41 / 321
サトシの譚
自主トレ
しおりを挟む
サトシは横になりながら、先ほどエリザベートから習った魔術錬成の説明を思い返していた。
横ではアイが寝息を立てており、その傍らには「ヌー」と呼ばれる茶色の毬の様な物が居る。どうやら生き物らしいがよくわからない。先程ステータスを確認してみたが
『ヌー』
としか表示されない。詳細情報を要求しても同じだった。少々気味が悪いが、アイに懐いている上に、エリザベートの物らしいので不信感を抱きながらもそのままにしている。
サトシは、「ヌー」の事を考えないようにするために、「サトシが考える最強の魔法陣」を作ることにした。
『さっき見せてもらったのは六芒星と梵字だったからなぁ。六芒星と七芒星、八芒星、九芒星と重ねちゃおうかなぁ。ギリシャ文字もいいけど、ヒエログリフとかでもカッコいいかもなぁ。』
などとにやにやしながら考えている。「ヒエログリフ」と思いついたときに、
『そういえばさっきの梵字はどんな意味だったんだろう。ヒエログリフにするにしても意味も大事だよなぁ』
流石に適当に作って作動するほど甘くないとは思うが、残念ながらサトシに梵字やヒエログリフの知識は乏しい。せいぜい「形を見たことがある」程度のものだった。
『Wikiでも見れれば助かるんだけどなぁ』
そう考えたときだった、目の前に見慣れたブラウザのウィンドウが開く。
「!!」
サトシは喜びに目を見開くが、すぐに失望する。
「403 Forbidden」
『見れるわけないよなぁ。当然。』
子供のころから調べ物はインターネット任せだったサトシには酷な状況だ。魔法陣の開発は早々に諦めた。
『そうなると、まずは属性適合かぁ』
今のサトシに必要なのは、まずもって属性適合だった。これが無ければ魔力の利用もままならない。目の前の役に立たないブラウザを閉じると、自分のステータスを表示した。
スキルの欄には、グレーアウトした過去のスキルと、新しい『観念動力(テレキネシス)』がある。取り敢えず、観念動力について確認してみることにした。すると、
『観念動力:精神力(魔力)を消費して対象を変化させることができる。』
『漠然としてるなぁ。「対象を変化させることができる」かぁ。確かに結晶を変化させたし。ん?』
サトシは頭の中で何度も『魔力を使って対象を変化させる』という言葉を繰り返す。
『これ、魔法と一緒じゃない?』
サトシはやおら起き上がり、台所の方に向かう。竈には今朝使った薪が数本燃え残っていた。竈の焚口前にしゃがみ込むと、燃え残りの薪に手をかざしながらサトシは目の前の薪が一気に燃え上がるさまをイメージする。しかし、何も起こらない。
数分イメージをしてみるが、やはり燃え出す様子はない。
そこで、体中に魔力を巡らせる。そして、足から地面の魔力を吸い上げ、掌から巻きに向かって放出してみる。すると。
ボワっ!
薪が一気に燃え始める。
「!」
サトシは自分でやっておきながら、驚きのあまり思考停止する。
テッテレー!
メロディーが頭の中に鳴り響く。
「属性適合が発現しました。」
頭の中にメッセージが流れたところで、ようやく思考が追い付いた。
「やったのか?ステータス!」
アイが眠っていることも忘れて大声で独り言を言い始める。
『属性適合 魔術 火:Lv1 無:Lv1』
それを見て、サトシは目を瞑って天を仰ぐ。両手を高々と掲げながら頭の中で喜びを爆発させる。
『よっしゃきたぁ!!!』
一応アイが寝ていることは覚えていた。が、喜びのあまり体が勝手に動き出す。竈の前で一人歓喜の舞を踊り続けた。結局サトシはこの夜一睡もできなかった。
横ではアイが寝息を立てており、その傍らには「ヌー」と呼ばれる茶色の毬の様な物が居る。どうやら生き物らしいがよくわからない。先程ステータスを確認してみたが
『ヌー』
としか表示されない。詳細情報を要求しても同じだった。少々気味が悪いが、アイに懐いている上に、エリザベートの物らしいので不信感を抱きながらもそのままにしている。
サトシは、「ヌー」の事を考えないようにするために、「サトシが考える最強の魔法陣」を作ることにした。
『さっき見せてもらったのは六芒星と梵字だったからなぁ。六芒星と七芒星、八芒星、九芒星と重ねちゃおうかなぁ。ギリシャ文字もいいけど、ヒエログリフとかでもカッコいいかもなぁ。』
などとにやにやしながら考えている。「ヒエログリフ」と思いついたときに、
『そういえばさっきの梵字はどんな意味だったんだろう。ヒエログリフにするにしても意味も大事だよなぁ』
流石に適当に作って作動するほど甘くないとは思うが、残念ながらサトシに梵字やヒエログリフの知識は乏しい。せいぜい「形を見たことがある」程度のものだった。
『Wikiでも見れれば助かるんだけどなぁ』
そう考えたときだった、目の前に見慣れたブラウザのウィンドウが開く。
「!!」
サトシは喜びに目を見開くが、すぐに失望する。
「403 Forbidden」
『見れるわけないよなぁ。当然。』
子供のころから調べ物はインターネット任せだったサトシには酷な状況だ。魔法陣の開発は早々に諦めた。
『そうなると、まずは属性適合かぁ』
今のサトシに必要なのは、まずもって属性適合だった。これが無ければ魔力の利用もままならない。目の前の役に立たないブラウザを閉じると、自分のステータスを表示した。
スキルの欄には、グレーアウトした過去のスキルと、新しい『観念動力(テレキネシス)』がある。取り敢えず、観念動力について確認してみることにした。すると、
『観念動力:精神力(魔力)を消費して対象を変化させることができる。』
『漠然としてるなぁ。「対象を変化させることができる」かぁ。確かに結晶を変化させたし。ん?』
サトシは頭の中で何度も『魔力を使って対象を変化させる』という言葉を繰り返す。
『これ、魔法と一緒じゃない?』
サトシはやおら起き上がり、台所の方に向かう。竈には今朝使った薪が数本燃え残っていた。竈の焚口前にしゃがみ込むと、燃え残りの薪に手をかざしながらサトシは目の前の薪が一気に燃え上がるさまをイメージする。しかし、何も起こらない。
数分イメージをしてみるが、やはり燃え出す様子はない。
そこで、体中に魔力を巡らせる。そして、足から地面の魔力を吸い上げ、掌から巻きに向かって放出してみる。すると。
ボワっ!
薪が一気に燃え始める。
「!」
サトシは自分でやっておきながら、驚きのあまり思考停止する。
テッテレー!
メロディーが頭の中に鳴り響く。
「属性適合が発現しました。」
頭の中にメッセージが流れたところで、ようやく思考が追い付いた。
「やったのか?ステータス!」
アイが眠っていることも忘れて大声で独り言を言い始める。
『属性適合 魔術 火:Lv1 無:Lv1』
それを見て、サトシは目を瞑って天を仰ぐ。両手を高々と掲げながら頭の中で喜びを爆発させる。
『よっしゃきたぁ!!!』
一応アイが寝ていることは覚えていた。が、喜びのあまり体が勝手に動き出す。竈の前で一人歓喜の舞を踊り続けた。結局サトシはこの夜一睡もできなかった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~
草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★
男性向けHOTランキングトップ10入り感謝!
王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。
だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。
周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。
そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。
しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。
そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。
しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。
あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。
自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる