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サトシの譚

かくれんぼ

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「デュラハン Lv88 HP:172862/172862 ATK:15891 DEF:18254 吸収:火 耐性:水 土 風 光 闇」

「無理ですよ。これ。」

「まじでか。試すまでもなくってか?」
「試してみましょうか?、いや、無理でしょ。まあ、やってみましょう。「ライトボール」」

 ライトボールがルークスの横を通り過ぎデュラハンに全弾命中する。

「うわぁ」
 サトシの諦めにもともため息ともつかない言葉が漏れる。

「どのくらいダメージ与えられた?」
「1です。」

「は?1?で、HPは?」

「17万」

「いや、馬鹿にしてんのか?物理攻撃は?」
「じゃあ、試してみますか?ちょっとどいてください。」
 ひらりと身をかわしたルークスの陰からサトシが突きを放つ。

 キイィーーーン。
 金属音が響き、サトシの手にはしびれが残るほどの衝撃があった。

「で、どれだけだ?」

「0です。」

「マジかぁ~。
 こりゃ旗色悪いな。ちょっと退くか。徐々に後退するからお前ら距離取れ。」

「わかりました。」
 サトシとアイは、ルークスから距離を取り後方に退避する。ルークスは押して来るデュラハンの攻撃を受けながら、じりじりと後退してゆく。
 10mほど後退したところで、ルークスがサトシの方を見る。その様子にサトシは行動加速ヘイストをかけながらルークスの近くまで戻る。
「おい、あいつ俺に集中して横穴には意識が向いて無さそうだ。いまひとつ素通りしてた。お前らは横穴に身を隠しておけ、俺は後からこいつを飛び越えて転移する。転移できそうな所にマークつけといてくれ。」
「わかりました。」
 サトシはそう言うと、素早くアイの元に駆け寄り次の横穴を探す。
 暗がりの中に、腰高の横穴が開いている。サトシは「探索(シーク)」をかけ安全を確認すると中に滑り込む。
 息をひそめて、しばらく待っていると、サトシたちの目の前をデュラハンに攻撃されながらルークスが後退し通過してゆく。ルークスたちが遠ざかったことを確認して、二人は横穴から這い出す。
 サトシは足元に転移用のマークを付けると、合図としてライトボールをデュラハンに打ち込む。

 しばらくすると、マークの位置に転移の魔法陣が広がり、ルークスが現れる。

「いやはや。当たらないと分かってても、打ち込まれ続けるのは精神衛生上よくないな。」
「あれはヤバいっすね。これ死にイベントってことですね?」
「やっぱりゲーム脳だな。こんなところで死んでも、どうなるもんでもなかろう。」
「早くしないと、あいつが戻ってくるよ。」
「ああ、そうだな。急ごう。」
 3人は足早に奥へと進む。
 しばらく歩くと、分かれ道に出る。ギルドで写したマップが正しいとするなら、この分岐はいずれ合流するはずだ。サトシは「探索(シーク)」でこのループ状になっている坑道の安全を確認する。
 すると、ループ状の坑道には二匹の魔獣が居るようだった。二匹は坑道ををぐるぐると周回するように動いていた。

「侵入者の排除か?」
「またデュラハンですかね?」
 一匹は、右の分岐路を奥へと進んでいるようだった。もう一匹は奥から左の分岐路をこちらに向かって進んできている。
「奴だと厄介だな……

 でも、この動き方なら、おんなじ方向に回ったら、出会わずに進めるんじゃね?」

「おお、ですね。それでいきますか。」

「そうだな。いくら俺には攻撃が当たらんとは言え、お前らに被害が及ばんとは限らんもんな。」

「一応、両方ともステータス確認しましょうか。」
「サトシ、こんな遠くからでも確認できるのか?」
「もう少し近づけばイケそうです。ちょっとやってみます。」
 
「サイクロプス Lv90 HP:258261/258261 ATK:18693 DEF:14254 吸収:火 水 土 風 耐性:光 闇」
「ミノタウロス Lv87 HP:228362/228362 ATK:18911 DEF:12548 吸収:光 闇 耐性:火 水 土 風 」

「あはははは。」
 サトシは乾いた笑い声をあげる。
「どうした?」
「え~っと。サイクロプスとミノタウロスです。」
「ああ、なんか聞かなくても強さは判る気がするな。でも、一応聞いとくか。」
「両方HP20万越えです。魔法も耐性と吸収持ってますね。」
「よし。スルー決定!行くぞ。」
 ルークスは諦め切った笑顔で二人に告げると、前後に控えるサイクロプスとミノタウロスの距離を測りながら、慎重に進み始める。

 サイクロプス、ミノタウロスともに変則的な動きは無く、3人は安全にループ状になった分岐路を通過することが出来た。その先は脇道こそあるが、広く進みやすい行動だった。
 脇道を探索するが、特にドロップアイテムも魔獣もなく、そのままメインの坑道をまっすぐ進む。

 しばらく進むと、岩肌の変化に気づく。それまでは柔らかそうで、採掘するには楽だろうが簡単に崩落しそうな危なっかしい岩肌だった。が、坑道の奥に近づくと急にしっかりとした硬そうな岩肌になった。明らかにここから地層が変わっているようだった。

 坑道の最奥と思われるところにたどり着くと、掘りっぱなしの穴がぽっかりと口を開けていた。大きさは人一人がやっと通れるほどの大きさだったが、穴の先は不自然に明るかった。

 サトシたちは念のため「探索シーク」をかけた上でその先へ進む。

 穴を潜り抜けると、そこには王宮と見まごうばかりの立派な廊下があった。
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