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生方蒼甫の譚
変化
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今後の方針が決まったことで、サトシはさっそく行動を開始する。
まずはティックたちに田畑の整備を指示し、地下倉庫から旧式の農耕器具をせっせと運び出させていた。
あ!
サトシに教えるの忘れてた!
「サトシ!いい魔法があるぞ」
ティックたちへの指示を終えたサトシを呼び止める。
「なんです?」
「収納魔法。この世界にもあったみたいだ」
「なんですってぇ!!」
サトシ……そんなべたな驚き方するんだな。地球が滅亡しそうな勢いだ。
「それがあれば、こんな倉庫作らなくても……」
「いやいや、その倉庫があったから今回助かったんだろ?」
ん?収納魔法でも一緒か。隠しておけるもんな。まあ、黙っておこう。
「まあ、そうですけど、これあるとかなり捗りますね。どこでこれを?」
「ん?あ、ああ。王都の貴族を探ってるときにちょっとな」
「ちょっと?
って。なんです?まさか、天命の書板で調べたら簡単に出てきたなんてことは……」
すげー疑いの目でこっちを見てくるな。サトシ。いつの間にそんなに疑り深くなった?
というか、鋭いな。
「いや、天命の書板があっても俺たちが魔法の存在に気づかなきゃわからんだろうが。この世界に収納魔法があるってことが分かったのが貴族を調べてる時だったんだよ!」
などと、わけのわからない供述をしてみる。
「ああ、そういうことですか」
ちょろいな。素直な子は嫌いじゃないが……ちょろいな。
「な。まあ、確かにもう少し早く気づければよかったとは思うけどさ。これ使えば石油の輸送とか結構捗るしな。再建の時間ロスを結構短縮できるんじゃねぇか?」
「ですね。助かります。一部備蓄してる農作物もあるんで、ウサカへの出荷はそれで対応してみますよ」
サトシはそういうと、スキップに近い足取りで作業に取り掛かった。いやあ。単純で助かる。
すると、俺の背後にアイが近づいてきた。
珍し事もあったもんだ。俺のところにやってくるなんて。
「どうした?大丈夫か。まだ本調子じゃないんだろ?」
「……」
「ん?」
「…ありがとう」
「は?」
「だから、ありがとうって」
「何が?」
「何がって……助けてくれて」
「何言ってんだよ。まあ、仲間じゃねぇか。な?」
なんて言いながら、かなりこっ恥(ぱ)ずかしかった。自分で言うのも何だが、かなりらしくないセリフだ。
でも、事実アイが居なければサトシは壊れてしまっていただろう。サトシにとってアイの存在はそれだけ大きくなっていた。当初の目的とは違うが、まあ喜ばしいことだ。
「うん」
アイは恥ずかしそうに俯きながら答えにもならない返事をする。
「……、まあ、なんだ。俺もすまなかった。お前がこんなつらい思いしてたとは思わなかったからさ。お前とサトシにはもっと幸せな暮らしをしてもらいたかったんだが……」
アイはその言葉を聞くと、一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐにうつむき黙ってしまった。
「これからも、サトシのことを支えてやってくれ。お前は戦闘に参加させられないから、戦いでは俺がサトシを守る。それは約束するよ」
アイはじっとうつむいたまま頷き、そして
「ありがとう」
小さくかすれて消え去りそうな声でそう告げると、サトシの方に走っていった。
いやはや。素直になったもんだ。ありがたい。ようやくこれで俺のことを仲間認定してくれるかな。
まずはティックたちに田畑の整備を指示し、地下倉庫から旧式の農耕器具をせっせと運び出させていた。
あ!
サトシに教えるの忘れてた!
「サトシ!いい魔法があるぞ」
ティックたちへの指示を終えたサトシを呼び止める。
「なんです?」
「収納魔法。この世界にもあったみたいだ」
「なんですってぇ!!」
サトシ……そんなべたな驚き方するんだな。地球が滅亡しそうな勢いだ。
「それがあれば、こんな倉庫作らなくても……」
「いやいや、その倉庫があったから今回助かったんだろ?」
ん?収納魔法でも一緒か。隠しておけるもんな。まあ、黙っておこう。
「まあ、そうですけど、これあるとかなり捗りますね。どこでこれを?」
「ん?あ、ああ。王都の貴族を探ってるときにちょっとな」
「ちょっと?
って。なんです?まさか、天命の書板で調べたら簡単に出てきたなんてことは……」
すげー疑いの目でこっちを見てくるな。サトシ。いつの間にそんなに疑り深くなった?
というか、鋭いな。
「いや、天命の書板があっても俺たちが魔法の存在に気づかなきゃわからんだろうが。この世界に収納魔法があるってことが分かったのが貴族を調べてる時だったんだよ!」
などと、わけのわからない供述をしてみる。
「ああ、そういうことですか」
ちょろいな。素直な子は嫌いじゃないが……ちょろいな。
「な。まあ、確かにもう少し早く気づければよかったとは思うけどさ。これ使えば石油の輸送とか結構捗るしな。再建の時間ロスを結構短縮できるんじゃねぇか?」
「ですね。助かります。一部備蓄してる農作物もあるんで、ウサカへの出荷はそれで対応してみますよ」
サトシはそういうと、スキップに近い足取りで作業に取り掛かった。いやあ。単純で助かる。
すると、俺の背後にアイが近づいてきた。
珍し事もあったもんだ。俺のところにやってくるなんて。
「どうした?大丈夫か。まだ本調子じゃないんだろ?」
「……」
「ん?」
「…ありがとう」
「は?」
「だから、ありがとうって」
「何が?」
「何がって……助けてくれて」
「何言ってんだよ。まあ、仲間じゃねぇか。な?」
なんて言いながら、かなりこっ恥(ぱ)ずかしかった。自分で言うのも何だが、かなりらしくないセリフだ。
でも、事実アイが居なければサトシは壊れてしまっていただろう。サトシにとってアイの存在はそれだけ大きくなっていた。当初の目的とは違うが、まあ喜ばしいことだ。
「うん」
アイは恥ずかしそうに俯きながら答えにもならない返事をする。
「……、まあ、なんだ。俺もすまなかった。お前がこんなつらい思いしてたとは思わなかったからさ。お前とサトシにはもっと幸せな暮らしをしてもらいたかったんだが……」
アイはその言葉を聞くと、一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐにうつむき黙ってしまった。
「これからも、サトシのことを支えてやってくれ。お前は戦闘に参加させられないから、戦いでは俺がサトシを守る。それは約束するよ」
アイはじっとうつむいたまま頷き、そして
「ありがとう」
小さくかすれて消え去りそうな声でそう告げると、サトシの方に走っていった。
いやはや。素直になったもんだ。ありがたい。ようやくこれで俺のことを仲間認定してくれるかな。
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