カールとオットー達Sランク冒険者が驚きの声を上げる。まあ、Sランク冒険者たちは仕方ないだろうな。でもカール。お前はそろそろ思い出せよ……
「別の世界の記憶って……」
「まあ、落ち着け。それは会議室についてから説明するよ。こんなとこで話す内容じゃない」
カールが疑問を口にするが俺は車内を見渡しながら暗に黙るよう伝える。
正直なところ、俺たち以外で車内にいる奴らは全員「魂無し」だ。俺の指示で活動してる。だから聞かれても問題ないんだが……まあ、ねぇ。そんな事言ったら一段とカールたちに「魔王だ!」「悪魔だ!」とかなんとか酷いことを言われそうなので黙っておく。
『中央公園前ぇ~』
「さ、降りるぞ」
路面電車を降り、道路を渡ると目の前に俺の事務所兼自宅がある。元々は親っさんとカールの親父が悪ノリで作った温泉旅館風の建物だが、温泉が引けず、大量の湯を沸かすのが大変なのでただの事務所兼住宅になってしまった。その後湯の問題は解決できたが、その頃には俺の自宅になっていたので「自分だけの為に大浴場を使うのも気が引ける」ってことでタダの豪華な自宅となっている。
「「はぁ~」」
サトシとルークスが感慨深げに建物を眺めている。
「おい、早く中に入れよ」
「あ、はい」
サトシとルークスが何やら目配せをしてるが……、あ、何か情報のやり取りしてるな。
「おい、内緒話は感心せんな。言いたいことがあるんなら直接行ってくれ」
「「!」」
図星か。なんか特定の相手にだけ念話的なことが出来るんだな。そんな事も可能なのか……便利そうだな。俺が使える念話は周囲にいる全員に聞かせる事しかできんからなぁ。
こいつら色々便利なこと知ってそうだな。仲間にできると便利だが……さて。
俺は皆を連れてクレータ街の中央通りを進む。
この町は親っさん……つまり初代がカールの親父と作った街だ。二人とも日本人転生者なのでこの町の作りはどことなく日本風になっている。
中央通りは片側4車線で真ん中には路面電車が複線で走っている。
一応電車も動いてるようだし、信号機は……
ちゃんと点灯してるな。問題なく機能してるようだ。電磁パルスの影響はここまでは来なかったらしい。
いやはや、助かった。
俺も専門ではないから現象としての電磁パルスについてはよくわからんが、兵器としては理解している。
サトシがやったみたいに高高度で核爆発を起こすと、周囲に大量の電子が放出される。言ってみれば広範囲に雷が落ちるような状態になるため、電子回路なんかは配線が焼き切れてしまい使い物にならなくなるらしい。高度に電子化・情報化が進んだ近代国家がその攻撃を受けると都市機能のほとんどはマヒしてしまう。回復には膨大な時間とコストがかかるだろう。
本当にとんでもないことをしてくれる。せっかく作ったこの街が大混乱に陥るところだった。
「この町は一体……」
ルークスが周囲を見渡しながら呆気に取られている。
やっぱり「魂持ち」っぽいよな。それっぽい立ち振る舞いだけなら「魂無し」でも指示次第で可能だ。だが、こいつのそれは根本的に違う。こいつについてはじっくり確認してみないといかんな。
路面電車に乗り、中央公園前まで移動する。そこから俺の事務所は目と鼻の先だ。
「うわぁ。この感じ。子供の頃に載った路面電車そのまんまですよ」
サトシがルークスに向かって話しかけている。
「子供の頃?お前幾つだ?」
この路面電車は昭和だぞ!?転生前の俺が子供の頃でももっと近代的な造りになってたよ。だってエアコンも無くて扇風機が天井で回ってるんだぞ!?
「あ!いや。どこかのテーマパークだったと思いますよ。乗ったのは。子供の頃親に連れてってもらったんで」
「子供の頃?てーまぱーく?サトシこんなの見たことあるのか?小さいときに!?」
カールがサトシの言葉に食いつく。まあ、そうなるよな。
「いや。その」
このサトシってのも結構考え無しで動く方だな。気を付けておかないと何かしでかしそうだ……さて。
「あ~。カール。そこのサトシも転生者だ。それにそいつは以前の記憶を持ってる。その記憶は別の世界のもんだ」
「「「え!?」」」
カールとオットー達Sランク冒険者が驚きの声を上げる。まあ、Sランク冒険者たちは仕方ないだろうな。でもカール。お前はそろそろ思い出せよ……
「別の世界の記憶って……」
「まあ、落ち着け。それは会議室についてから説明するよ。こんなとこで話す内容じゃない」
カールが疑問を口にするが俺は車内を見渡しながら暗に黙るよう伝える。
正直なところ、俺たち以外で車内にいる奴らは全員「魂無し」だ。俺の指示で活動してる。だから聞かれても問題ないんだが……まあ、ねぇ。そんな事言ったら一段とカールたちに「魔王だ!」「悪魔だ!」とかなんとか酷いことを言われそうなので黙っておく。
『中央公園前ぇ~』
「さ、降りるぞ」
路面電車を降り、道路を渡ると目の前に俺の事務所兼自宅がある。元々は親っさんとカールの親父が悪ノリで作った温泉旅館風の建物だが、温泉が引けず、大量の湯を沸かすのが大変なのでただの事務所兼住宅になってしまった。その後湯の問題は解決できたが、その頃には俺の自宅になっていたので「自分だけの為に大浴場を使うのも気が引ける」ってことでタダの豪華な自宅となっている。
「「はぁ~」」
サトシとルークスが感慨深げに建物を眺めている。
「おい、早く中に入れよ」
「あ、はい」
サトシとルークスが何やら目配せをしてるが……、あ、何か情報のやり取りしてるな。
「おい、内緒話は感心せんな。言いたいことがあるんなら直接行ってくれ」
「「!」」
図星か。なんか特定の相手にだけ念話的なことが出来るんだな。そんな事も可能なのか……便利そうだな。俺が使える念話は周囲にいる全員に聞かせる事しかできんからなぁ。
こいつら色々便利なこと知ってそうだな。仲間にできると便利だが……さて。
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