94 / 321
生方蒼甫の譚
接触
しおりを挟む
ああ、入ってしまった。これがVRMMORPGってやつか。正直RPGなんで小学校以来じゃなかろうか。
だが、入ってすぐに目の前に広がる世界に圧倒された。
神経節接続ユニットの効果とは言え、これはとんでもないな。
まさに現実。CGと言われても信じられない。
ただのVRゴーグルでのログインなら、現実世界との違いを感じることが出来るだろうが、直接脳に信号を送ると言うことがここまで違うとは……
メーカーが神経節接続ユニットにこだわった理由が理解できた。
完全に別次元だった。
目の前に広がる世界は大気の揺らぎすら見えるほど緻密だ。
風を肌で感じることが出来るし、手には杖の重さもずしりと響く。
前に歩き出せば、足の下に舗装されていない凹凸の激しい地面を感じるし、仕立ての悪い下着の擦れる感覚まである。
これが仮想現実だと気づけと言う方が無理だ。
始めこそ、
「1000倍なんて脳に負担がかかる」
とか、
「ゲームして遊んでると思われると嫌だ」
とか考えていたが、
この世界に放り出されて、今は不思議なほどの解放感と、魔法と暴力の世界に居るという高揚感に包まれている。
やばい。
これ楽しい。
何もやってないけど、チョー楽しい。
……
いかんいかん。仕事だ。仕事。そう、研究である。
というわけで、のんびりRPGを楽しんでいるわけにはいかないので、能力値はいじらせてもらった、ゲームマスターだもん。えへ。
やっぱりある程度はカンストしときたいよね。
弱いと舐められるし。
というわけで、能力値は基本FFhです。255に設定させてもらいましました。
いやぁ。強くてごめん。
さて、サトシを探しに行くかな。ゲームマスターと言えば深紅のローブと相場は決まっている。
キャラメイクもできたが、あんまり男前にすると……ねぇ。なんか、ちょっと恥ずかしいし。
魔導士なのに、ガチムチスキンヘッドにしました。えへ。
さて、サトシを探すか。
まあ、さっきアイのログを確認したから、行動筒抜けなんですよね。
あいつ従業員探してるらしい。農業やるって……、まあ、頑張ってほしいもんです。
で、商業ギルドに従業員募集依頼出してるので、応募することにした。
俺の名前は、ルークスとした。まあ、たいした意味は無い。
さて、商業ギルドに向かおうか。
「ようこそ商業ギルドへ。」
「すまないが、従業員募集依頼が出てると聞いたんだが。」
「はい。いくつか出ておりますが、どちらに応募なさいますか?」
「何がある?」
「そうですね。お客様ですと酒場の用心棒ですとか、借金回収人、宝石商の金庫番などがございますが……」
「お前、俺の顔見て仕事勧めてない?」
「いえいえ、今出ている仕事がこのようなものが多くありますので。」
「ホントに?農業関係はない?」
「農業ですか?え~と。お花屋……は無いですね。(笑)」
いや、鼻で笑われたんだけど。どういうこと?ってか、定型文じゃないのこういうセリフ。すげーなゲームAI。ここまで進化してたのか。
サトシ……勝てるのか?
「農業関係の従業員募集があるだろうが!」
「ああ、一件ございます。でも……ねぇ。」
「ねぇ、じゃねぇよ。応募するから。な。」
「はい。承知しました。」
なんだよ。普通に会話できるじゃないかAIなのに。
というより、結構楽しいな。これ。仕事なのを忘れそうだ。
ギルドの受付嬢に案内されて、二階の商談スペースで待たされる。多少審査があるようだ。
「こちらの書類にサインをお願いします。依頼主がいらっしゃった場合の連絡先を……」
ん?急に動きが止まったな。
「……いま、依頼主がお越しになりました。今しばらくこちらでお待ちください。」
なんだよ。エスパーか?感じるのか?人類の革新か?
ってのは冗談で、このあたりがゲーム用AIらしいところだな。近くにサトシたちが来たんだろう。
というわけで、しばらくここでサトシが来るのを待つことにする。
椅子に座って、周囲を見回すと、やはりAIだなぁという動きをするNPCが多い。何か商談をしているようだが、動きがぎこちない。いくつかのルーチンを組み合わせて人間らしく動かしているだけだ。
だが、俺がもし、これをゲームだと知らなければ、NPCだと気づけるだろうか?正直難しそうだな。
そんなことを考えていると、目の前の階段をサトシが上がってきた。
さて、声でもかけるか。
見当はずれの場所を探すサトシの肩を軽く叩く
「どうも、ルークスです。」
「応募ありがとうございます!」
そう言いながらサトシが振り返る。それに対して俺はさわやかな微笑みで返す。
「なんでだよ!!」
なにがだよ!
だが、入ってすぐに目の前に広がる世界に圧倒された。
神経節接続ユニットの効果とは言え、これはとんでもないな。
まさに現実。CGと言われても信じられない。
ただのVRゴーグルでのログインなら、現実世界との違いを感じることが出来るだろうが、直接脳に信号を送ると言うことがここまで違うとは……
メーカーが神経節接続ユニットにこだわった理由が理解できた。
完全に別次元だった。
目の前に広がる世界は大気の揺らぎすら見えるほど緻密だ。
風を肌で感じることが出来るし、手には杖の重さもずしりと響く。
前に歩き出せば、足の下に舗装されていない凹凸の激しい地面を感じるし、仕立ての悪い下着の擦れる感覚まである。
これが仮想現実だと気づけと言う方が無理だ。
始めこそ、
「1000倍なんて脳に負担がかかる」
とか、
「ゲームして遊んでると思われると嫌だ」
とか考えていたが、
この世界に放り出されて、今は不思議なほどの解放感と、魔法と暴力の世界に居るという高揚感に包まれている。
やばい。
これ楽しい。
何もやってないけど、チョー楽しい。
……
いかんいかん。仕事だ。仕事。そう、研究である。
というわけで、のんびりRPGを楽しんでいるわけにはいかないので、能力値はいじらせてもらった、ゲームマスターだもん。えへ。
やっぱりある程度はカンストしときたいよね。
弱いと舐められるし。
というわけで、能力値は基本FFhです。255に設定させてもらいましました。
いやぁ。強くてごめん。
さて、サトシを探しに行くかな。ゲームマスターと言えば深紅のローブと相場は決まっている。
キャラメイクもできたが、あんまり男前にすると……ねぇ。なんか、ちょっと恥ずかしいし。
魔導士なのに、ガチムチスキンヘッドにしました。えへ。
さて、サトシを探すか。
まあ、さっきアイのログを確認したから、行動筒抜けなんですよね。
あいつ従業員探してるらしい。農業やるって……、まあ、頑張ってほしいもんです。
で、商業ギルドに従業員募集依頼出してるので、応募することにした。
俺の名前は、ルークスとした。まあ、たいした意味は無い。
さて、商業ギルドに向かおうか。
「ようこそ商業ギルドへ。」
「すまないが、従業員募集依頼が出てると聞いたんだが。」
「はい。いくつか出ておりますが、どちらに応募なさいますか?」
「何がある?」
「そうですね。お客様ですと酒場の用心棒ですとか、借金回収人、宝石商の金庫番などがございますが……」
「お前、俺の顔見て仕事勧めてない?」
「いえいえ、今出ている仕事がこのようなものが多くありますので。」
「ホントに?農業関係はない?」
「農業ですか?え~と。お花屋……は無いですね。(笑)」
いや、鼻で笑われたんだけど。どういうこと?ってか、定型文じゃないのこういうセリフ。すげーなゲームAI。ここまで進化してたのか。
サトシ……勝てるのか?
「農業関係の従業員募集があるだろうが!」
「ああ、一件ございます。でも……ねぇ。」
「ねぇ、じゃねぇよ。応募するから。な。」
「はい。承知しました。」
なんだよ。普通に会話できるじゃないかAIなのに。
というより、結構楽しいな。これ。仕事なのを忘れそうだ。
ギルドの受付嬢に案内されて、二階の商談スペースで待たされる。多少審査があるようだ。
「こちらの書類にサインをお願いします。依頼主がいらっしゃった場合の連絡先を……」
ん?急に動きが止まったな。
「……いま、依頼主がお越しになりました。今しばらくこちらでお待ちください。」
なんだよ。エスパーか?感じるのか?人類の革新か?
ってのは冗談で、このあたりがゲーム用AIらしいところだな。近くにサトシたちが来たんだろう。
というわけで、しばらくここでサトシが来るのを待つことにする。
椅子に座って、周囲を見回すと、やはりAIだなぁという動きをするNPCが多い。何か商談をしているようだが、動きがぎこちない。いくつかのルーチンを組み合わせて人間らしく動かしているだけだ。
だが、俺がもし、これをゲームだと知らなければ、NPCだと気づけるだろうか?正直難しそうだな。
そんなことを考えていると、目の前の階段をサトシが上がってきた。
さて、声でもかけるか。
見当はずれの場所を探すサトシの肩を軽く叩く
「どうも、ルークスです。」
「応募ありがとうございます!」
そう言いながらサトシが振り返る。それに対して俺はさわやかな微笑みで返す。
「なんでだよ!!」
なにがだよ!
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
戦国の鍛冶師
和蔵(わくら)
ファンタジー
戦国の時代、摂津と堺の国境に鍛冶師達が住んでいたのだ。
「来一族」の鍛冶師であり一族の直系の1人、来好成は現一族党首の次男坊だった。
刀鍛冶・鉄砲鍛冶と学び一人前の腕を有していた。そんな来好成は、織田家の本願寺攻めの
最中に消息を絶つのだった!そうして気が付くと、そこは見た事も無い不思議な世界であった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ダンジョンのコンサルタント【完】
流水斎
ファンタジー
ダンジョンの建設が身近に成ったダンジョニア大陸。
そこには他の大陸には無い、一風変わったモノも数多く存在する。
例えば遠方に居る知性あるモンスターを召喚し、研究資料や護衛用として契約すること。
あるいは近場に居る周辺のモンスターを召喚し、街に向かわせず治安を守る一助とすること。
そしてそれらを組み合わせて、特殊素材を用意、生産物として販売することだ。
そんな中でも物語の種と言う物は無数に存在する。
例えばそう……ダンジョン運営のコンサルタントなどがそうだろう。
これは一人のコンサルが、かつての仲間とダンジョン経営に関わる物語である。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる