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生方蒼甫の譚
お伽噺
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「で、何が知りたい?」
「そうだな。いろいろ聞きたいことはあるが、まずは人買いについて教えてもらおうか」
「なんでそんなもんに興味を持つ?」
「単なる興味本位ってやつだが……」
途端にハルマンの目つきが鋭くなる。俺を値踏みしている目だな。
「なんだ?人買いは極秘事項なのか?」
「そう言うわけじゃねぇ。おめえが何を狙ってるのかが知りたくてな。まあ、知ったところで俺たちには止めるすべは無いがな」
「そんなたいそうなことするつもりはないよ。まあ、なんだ。言って見りゃ人探しだな」
「人探し?」
「ああ、それこそさっきの話だ。『この世界に生まれる前の記憶はあるか?』って質問をした奴を探してる」
「そういうことか。なるほどな」
ハルマンが視線を下げると、先ほどまでのとげとげしい雰囲気が消え去る。
「その話は誰から聞いた?」
「なんだ?やっぱり秘密なのか?秘密をばらした裏切り者は許さないってか?」
「そう焦るな。その話がいつ頃の事かを知りたいだけだ。確かに俺もその質問をされたことがある。が、それは俺が子供の頃だ。だからもう70年以上前だ」
ああ、そうか。テンスも結構歳行ってたもんな。当時年上だったって言ってたっけ?名前出したらテンス消されるかな?
「ちなみに、俺にその話を教えた奴の事チクったら、そいつ消される?」
「そんなことするわけねぇだろ!何の得がある?」
「ああ、そう。それなら良いや。聞いたのはテンスって奴からだ」
「農場主のか?」
「ああ、あれ?あいつ有名なの?」
「まあ、あいつは出世頭だったからな。ん?そう言えばヨウトを再建した奴らと揉めてたって聞いたが……おめえか」
「いや、俺じゃねぇよ。まあ、俺の知り合いだがよ」
「とんでもねぇのに手を出したもんだな。なんだ?あいつ死んだのか?」
「死んでねぇよ」
「なんだ。お前殺さなかったのか?えらく優しいじゃねぇか」
「俺をなんだと思ってんだよ。いや、まあいいや」
なんかサトシの行いを思い出したら、テンスの奴殺されてた方がよかったんじゃねぇかとすら思えてきた。まあ、屋敷も再建されたことだし良しとしよう。
「まあ、そのことは良いんだが、テンスの奴がねぇ。そうか。あいつも聞かれたんだな」
ん?含みがあるな。
「またか。あいつ「も」ってのはなんだ?」
「ああ、まあ隠しても仕方ねぇしな。テンスも俺も人買いの「雨女」に世話になってたんだよ」
「は?「雨女」に「世話になってた」?」
なんだ?情報多いな。どういうこと?
「そうだな。まず人買いの事を少し説明しておくか」
「ああ、そうしてくれ」
「ウルサンには2つの人買い組織、「雨女」と「ブギーマン」がある。どっちも表向きは孤児院だが、よそから人を買ってきては金持ちに売り付けてる。ウルサンの周辺には荒野が広がっててな、そこに小さい集落が点在してるんだ。雨季には多少草木も生えるから、狩りや農耕もできなくはないんだけどな。でも乾季になると人が住めるような状態じゃなくなる。そのあたりの集落の人間は食うや食わずの生活になるんだよ。そう言うところは口減らしで子供を売るんだよ。」
「食うに困って、口減らしに子供を売るってか。世知辛いねぇ」
「どこにでも転がってる話だよ。珍しくもねぇ」
「だいたい、なんでそんな所に住んでんだよ。ウルサンに来ればいいだろうに」
「まあ、事情があるんだろうな」
「事情?」
「そのあたりの住人は、もともと王都から流れてきたって噂だ」
「王都から?なんでまたそんな辺鄙なところに?」
「元貴族や王族って話だ。まあ、本人談ってんだから眉唾だがな」
「眉唾ねぇ」
こいつ日本人か。いや。こいつを育てた奴が日本人なのか?
ごく自然に「眉唾」の単語が出てきてる。
まあ、俺も最近ゲームをしてないから学部生から聞いた話だが、最近のオンラインゲームではプレーヤー同士の会話をAIがリアルタイム翻訳してくれるらしい。変換速度も速いうえにリップシンクまで正確なんで、相手と仲良くなって地元を聞くまで外国人だと気づかなかったと言っていた。まあ、そこから考えればハルマンの言葉も翻訳が掛かっている可能性もあるが……自動翻訳で「眉唾」と訳される可能性は低いだろうな。
おっと、意識がそれちまった。まあ、ハルマンの事は良い。
「で、なんで王族がそんなところに?」
「政変だろうな。王侯貴族なんて年がら年中権力闘争やってるからな。それに負けたってことだろう」
「ふ~ん」
「そのあたりには興味がなさそうだな」
「あ、わかる?」
「ま、そこに住んでる奴全員が元貴族かどうかは置いといても、魔力持ちが要るってことは王侯貴族も混じってたかもってことだ」
ハルマンはあまりの俺の興味の無さに、無理やり話を終わらせようとしている。が、最後の言葉に引っ掛かった。
「魔力持ちと王侯貴族が関係あるのか?」
「なんだ?おめぇ魔力持ちなのにそんなことも知らねぇのか?」
ハルマンは素っ頓狂な声を上げる。少々呆れ気味のようだ。
え?なに。常識なの?
「お伽噺で聞いたことねぇのか?お前良い所のボンボンじゃねぇのかよ」
なぜボンボンじゃないと怒られる?
「いや、そういう話には疎くてな」
「両親は居なかったのか?寝かしつけは乳母か?話してくれるだろ!普通」
だからなぜそれを怒られる?
「いや、乳母は居ないな。まあ、ほら、俺寝つきが良いからさ」
「知らねぇよ。どういう理屈だ。まあ、知らねぇもんは仕方ねぇか。買われた俺でさえがお伽噺の一つや二つ聞いてるってのに……」
ハルマンは納得いかなそうにぶつくさ言っている。知らんがな。そんなもんWikiに載ってねぇよ。
「あ~。ずいぶん昔聞いた話だからな。俺もあんまり覚えてねぇ。まあ、かいつまんで言うとこうだな。
今から1000年以上前、今の王都から魔王の住む山を越えたあたりまでは天上の神々に支配された土地だったそうだ。」
「魔王!?」
は?いま。さらっと言ったけど。この世界やっぱり魔王居るの?なんで、Wikiに書いてないんだけど、魔王の事なんて。
「おいおい、そこからかよ。とんだボンボンだな。あ~。魔王が居るのはこっから西にあるデールのまだ先だな。この前……っつっても1年近くになるか。王宮騎士団が魔王討伐するって通っていっただろうが。お前知らなかったのか?」
「王宮騎士団が?この町を?」
「ああ、休憩と補給を兼ねてな。なんでも補給部隊としてキャラバンを引き連れてたらしいが、治安の悪いウルサンは通りたくねぇと商人たちが拒否したらしいからな」
どんだけ治安悪いんだよ。ってか、こいつら治安維持が仕事じゃなかったでしたっけ?
と思ってハルマンを見たら、にこやかに睨み返された。器用な奴だ。
「まあ、そのあとどうなったか話を聞かんな。もう1年近く経つしなぁ、全員殺されたかな」
何か話がそれてきたな。魔王も気になるが、まあ順番だ。
「それは良いからさ、お伽噺を頼む」
「そうだったな。まあ、何にせよ。昔は神々に支配されてたんだよ。神都として栄えてたのは、今の王都のあたりと、エンドゥのあたりだな」
ああ、そうだったな。エンドゥはエンリルの信仰で栄えてたんだっけ。王都のあたりにも神都があったってのは、なんかWikiで見た気がするな。ストーリー的にそんな話だった気がする。
「ある時、神都の外れの辺境伯ん所にとんでもない神童が生まれるんだな。当時の皇王はその神童を養子に迎えようと画策するんだが、それに失敗する。で、手に入らないならとその辺境伯一族もろとも抹殺しようと大軍勢を送るんだ」
「あ~。極端だな。手に入らないなら壊しちまうって判断が」
「まあ、王族ってもんはそんなもんだ。根本的に我儘なんだよ。皇王軍は辺境伯領地に攻め入って一族とその配下をことごとく殺していくんだが、神童の反撃を喰らう。そこから神童の快進撃が始まり最後は神都までたった一人で攻め込んできた」
なんだよその厨二展開。強すぎんだろ?サトシか?サトシなのか?俺が押し黙って聞いていると、ハルマンも興が載ってきたのか饒舌に身振り手振りを交えながら話始めようとする。
「いやいや、まあ落ち着いてくれ。そんな細かい描写は良いんだよ。だいたいの内容がわかれば」
「そうか?こっからが面白いところなんだがな」
ハルマンは随分残念そうに話しを続ける。
「まあ、その神童ってのが、皇王を倒し新たに王として立つんだな。で、その初代王がとんでもない魔力持ちで、王都を一人で作り上げたというわけだ」
「創造系のスキルか!」
「そう言うことだ。なんだ。知ってんじゃねぇか」
「いや、そう言うわけじゃないんだが」
「で、その王の血筋に魔力持ちが多く生まれるようになって今に至るってわけだ。王族以外にも魔力持ちはたまに出てくるがな。基本王族に魔力持ちが多いことは事実だ。だから荒野に住んでる棄民に魔力持ちが居ると『王侯貴族の末裔なんじゃないか』って噂がでるんだよ」
「ふ~ん。なるほどね。じゃあ、どちらの人買いにも魔力持ちの子供が居るってことか」
「いや、魔力持ちの子供は「雨女」が買うな」
「なんだ、「ブギーマン」は買わないのか?」
「買えない。ってのが正しいだろうな。「雨女」が先に買い占めちまうらしい」
「そんなことできるのか?」
「やってるからできるんだろうよ」
何か裏がありそうだな。直接調べてみるしかないか。
「で、どちらの人買いも、子供を買ってきてはある程度の年まで育ててから売り付けるってわけだ」
「労働力としてか?」
「まあ、そういう場合もあるがな」
「なんだよ。他もあるのかよ」
「下働きとして売られるならいい方だ。金持ちにして見りゃおもちゃと同じだからな。子供を買って、性的、肉体的に虐待したり、狩りを楽しむためのエサや的(マト)として使うことだってある。臓器売買用ってのもあったな」
はぁ?オンラインゲームの設定にしちゃエグすぎるだろ。
まあ、確かにオープンβテストのときに発禁になった理由がそのあたりだったようには思うが……。
リアルに作りすぎたせいで猟奇的な殺人行為や犯罪が可能って、普通開発段階でマズイって気付かないか?
「テンスもあんたも幸運だったってことか」
「まあ、そうとも言えるが、今言ったような非道な客に売るのは「ブギーマン」だ」
「「雨女」は非道じゃないと?」
「ああ、少なくとも人間扱いしてくれるな」
ふ~ん。義賊的な感じか。
「なるほど。人買いについては判ったんだが、あと魔力持ちについてなんだが」
「何が聞きたい?」
「この町に魔力持ちはどのくらい居る?」
ハルマンは軽く目を瞑りしばらく黙り込む。
なげーな。寝てんじゃねぇだろうな。そろそろ声かけたほうが良いか?と思った時口を開いた。
「この町には500人ってところだな」
「ご、ごひゃく!?」
「そうだな。いろいろ聞きたいことはあるが、まずは人買いについて教えてもらおうか」
「なんでそんなもんに興味を持つ?」
「単なる興味本位ってやつだが……」
途端にハルマンの目つきが鋭くなる。俺を値踏みしている目だな。
「なんだ?人買いは極秘事項なのか?」
「そう言うわけじゃねぇ。おめえが何を狙ってるのかが知りたくてな。まあ、知ったところで俺たちには止めるすべは無いがな」
「そんなたいそうなことするつもりはないよ。まあ、なんだ。言って見りゃ人探しだな」
「人探し?」
「ああ、それこそさっきの話だ。『この世界に生まれる前の記憶はあるか?』って質問をした奴を探してる」
「そういうことか。なるほどな」
ハルマンが視線を下げると、先ほどまでのとげとげしい雰囲気が消え去る。
「その話は誰から聞いた?」
「なんだ?やっぱり秘密なのか?秘密をばらした裏切り者は許さないってか?」
「そう焦るな。その話がいつ頃の事かを知りたいだけだ。確かに俺もその質問をされたことがある。が、それは俺が子供の頃だ。だからもう70年以上前だ」
ああ、そうか。テンスも結構歳行ってたもんな。当時年上だったって言ってたっけ?名前出したらテンス消されるかな?
「ちなみに、俺にその話を教えた奴の事チクったら、そいつ消される?」
「そんなことするわけねぇだろ!何の得がある?」
「ああ、そう。それなら良いや。聞いたのはテンスって奴からだ」
「農場主のか?」
「ああ、あれ?あいつ有名なの?」
「まあ、あいつは出世頭だったからな。ん?そう言えばヨウトを再建した奴らと揉めてたって聞いたが……おめえか」
「いや、俺じゃねぇよ。まあ、俺の知り合いだがよ」
「とんでもねぇのに手を出したもんだな。なんだ?あいつ死んだのか?」
「死んでねぇよ」
「なんだ。お前殺さなかったのか?えらく優しいじゃねぇか」
「俺をなんだと思ってんだよ。いや、まあいいや」
なんかサトシの行いを思い出したら、テンスの奴殺されてた方がよかったんじゃねぇかとすら思えてきた。まあ、屋敷も再建されたことだし良しとしよう。
「まあ、そのことは良いんだが、テンスの奴がねぇ。そうか。あいつも聞かれたんだな」
ん?含みがあるな。
「またか。あいつ「も」ってのはなんだ?」
「ああ、まあ隠しても仕方ねぇしな。テンスも俺も人買いの「雨女」に世話になってたんだよ」
「は?「雨女」に「世話になってた」?」
なんだ?情報多いな。どういうこと?
「そうだな。まず人買いの事を少し説明しておくか」
「ああ、そうしてくれ」
「ウルサンには2つの人買い組織、「雨女」と「ブギーマン」がある。どっちも表向きは孤児院だが、よそから人を買ってきては金持ちに売り付けてる。ウルサンの周辺には荒野が広がっててな、そこに小さい集落が点在してるんだ。雨季には多少草木も生えるから、狩りや農耕もできなくはないんだけどな。でも乾季になると人が住めるような状態じゃなくなる。そのあたりの集落の人間は食うや食わずの生活になるんだよ。そう言うところは口減らしで子供を売るんだよ。」
「食うに困って、口減らしに子供を売るってか。世知辛いねぇ」
「どこにでも転がってる話だよ。珍しくもねぇ」
「だいたい、なんでそんな所に住んでんだよ。ウルサンに来ればいいだろうに」
「まあ、事情があるんだろうな」
「事情?」
「そのあたりの住人は、もともと王都から流れてきたって噂だ」
「王都から?なんでまたそんな辺鄙なところに?」
「元貴族や王族って話だ。まあ、本人談ってんだから眉唾だがな」
「眉唾ねぇ」
こいつ日本人か。いや。こいつを育てた奴が日本人なのか?
ごく自然に「眉唾」の単語が出てきてる。
まあ、俺も最近ゲームをしてないから学部生から聞いた話だが、最近のオンラインゲームではプレーヤー同士の会話をAIがリアルタイム翻訳してくれるらしい。変換速度も速いうえにリップシンクまで正確なんで、相手と仲良くなって地元を聞くまで外国人だと気づかなかったと言っていた。まあ、そこから考えればハルマンの言葉も翻訳が掛かっている可能性もあるが……自動翻訳で「眉唾」と訳される可能性は低いだろうな。
おっと、意識がそれちまった。まあ、ハルマンの事は良い。
「で、なんで王族がそんなところに?」
「政変だろうな。王侯貴族なんて年がら年中権力闘争やってるからな。それに負けたってことだろう」
「ふ~ん」
「そのあたりには興味がなさそうだな」
「あ、わかる?」
「ま、そこに住んでる奴全員が元貴族かどうかは置いといても、魔力持ちが要るってことは王侯貴族も混じってたかもってことだ」
ハルマンはあまりの俺の興味の無さに、無理やり話を終わらせようとしている。が、最後の言葉に引っ掛かった。
「魔力持ちと王侯貴族が関係あるのか?」
「なんだ?おめぇ魔力持ちなのにそんなことも知らねぇのか?」
ハルマンは素っ頓狂な声を上げる。少々呆れ気味のようだ。
え?なに。常識なの?
「お伽噺で聞いたことねぇのか?お前良い所のボンボンじゃねぇのかよ」
なぜボンボンじゃないと怒られる?
「いや、そういう話には疎くてな」
「両親は居なかったのか?寝かしつけは乳母か?話してくれるだろ!普通」
だからなぜそれを怒られる?
「いや、乳母は居ないな。まあ、ほら、俺寝つきが良いからさ」
「知らねぇよ。どういう理屈だ。まあ、知らねぇもんは仕方ねぇか。買われた俺でさえがお伽噺の一つや二つ聞いてるってのに……」
ハルマンは納得いかなそうにぶつくさ言っている。知らんがな。そんなもんWikiに載ってねぇよ。
「あ~。ずいぶん昔聞いた話だからな。俺もあんまり覚えてねぇ。まあ、かいつまんで言うとこうだな。
今から1000年以上前、今の王都から魔王の住む山を越えたあたりまでは天上の神々に支配された土地だったそうだ。」
「魔王!?」
は?いま。さらっと言ったけど。この世界やっぱり魔王居るの?なんで、Wikiに書いてないんだけど、魔王の事なんて。
「おいおい、そこからかよ。とんだボンボンだな。あ~。魔王が居るのはこっから西にあるデールのまだ先だな。この前……っつっても1年近くになるか。王宮騎士団が魔王討伐するって通っていっただろうが。お前知らなかったのか?」
「王宮騎士団が?この町を?」
「ああ、休憩と補給を兼ねてな。なんでも補給部隊としてキャラバンを引き連れてたらしいが、治安の悪いウルサンは通りたくねぇと商人たちが拒否したらしいからな」
どんだけ治安悪いんだよ。ってか、こいつら治安維持が仕事じゃなかったでしたっけ?
と思ってハルマンを見たら、にこやかに睨み返された。器用な奴だ。
「まあ、そのあとどうなったか話を聞かんな。もう1年近く経つしなぁ、全員殺されたかな」
何か話がそれてきたな。魔王も気になるが、まあ順番だ。
「それは良いからさ、お伽噺を頼む」
「そうだったな。まあ、何にせよ。昔は神々に支配されてたんだよ。神都として栄えてたのは、今の王都のあたりと、エンドゥのあたりだな」
ああ、そうだったな。エンドゥはエンリルの信仰で栄えてたんだっけ。王都のあたりにも神都があったってのは、なんかWikiで見た気がするな。ストーリー的にそんな話だった気がする。
「ある時、神都の外れの辺境伯ん所にとんでもない神童が生まれるんだな。当時の皇王はその神童を養子に迎えようと画策するんだが、それに失敗する。で、手に入らないならとその辺境伯一族もろとも抹殺しようと大軍勢を送るんだ」
「あ~。極端だな。手に入らないなら壊しちまうって判断が」
「まあ、王族ってもんはそんなもんだ。根本的に我儘なんだよ。皇王軍は辺境伯領地に攻め入って一族とその配下をことごとく殺していくんだが、神童の反撃を喰らう。そこから神童の快進撃が始まり最後は神都までたった一人で攻め込んできた」
なんだよその厨二展開。強すぎんだろ?サトシか?サトシなのか?俺が押し黙って聞いていると、ハルマンも興が載ってきたのか饒舌に身振り手振りを交えながら話始めようとする。
「いやいや、まあ落ち着いてくれ。そんな細かい描写は良いんだよ。だいたいの内容がわかれば」
「そうか?こっからが面白いところなんだがな」
ハルマンは随分残念そうに話しを続ける。
「まあ、その神童ってのが、皇王を倒し新たに王として立つんだな。で、その初代王がとんでもない魔力持ちで、王都を一人で作り上げたというわけだ」
「創造系のスキルか!」
「そう言うことだ。なんだ。知ってんじゃねぇか」
「いや、そう言うわけじゃないんだが」
「で、その王の血筋に魔力持ちが多く生まれるようになって今に至るってわけだ。王族以外にも魔力持ちはたまに出てくるがな。基本王族に魔力持ちが多いことは事実だ。だから荒野に住んでる棄民に魔力持ちが居ると『王侯貴族の末裔なんじゃないか』って噂がでるんだよ」
「ふ~ん。なるほどね。じゃあ、どちらの人買いにも魔力持ちの子供が居るってことか」
「いや、魔力持ちの子供は「雨女」が買うな」
「なんだ、「ブギーマン」は買わないのか?」
「買えない。ってのが正しいだろうな。「雨女」が先に買い占めちまうらしい」
「そんなことできるのか?」
「やってるからできるんだろうよ」
何か裏がありそうだな。直接調べてみるしかないか。
「で、どちらの人買いも、子供を買ってきてはある程度の年まで育ててから売り付けるってわけだ」
「労働力としてか?」
「まあ、そういう場合もあるがな」
「なんだよ。他もあるのかよ」
「下働きとして売られるならいい方だ。金持ちにして見りゃおもちゃと同じだからな。子供を買って、性的、肉体的に虐待したり、狩りを楽しむためのエサや的(マト)として使うことだってある。臓器売買用ってのもあったな」
はぁ?オンラインゲームの設定にしちゃエグすぎるだろ。
まあ、確かにオープンβテストのときに発禁になった理由がそのあたりだったようには思うが……。
リアルに作りすぎたせいで猟奇的な殺人行為や犯罪が可能って、普通開発段階でマズイって気付かないか?
「テンスもあんたも幸運だったってことか」
「まあ、そうとも言えるが、今言ったような非道な客に売るのは「ブギーマン」だ」
「「雨女」は非道じゃないと?」
「ああ、少なくとも人間扱いしてくれるな」
ふ~ん。義賊的な感じか。
「なるほど。人買いについては判ったんだが、あと魔力持ちについてなんだが」
「何が聞きたい?」
「この町に魔力持ちはどのくらい居る?」
ハルマンは軽く目を瞑りしばらく黙り込む。
なげーな。寝てんじゃねぇだろうな。そろそろ声かけたほうが良いか?と思った時口を開いた。
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