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生方蒼甫の譚
兆し
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木の板ねぇ。なんか引っ掛かるなぁ。なんだっけ?
「ちなみに、そのご先祖様が住んでいたって言う廃屋に心当たりは?」
「それが、これと言ってないんですよ。歴代当主は夭逝しておりますし。母や祖母は存命ですが、そう言った昔のことまでは……」
「なるほど。あ、そういえば、町の政についても領主様直々に取り仕切られておいでで?」
まあ、あんまりやってないようなことは聞いてるんだけどさ、結構意地悪な質問して恐縮ですけどね。
やっぱりギルマスからすげー睨まれる。NPCよくできてるよな。ホントに。
「こちらもお恥ずかしい話で、祖父の代より仕える者たちに殆ど任せっきりになっているのですよ。」
「そうでしたか。ちなみにその方は今どちらに?」
すると領主様は傍らに居た従者に目配せする。すると、その従者は一礼して部屋を後にした。
おそらくその者を呼びに行かせたんだろう。
いやいや、そんなに睨むなよギルマス。情報収集では鉄則だろ?相手の嫌がる質問・回答をするってのは。
RPGでも王様とかから頼みごとをされたら、一回目は断るのが礼儀じゃん?
あれ?そう言う事じゃないんだっけ。
さて、ギルマスとにらめっこしてたら、何やら壮年……というか老年に片足突っ込んでそうな従者が現れた。従者と言うには風格がありすぎる。
ある意味こっちが領主様と言われれば信じちまうな。
「キース様お呼びでしょうか?」
「クロード。忙しいところ済まないが、鉱山の依頼を受けてくださった冒険者のルークスさんが聞きたいことがあるそうなんだ」
「何なりと。」
わぉ。できる執事って感じっすな。
「では、申し訳ありません。いくつかお話を聞かせてください。」
「どうぞ。」
「領主様が以前町で酔っぱらいに絡まれた件は御存じですか?」
「酔っぱらいですか。いつ頃の事でしょう?」
俺は領主様に視線を送る。すると、領主様が続けてくれる。
「父上が危篤だった頃の事だよ。叔父さんの屋敷から帰る時に老人に呼び止められて。」
「はて。そのような事がありましたでしょうか。確かにあの日は私めも同行させていただきましたが、特にそのような事は記憶しておりませんが。」
クロードは見た感じ、記憶力が悪そうな感じはしない。「そんなことまで?」というエピソードまで覚えてそうな印象の人物だ。
まあ、人を見た目だけで判断するのは良くないが。
「そうですか。ちなみに、領主様が以前お住まいになっていたお屋敷や別荘で、すでに廃墟となっているものはありますか?」
クロードは質問の意味を探るような目でこちらを見た後、俯きがちに考えこむ。
「わたくしがお仕えする以前から、ご当主はこちらのお屋敷にお住まいですので、そのような建物に心当たりは……」
と、言いかけたところでクロードが再度考え込む。
「正確な話では御座いませんので、誠に恐縮なのですが……」
と前置きしたのち続ける。
「私が子供の頃、私の母が夜伽話として領主様のすばらしさを説いていたのですが。」
すげーな。従者の英才教育か?
「その際に、鉱山を開いた初代の領主様は鉱山近くに屋敷を立てた……と話していたように記憶しております。
しかし、今となってはあのあたりに建物らしきものは見当たりませんね。」
そうか、鉱山のあたりにねぇ。調べてみる価値はありそうだな。
「ちなみに、そのご先祖様が住んでいたって言う廃屋に心当たりは?」
「それが、これと言ってないんですよ。歴代当主は夭逝しておりますし。母や祖母は存命ですが、そう言った昔のことまでは……」
「なるほど。あ、そういえば、町の政についても領主様直々に取り仕切られておいでで?」
まあ、あんまりやってないようなことは聞いてるんだけどさ、結構意地悪な質問して恐縮ですけどね。
やっぱりギルマスからすげー睨まれる。NPCよくできてるよな。ホントに。
「こちらもお恥ずかしい話で、祖父の代より仕える者たちに殆ど任せっきりになっているのですよ。」
「そうでしたか。ちなみにその方は今どちらに?」
すると領主様は傍らに居た従者に目配せする。すると、その従者は一礼して部屋を後にした。
おそらくその者を呼びに行かせたんだろう。
いやいや、そんなに睨むなよギルマス。情報収集では鉄則だろ?相手の嫌がる質問・回答をするってのは。
RPGでも王様とかから頼みごとをされたら、一回目は断るのが礼儀じゃん?
あれ?そう言う事じゃないんだっけ。
さて、ギルマスとにらめっこしてたら、何やら壮年……というか老年に片足突っ込んでそうな従者が現れた。従者と言うには風格がありすぎる。
ある意味こっちが領主様と言われれば信じちまうな。
「キース様お呼びでしょうか?」
「クロード。忙しいところ済まないが、鉱山の依頼を受けてくださった冒険者のルークスさんが聞きたいことがあるそうなんだ」
「何なりと。」
わぉ。できる執事って感じっすな。
「では、申し訳ありません。いくつかお話を聞かせてください。」
「どうぞ。」
「領主様が以前町で酔っぱらいに絡まれた件は御存じですか?」
「酔っぱらいですか。いつ頃の事でしょう?」
俺は領主様に視線を送る。すると、領主様が続けてくれる。
「父上が危篤だった頃の事だよ。叔父さんの屋敷から帰る時に老人に呼び止められて。」
「はて。そのような事がありましたでしょうか。確かにあの日は私めも同行させていただきましたが、特にそのような事は記憶しておりませんが。」
クロードは見た感じ、記憶力が悪そうな感じはしない。「そんなことまで?」というエピソードまで覚えてそうな印象の人物だ。
まあ、人を見た目だけで判断するのは良くないが。
「そうですか。ちなみに、領主様が以前お住まいになっていたお屋敷や別荘で、すでに廃墟となっているものはありますか?」
クロードは質問の意味を探るような目でこちらを見た後、俯きがちに考えこむ。
「わたくしがお仕えする以前から、ご当主はこちらのお屋敷にお住まいですので、そのような建物に心当たりは……」
と、言いかけたところでクロードが再度考え込む。
「正確な話では御座いませんので、誠に恐縮なのですが……」
と前置きしたのち続ける。
「私が子供の頃、私の母が夜伽話として領主様のすばらしさを説いていたのですが。」
すげーな。従者の英才教育か?
「その際に、鉱山を開いた初代の領主様は鉱山近くに屋敷を立てた……と話していたように記憶しております。
しかし、今となってはあのあたりに建物らしきものは見当たりませんね。」
そうか、鉱山のあたりにねぇ。調べてみる価値はありそうだな。
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