上 下
229 / 321
生方蒼甫の譚

再びの粛清

しおりを挟む
「特異個体の発現を確認しました。これより神罰による粛清を開始します」

 特異個体!?なんだそれ?
 今度のアナウンスはいつもの声だ。また粛清されるのか?なんで!

 いや、想像はつく。おそらくサトシだ。どういう理屈でそうなったのかはよくわからんが、サトシがチート級に危険な個体として認識されたって事だろう。

 先ほどまで激闘を繰り広げていたサトシとカルロスは互いに手を止めて周囲の様子を窺っている。

 流石にここまで短期間で二度目の粛清は想定外だ。
 
「ほぅ。2回目の粛清を受けるんか。恐ろし奴らやな」
 カルロスは至って他人事(ひとごと)である。

「おい!お前も当事者に含まれてるって認識は無いのかよ!」
「ふん。何寝ぼけたこと言うてんねん。明らかにそのサトシやろ。逆切れしてからの成長具合が異常や。ステータスはよう分らんがおそらく神から危険やと判断されたんやろな」
「そうは言っても、お前も巻き添えを食うんじゃねぇのか?」
「いやいや、そら遠慮しとくわ。まあ、君らの健闘祈ってんで。ほな!」

 カルロスはそう言い残すとこの場から瞬時に消え去った。あれは「転移」じゃないな。なんだ。一体。あいつは何もんなんだ。
 途端に周囲のオズワルド達は崩れ落ちる。

 洗脳が解けたってところか?

 が、奴らを気にしてる暇はない。まずはサトシだ。

「おい!サトシ!大丈夫か!」
「あ、はい。大丈夫です」
 随分軽い返答に拍子抜けするが……
「今は粛清に集中するぞ!」
 アイの事はひとまず忘れろと言いかけて思いとどまった。
 しかし、サトシの反応は意外なものだった。
「大丈夫です。今気持ちは落ち着いてます。今回の粛清は返り討ちにしてやりましょう」
 そう言い放つと笑顔を見せる。その様子に何とも言い表せない気味の悪さを感じたが、遠くから近づいてくる天使型ドローンの気配にそれどころではなくなった。

 遠くから虹色の天使たちがこちらに向かって進軍してくる。あの光景だ。これが粛清だと知らなければさぞかし神々しく思えただろう。が、今はただ恐怖しかない。以前と同様経験値は無効化されている。つまりレベルは初期化されてしまった。ステータスも初期値まで下がっているが、辛うじていくつかのパラメータがサトシの武器防具で底上げされている。だがそれも奴らを撃退できるほどの数値ではない。

 ところがである。

 俺の焦りをよそに天使を見据えるサトシの背中には焦りや怯えを微塵も感じない。一体なんだ?サトシの後ろ姿に漲る自信は。

 押し寄せてくる天使たちに向かい、俺達は体制を整える。
 今度も耐えることが出来るだろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

夜霧の騎士と聖なる銀月

羽鳥くらら
ファンタジー
伝説上の生命体・妖精人(エルフ)の特徴と同じ銀髪銀眼の青年キリエは、教会で育った孤児だったが、ひょんなことから次期国王候補の1人だったと判明した。孤児として育ってきたからこそ貧しい民の苦しみを知っているキリエは、もっと皆に優しい王国を目指すために次期国王選抜の場を活用すべく、夜霧の騎士・リアム=サリバンに連れられて王都へ向かうのだが──。 ※多少の戦闘描写・残酷な表現を含みます ※小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+・エブリスタでも掲載しています

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

処理中です...