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生方蒼甫の譚

さっきの手紙のお用事なぁに

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「手紙を書くべきだと思うか?」
「そりゃ……まあ、でも、なんて書くんです?」
「え~と。さっきの手紙どういう意味?って」
「せっかく暗号風で送ってきたのに台無しじゃないですか!?いや、ホントに暗号なんですか?暗号じゃないならそれでいいと思いますけど」
「だってわかんないんだもん。こっちも中途半端な手紙送ったら、もっと抽象的な返事が返って来て余計に混乱しそうだし」
「それもそうですけど……。ところで、このハルマンって人と親しくは無いんですか?」
「そりゃそうさ。一回しか会ったことないし」

 サトシは手紙を眺めながら考え込む。天井を眺めていたかと思うと、おもむろに手紙を読み直す。

「「活躍してる」ってくだりは何でしょうね?やっぱりこのハルマンって人の所にも情報が届いてるって事でしょうか?」
「なんで俺の情報があいつの所に行くんだよ。それに俺そんなに活躍してねぇぜ?なんかしたっけ?」
「天使から命からがら逃げ延びて……ゴーレム倒して……サンドワーム倒して……サンドウルフ倒して……サンドウルフの肉を王都の商業ギルドに高値で売り付けて……ってくらいでしょうか」
「そう聞くと、結構頑張ってるな俺。まあ、最初の「命からがら逃げ延びて」は別として」
「どうなんですかね?この世界でも手紙の最初にこんな「あいさつ文」つけるんでしょうか?」
「どうだろうなぁ。裏社会のルール的な奴?」
「なんで裏社会のルールで手紙のあいさつ文が要るんですか?」
「ほら。礼儀とか五月蠅そうじゃん、ああいう人たち」
「そんなもんなんですかねぇ……」
 サトシはあまり納得していないようだ。
「ルークスさんは、このハルマンって人から裏社会の情報を貰ってるんですよね?人気のお店情報とか楽しいお祭り情報とか欲しがりました?」
「なんでそんな情報欲しがるんだよ。俺はJKか?OLか?」
「それはジェンダー差別ですね」
「なんだよ。こまけぇこと言うなよ。そんな世界でもねぇだろ!」
「いや、聞いてないんならそんな情報手紙に書くかなぁ?と思いまして」
「まあ、それもそうだよな。それに、なんで話したいことがあるならそれを直接書かない?」
「……手紙が届けばいいですけど……」
「……届かない場合の事も考えてっ事か?ああ、まあ。それはあり得るなぁ」
「「こちらへ遊びに来てほしいという奴らも多い」って言ってますけど。ウルサンに知り合い多いんですか?」
「いや、ハルマンと、後はその舎弟の4人組くらいかなぁ、名前知ってるのは。後の奴らは覚えてないが、知ってる奴はハルマンの舎弟ばっかりだ。少なくとも俺にいい印象は持ってないだろうよ」
「じゃあ、その人たち以外でしょうね。ルークスさんに来てもらいたいのは。それに「手紙で良い」って事は……」
「……来るなって事だろうな。連絡方法も手紙以外は厳しいってことか」
「手紙は誰に渡します?」
「普通に考えればジョイスだろうな。つぅー事は、ジョイス伝手で手紙を渡せるんだから、ウサカにモビー達が居るってことだよな」
「モビーって誰です?」
「ハルマンの舎弟だ。たぶんジョイスに手紙を渡した「ガラの悪い4人組」ってのが奴らだ」
「手紙の内容的には、たぶん「誰かから狙われてるぞ」って事なんでしょうね。どうします?ウサカに手紙持っていきますか?」

 手紙を手渡すにしても、連絡方法を書かなきゃならん。手紙を受け取ったモビーが襲われて、連絡方法を相手に知られないとも限らないしなぁ。

「直接モビーと話してくるよ」
「いやいや!ド直球すぎるでしょ!?そのモビーとかが後をツケられてたらどうするんですか?」
「ほら。一応魔導士だし俺」
「また意味が解らない事言う。どういうことですか?」
「またってなんだよ。ほら。「不可視化(インビジブル)」使えばこっそり接触することもできるだろ?」
「いやいや、それを感知されたらどうするんですか?相手が同等以上の実力者って事も考慮に入れないとまずいんじゃないですか?」
「お前がそれ言う!?今まで散々そのまま突っ込んできただろうよ?」
「……それは、まあ、否定できませんけども」
 サトシに言われちゃおしまいだな。

 とはいうモノの。今の意見には一理ある。今まで考えたことも無かったが、天使たちがあの能力値だ。キャラクターとしてとんでもないバケモンが入っててもおかしくはない。サトシが出会ったカールって奴も居ることだしな。
 さて、どうしたものか。

「なあ、サトシ。お前スキルの熟練度上がった?防具に付与するスキルなにか新しい物出せるようになってねぇか?」
「あ、確か「創造主」の熟練度上がったと思いますよ。星3つになってたと思います」
「星3つ?幾つまであるんだよ!?」
「いや、知らないですけど。ってか、それこそルークスさんが調べてくださいよ!」

 おっといけねぇ。俺の役目だった。

「そんなこともあろうかと!「観測者」」
 俺の手に天命の書板が現れる。
「「そんなこともあろうかと」じゃないですよ。何ごまかしてるんすか」
「まあ、そう言うな。なになに」
 
「スキルの熟練度について
  ☆及び★の最大数はスキルによって異なる。創造主は8個」
「八個だって。多いな。って事は「極」になるには9個分ってことだな。先は長いぞサトシ」
「八個以上ですかぁ。がんばんないとですね」
 頑張るんだ。すげーなこいつ。

「現在の作成可能スキル
         絶対防御☆☆☆:ダメージ ー80%
         鉄  壁☆☆☆:防御力  +80%
         加  護☆☆☆:知力   +80%
         疾  風☆☆☆:素早さ  +80%
         怪  力☆☆☆:力    +80%
         治  癒☆☆☆:常時回復(大)+損傷治癒(中)+状態異常回復(小)
         探  索☆☆☆:危機感知(常時)+危機回避(弱)
         威  圧☆☆ :敵対者に対する行動不能(強)+回避不能(強)+魔力低下(弱)+防御力低下(弱)
         幸  運☆☆ :運    +40%
         成  長☆☆ :経験値  +80% +熟練度 +80%
         吸  収☆  :ダメージによる回復効果(弱)」

 
 おいおい、えげつないな……
 これ全部付けたらほぼ無敵じゃない?これを付与できるサトシって一体……

 天命の書板をサトシに見せると、サトシは踊りださんばかりに喜んだ。
「うっひょぉ~!これは新しい防具作んないといけませんね。どうします?作ったら試しに行きます!?」
 やべ。レベル上げジャンキーの心に火が付いた。
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