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生方蒼甫の譚

チェックメイト

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 天使の数は減っていない。だが、効果がなかったわけではないようで、密度が薄くなっている感じがある。
 が、正直些細なことだ。あの数で同じ戦い方をされては、こちらに勝ち目はないだろう。
「逃げるか?」
「逃がしてくれますかね?」
「そこだよな」
 奴らがチートだと判断しているのが発電所なら、発電所を壊した時点で帰ってくれそうだが……もしサトシ自身が対象ならそういうわけにもいかんだろう。

「じり貧だけど、今までの方法繰り返すしかねぇかな」
「天命の書板には何か出てませんか?」
「あ、そうだな」
「便利機能持ってる割には、存在をすぐ忘れますね」
「まあ、そういうな。健忘症なんだよ」
 そういいながら、天命の書板を呼び出す。

「残念ながら手詰まりみたいだな」
 タブレットには何も映し出されていない。明るい未来は無いってことなんだろう。

「腹くくるか」
「そっすね」
 サトシはそういうと、防塁の陰で転移を繰り返しながら「超高出力LASER」を打ちまくる。が、残念ながら殺人虫(キラーバグ)達はその攻撃に合わせ、密度を変えながらあたりを動き回る。そのため効果のほどは薄かった。

 しかし、俺たちに残された方法はこれしかない。愚直に同じ動作を繰り返し続ける。

 すると、一部の殺人虫キラーバグが防塁の中に入ってきた。やべぇ。俺達を先に始末しようと作戦を変えてきたらしい。

「奴らを止めます!二人は転移で逃げて!」

 サトシが超合金の防壁を展開し殺人虫キラーバグを足止めする。その間に俺とアイは殺人虫(キラーバグ)から離れた場所へと転移する。
 しかし、転移先にも殺人虫キラーバグは襲ってきた。対応が早い。流石というべきか。

 だが、逆にチャンスかも。
 狭い防塁の中に入り込んだことで、殺人虫キラーバグの密度は上がっていた。

「超高出力LASER!!」

 こっちの方がさっきより効率よく倒せてる。

『サトシ!防御よりも攻めたほうがいいかもしれんぞ!』
 念話(チャット)でサトシに伝えると、サトシは防塁の構造を一部変更する。

 殺人虫キラーバグが入り込んだ場所からサトシがいる場所まで徐々に狭く作り替える。

 すると、突っ込んできた殺人虫キラーバグの密度はサトシに近づくにつれ高くなってゆく。そのタイミングを見計らい、サトシは「超高出力LASER」をお見舞いする。

 防塁で小規模な爆発が起こった。

 これはいけるんじゃない?

 なんて思った俺が甘かった。

 俺達がこの戦法に変えたことで、殺人虫(キラーバグ)達は再び戦法を変えてくる。

 今度は、数匹の殺人虫キラーバグが防塁内を飛び回る。

 で、そいつに見つかると、上空からとんでもない数の殺人虫(キラーバグ)がこちらに向かって飛び込んでくる。

 これはたまらん。逃げようがない。

 初撃は運よく転移でかわすことができたが、転移先も即座に特定される。こいつらの対応力には舌を巻く。

 その後も「超高出力LASER」を狙っていたが、ことごとくチャンスをつぶされる。殺人虫キラーバグを狙う射線の後ろにサトシやアイが来るように転移の位置を誘導されていた。
 なんだよチキショー!容赦ねぇな!!

 反撃も許されず、俺たちはどんどん追い詰められていき、最後の転移でたどり着いた場所は殺人虫キラーバグ竜巻の中心だった。

 視界を殺人虫キラーバグで埋め尽くされた様は「絶望」と呼ぶにふさわしかった。

「最後に一矢報いますか!!」
 なんだよ。サトシすげーな。心折れないのな。

 サトシは再度「超高出力LASER」の態勢に入る……


 が、

「きゃぁ!」
 
 無防備になっていたアイを狙われた。
 アイも超合金の防具を装備しているが、隙間がないわけではない。顔や手などの露出部を狙われたようだった。

「アイ!!」
 途端にサトシがうろたえる。
 まずい。

 そう思った時には遅かった。一気に殺人虫キラーバグが仕掛けてくる。大挙して総攻撃を仕掛けてきた。

『精一杯息を吸って!止めてください』

 念話チャットでサトシの声が聞こえたかと思うと、目の前が真っ暗になる。と、同時に身動きが取れなくなった。

 その後は、いつやむともわからない衝撃が絶え間なく振動として体に伝わってくる。

 不思議と痛みはなかった。
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