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生方蒼甫の譚

建物探訪

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 鉱山から廃墟に向かう道はすでに荒れ果て所々崩れて通れなくなっていた。

 まあ、飛んでいくから特に問題ないんだけど。

 と言うことで、反重力ですいすいと廃墟に向かう。

 探索シークで探していたからたどり着けたけど、こんなに木々に覆われていては上空からですら気づかなかっただろう。


「これですか。」
「だな。ずいぶん荒れてるなぁ」
「いつ頃から放置されてるんでしょうね?」
「どうだろう。数年っていうレベルの話じゃない事は確かだな。」

 屋敷の前方には庭の痕跡がある。

 痕跡と言っても、噴水らしき石組と屋敷の敷地境界を示すフェンスがちらりと見える程度だ。ほとんどは背の高い木や蔦に覆われて見えなくなっている。
 以前は広々とした芝生がきれいな庭が広がってたんだろうな。知らんけど。

 現在の印象は、見事なまでの「幽霊屋敷」といった感じだ。

 まあ、俺はオカルト系の話が好きではないので、とっとと終わらせてしまいたい。
 日も高いことだし、手短に行こう。

「あのあたりが玄関だろう。さ、行くぞ。」
「ハイ。」
 3人で、玄関のあたりに降りてゆく。

「廃墟っすね。」
「廃墟だな。」
 見事な廃墟っぷりだ。ドアは朽ち果て、壁もほとんどの漆喰が剥がれ落ちていて、どこからでも建物の中に入れそうだ。

「これ、入った途端に崩れ落ちるってことないですかね?」
「ん~。なんでフラグ立てるようなこと言うかなぁ。」

 入っていい物なのか、正直悩む。が、そんな中ひとりの勇者が。

「早く終わらせよう。」
 アイがすたすたと中に入っていく。

 よっぽどレベル上げが堪えたんだろうな。一秒でも早く帰りたいと見える。

 まあ、ある意味頼もしい。


 アイの後ろを男二人がついて行く。

 玄関を入った先は、大きなエントランスホールになっていた。ザ・洋館という豪華な造りだ、たぶん、当時はね。


 中央には二階に上がる大きな階段があり、壁際にある踊り場を境に左右に分かれて二階に向かう構造になっている。
 踊り場には何やら大きな絵が飾ってあるが、何の絵なのかは暗くてよくわからない。
 今いる場所は吹き抜けになっていて、天井の中央には立派なシャンデリアの残骸らしきものがぶら下がっている。

 床にガラスが散らばっているところを見ると、経年変化で落ちて割れたんだろうな。


 さあて、どこから調べたもんかね。正直見当もつかない。

「まずは、手当たり次第部屋らしきところに入ってみますか。」
「そうだな。それが良い。」
「手分けしますか?」
「どうだろうな。それでもいいとは思うが……アイはどうする?」
「アタシはサトシと一緒に行く。」
 いい心がけだ。しっかり監視してくれ。

 って、おや?さっきは意気揚々と入っていったのに
「どうした?アイ。なんか震えてないか?」
「うるさい!」
 何だろう。まあいいか。

「じゃあ、二手に分かれて調べようか。俺は二階を調べるよ。お前たちは1階を頼む。」
「わかりました。じゃあ、何かあったら大声で知らせますね。」

「あ~。というか、出来ればこれで頼みたい。」
 一応ゲームだからな。ユーザー同士のチャットが装備されている。神経節接続されている場合は、ほぼ念話になるが。
『サトシ、聞こえるだろ?』
『おお!凄いっすね。これも魔法っすか』
 いい反応だ。ちょっとうれしいな。
『便利だろ?これで頼む。アイも聞こえるよな』
『あんたの声が頭に響くのキモイ』
『くぅ~!!』
『だから!キモイ!!』
『え~と。ルークスさん。自重してください。』
 自重とはこれ如何に。
「オホン。と、いうわけだ。じゃ、俺は二階に行ってくるんでよろしく。なんか見つけたら連絡くれ。」
『わかりました!』
 使いたがりだな。まあ、気持ちはわかるよ。

 ホール中央の階段に向かう。床も所々抜け落ちていて危なかしいったらありゃしない。この様子だと、階段も同じだな。

 なので、階段は使わず、反重力で上がって行く。
 取り敢えず階段中央の踊り場に降り立つ。踊り場からは壁沿い二方向に階段が伸びている。どちらの階段も登り切った先にドアがある。
 さて、どちらの部屋から調べるかな。

 とぼんやり考えながら視線を移すと、背後の絵画が目に入る。
 エントランスから見たときは、暗くて何の絵かわからなかったが、ここで見ると人物画であることが分かった。

 あれ?これ。だれだっけ?見たことある気がするな。
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