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生方蒼甫の譚

ウルサン狂騒曲

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 モビーの周囲を洗うのはサトシに任せた。が、一応俺もあたりを確認してからウルサンへ立つことにする。
 とりあえず、サトシはどうしてるんだろう……

 と、「探索」をかける。すると、ジョイスの店の屋根の上に居た。なるほど。確かにスニーキングミッション慣れてるみたいだな。これなら安心して任せられそうだ。
 しばらくその場でモビーの様子を確認していると、通りの向こうからアルトがやってきた。モビー、アルト、ジョエル、リュート。ごろつき四人衆の一人だ。アルトがモビーに近づくと、一言二言、言葉を交わしてモビーはその場を立ち去る。4人交代で俺を待ってたって事か。
 あ!モビーの奴、あの金独り占めする気だな。後でチクってやろうかしら。

 そんなことを考えながら、ジョイスの店を後にする。
 そのまま裏通りに向かい、人気のない場所からウルサンへ転移することにした。

 ……

 ウルサン周辺のスラム近郊。相変わらず刺激臭が鼻を突いてくる。嗅覚無効も欲しいところだな。なんて考えていたら。

 
 ピキーン!
 以前にも経験した目の前に電球が灯ったような明るさ、甲高い音が頭の中に鳴り響く。そして
「スキル『感覚無効』を獲得しました。」
 は?

 いやいや。「観念動力(極)」おかしいだろ。こんなにポンポンスキル作れたらゲーム成り立ちませんよ。
 とは言いつつも、嗅覚の無効化に成功している様だ。助かる。

 ……本当か?助かってるのか?なんか体に悪い空気をじゃんじゃん吸ってない?これが良いスキルなのか、悪いスキルなのか判らなくなってきた。

 半ば呆れつつスラム街を突き進む。前回来た時は夜だったのでそこまで気にしなかったが、地面は汚物だらけで足の踏み場もない。前回は人目もあったのでわずかに浮かんでやり過ごしたが、今回は「不可視化」しているので堂々と空を飛ぶ。

 ああ、心地よい……って。嗅覚無効化してるからそう感じてるだけか。アブねぇ。思いっきり深呼吸するところだったよ。

 上空からウルサンの街を眺めると、以前の様子とはずいぶん変わって見えた。まあ、昼間に見るのは初めてだからな。日本の歓楽街も、夜の顔と昼の顔では随分違うし……そんなもんか。と無理やり納得してみる。

 ウルサン自由連合の建物前は舎弟らしき男たち数人が入り口を固めている。何か物々しい雰囲気だ。

 昼間だからと無理やり納得しては見たものの、あまりに人の往来が少ない。それに建物の周囲には武装した強面の男たちが屯している。なんか戦争かヤクザの抗争でも起こりそうな雰囲気だな。

 さて、ここで姿を現したら元も子もない。どうやって誰にも気づかれずにハルマンの所まで行くかだな。そう言えば、エントランスは吹き抜けになってた気がするな。結構スペースあったような……転移しても大丈夫かしら。ちょっとやってみよう。
 というわけで「転移」
 
 周囲の風景が一瞬歪んでそれが収まると、目の前には立派なシャンデリアがあった。危ない危ない。ぶつかるところだったよ。

 さて、するするとシャンデリアのある吹き抜けを通り過ぎて2階の廊下に着地する。目の前には立派な扉。前来た時にはこの中にハルマン居たよな……

 そーっと扉を開ける、と、そこには誰かと談笑するハルマンがいた。
 よかった。あってた。

 ハルマンと、もう一人の人物がこちらへと視線を向ける。ハルマンは怪訝そうな顔だ。そりゃそうか、透明だしな。俺。

 すると。

「いよう。ルークス……やったっけ?思たより遅かったな」

 あれ?俺見えてる?
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