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カールの譚
魔王と親父
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鍛冶屋としての力量に期待を示してもらってるのはありがたいが、それ以前に、なぜお前はそうも馴れ馴れしい?
と、魔王に直接聞いてよい物かどうかを悩みながら、玉鋼を掌の上で転がしている。
気さくに話してはいるが、ストレートに聞いて、今度は本気で殺されたんじゃたまったもんじゃない。
「で、ちょっと聞きたいんだが?」
「なんだ?」
そうだな。まずは何から?疑問だらけで、どこから聞いていい物やらさっぱりわからん。
「お前、何者だ?」
「ほう。そこからか。」
「まずは、そこを確認したい。魔王ってのは何だ?」
「だから、魔王じゃねぇっつってんだろ。俺は人間だ。」
「そんなでたらめな人間が居るかよ。」
「自己紹介乙」
「またそれか。なんだよそれ?」
「まあいい。『我思う故に我アリ』ってな、お前が信じるも信じないも、俺は人間だ。他人よりちょっと魔力が多い。至って普通の人間だよ。」
「至って普通の人間が、2万人もの敵軍を一人で滅ぼせるのか?」
「お前もその気になりゃできるだろ。少なくとも、今の実力なら問題ないと思うぜ。」
「はぐらかされてもなぁ。じゃあ、人間だとしてもよ。一体何なんだこの町は?そういう意味で何もんなんだ?俺の親父とはどんな関係だ?」
「まあ、それを説明するには、ちょっと長くなるな。」
フリードリヒは、俺についてくるように促すと、製鉄所からでて、電車の駅へと向かう。駅からは町が一望できる。赤や黄色の光がそこかしこに瞬き、おもちゃ箱をひっくり返したような鮮やかな町だ。昼間に見ても煌びやかなのがわかる。
「お前は、この町を見てどう思った?」
「ああ、すげーなと」
「それだけか?」
「あぁ、あと、ちょっと懐かしい感じはしたな。」
フリードリヒは伏し目がちになり、少し考えこんでいるようだった。わずかな沈黙の後口を開いた。
「この世界の生き物には2種類いるのは判るか?」
「ん?魔力の有る無しの事を言ってるのか?」
「まあ、そうだなぁ。そういう見方もできるな。厳密には違うんだが、今はその区別でもいい。それじゃあ「魔力持ち」と「無能者」に分けてみようか。」
「「無能者」とは随分だな。」
「言い方だけの問題だ、気にするな。」
「ああ、で?」
「「魔力持ち」の特徴は何かわかるか?」
「スキルや魔術が使えることかな。あと、こないだエリザから聞いたけど、単純に力が強いとか、色んな能力が高いとか?」
「スキルや魔術、あと能力についてもそういう場合が多いってだけだ。「無能者」と変わらないケースも結構ある。実際、スキルや魔術についても、持ってはいるが、役に立たないスキルだったり、魔術に適性が無かったりするやつも居るからな。ぱっと見で「無能者」扱いされてることもあるってことだ。」
「じゃあ、あんまり明確な違いがないのか?」
「いや、はっきりした違いがある。」
「なんだよ?勿体つけるなよ!」
「そうだな。はっきりしてるのは、魂の「有」「無」だ。」
「は?」
「理解できんか?」
「いや、魂が無いって、生きて無いじゃん?」
「まあ、そういう見方もあるわな。」
「あるわな。じゃねぇよ。そんなわけねえだろ?アンデットだって言うのか?無能者が。」
「そうだな。実際お前が思ってるほど「無能者」が多いかどうかはわからん。さっきも言った通り、「魔力持ち」でも見た目は「無能者」ってことがあるからな。」
「そうだとしてもよ。俺の周りに住んでたやつに、アンデットみたいなやつらがいたってことだろ?そんなの信じられるかよ。」
「にわかには信じられんだろうな。でも事実だ。そのことを踏まえた上で周りを見てみろ。腑に落ちることもあるはずだ。まあ、今すぐ理解しろとは言わんさ。」
どうにも納得がいかんし、気味が悪い。身近にアンデットみたいなやつらがいるとは信じられない。
「それと、アンデットではないからな。魂がないだけで普通に生活はできる。理解し考える能力もある。会話もできるから普通の人間と変わらんさ。」
「なおのこと訳が分からん。じゃあ、なんだ。話せて考えることができるけど魂がないって、それこそ俺たちとの違いは何だよ?」
「転生だな。」
「転生?」
「そうだ。魂を持ってる奴らは、死んだらいずれ転生する。死んですぐに転生する場合もあれば、数百年経ってから転生することもある。確率からすれば、自分の子孫の元に生まれるケースが多いみたいだな。」
「転生したら、同じ人間ってことか?」
「状況によるな。転生した時に記憶を持ったまま転生する奴が稀にいる。それは同じ人間と言っても差し支えないんじゃないか?」
「そんな奴本当に要るのかよ?」
「お前の身近にいるよ。」
「へ?」
「ルドルフだ。」
「!?」
ルドルフ。親父が?転生したってことか。どういうことだ?
「ルドルフは何度も転生してる。で、奴は記憶を持ったまま転生できる稀なタイプだ。」
「記憶を持ったまま転生?」
「ああ、以前の記憶を持ったまま転生できる。だから、知識も豊富だ。心当たりがあるだろ?」
「でも、それは親父が人一倍努力したから……」
「そりゃ努力はしてるさ。でも、それ以上に記憶を持ったままの転生は価値がある。」
「そんな人間、他にもいるのか?」
「俺が知ってるのは2人だけだな。」
「じゃあ、お前もか?」
「いや、俺は違う。」
「じゃあ、なんでそんなことを知ってる?それこそ転生しないとわからないんじゃないか?」
「俺は転生者を見てるからな。」
「見てる?どういうことだ。」
「ルドルフが以前ジークムントだったことを知ってるからな。」
「ジークムントは伯父貴だろ?」
「いや、同じ名前だが別人だ。この町の住人だったジークムントだ。それが、お前の親父(ルドルフ)の前世だ。」
親父がこの町にいた?いや、それ以前に
「親父が死んで30年は経ってる。その親父の前世ってことは、お前幾つだ?」
「そうだな。100より先は数えていない……と言いたいところだが、数えてはいるよ。350くらいだっけかな。」
「350?!」
「すごかろ?だが、魔力持ちで長命なのは結構多いぞ。ジークムントも200歳までは生きてたと思うし、先代の魔王や先々代魔王も100を超えてた割にははつらつとしてたけどな。ホントはもっと生きれただろうがな。」
「なんだ、なんかあったのか?」
「まあな。それはおいおい説明する。」
「おう、そうか。で、親父はそのジークムントだったころの事を覚えてたってことか?」
「ああ、この間玉鋼を取りに来た時に話したが、ちゃんと覚えてたよ。だから色々うまく立ち回ってたぜ。」
「立ち回ってた?」
「ああ、魔力持ちとしての能力からすりゃ、俺や先代・先々代とは比較にならんほどのバケモンだ。」
「は?親父がか?」
「気づかなかったろ?実の息子にさえ気取らせないしたたかさ。生半可な能力じゃないさ。まあ、お前の爺さんたちは、違和感くらいは感じてたと思うがな。」
それがフェルディナンドが言ってた事か。フェルディナンドは爺・伯父貴と一緒に王宮英雄騎士団だった男。フリッツ姿の時に剣術を習った、あの老騎士だ。親父は本当に能力を隠して穏やかな生活を望んでたんだな。俺はてっきり才能が無いので努力して鍛冶屋になったとばかり思ってたよ。すまぬ親父殿。
「この街もジークムントの手によるものだよ。奴が先々代の魔王と一緒に作り上げた街だ。まあ、そこから俺が随分と手を入れたがな。俗にいう魔改造ってやつだな。」
何を言ってるんだかよくわからんが。親父が随分貢献したことだけはよくわかった。それで俺にもその活躍を期待したってわけか。そりゃ無理ってもんだ。
「俺は親父のようにはできんぞ!」
「ああ、創造主の事か。まあ、それはいずれでいいよ。スキルは遺伝しやすいからな。何かのきっかけで発現するかもしれんし。まあ、時間はたっぷりあるんだ。気長に行こうぜ。」
「なんだか、気楽なもんだな。」
「そうでもないんだがな。ここまでせっかく育てた俺のおもちゃだ。末永く遊んでゆきたいんでね。」
「おもちゃ……ねぇ。親父が作ったって言うのはどのあたりだ?」
「どのあたりも何も、今の街の半分以上はジークムントが作ったんだよ。実際は、もっとキンダイテキな町にしたかったらしいけどな。カガク技術が伴わないのにガワだけ作っても仕方ないってことで、当時使えた技術に合わせて作ったらしい。ちゃんと拡張性を考えて道路や線路を引いてくれてたのは助かったよ。で、ようやくここまで来たって感じだな。」
キンダイテキ?カガクギジュツ?よくわからんが、まあ頑張ったんだろう。
「そうか、頑張ったんだな。で半分ってなんの?」
「お前考えるのやめたろ?顔見りゃわかるんだからな。」
おお、怖えぇ怖ぇえ。
「だから、今も言ったろ?この町の半分以上だよ。お前も王都に住んでんなら初代王が王都作った話は知ってるだろうが!」
「ああ、あのお伽噺ね。聞いたことはあるけどさ。どうせ奴隷やら家臣やらを使って作らせた話に尾ひれ背びれが付いたんだろ?」
「今の王都じゃそんな認識なのかもな。あれ本当だ。ルドルフが作った。」
「初代王はルドルフって言うのか?」
名前のバリエーション少なすぎだろ?ややこしくていけねぇ。
「さっきも言ったが、魔力持ちは転生する。で、ルドルフは魔力持ちの転生者で、記憶持ちでもある。あいつが初代王だよ。」
「は?」
「だから、あいつが王都を作ったんだよ。一人で。いやホント、バカみたいな魔力だよ。でも、作ったことに満足して技術の発展を家臣に丸投げしちまったらしいんだな。そしたら思いのほか発展しなかったらしい。まあ、当たり前だがな。で、その反省からこの町を作った時は、街の大きさよりも技術の発展に力を入れたらしい。だから、工場や設備も結構作ってくれてたよ。あれは正直助かった。あれ無しじゃここまでの発展は無かったろうよ。」
え~と。情報が多すぎて渋滞してるんですけど。親父が誰だって?
「ちょっといいか?親父が初代王ってなんだよ。どういうことだ?」
「だからそのまんまの意味だ。ルドルフがその圧倒的魔力にものを言わせて街を作って発展させたんだよ。当時も王は居たらしいが、まだ都市国家の集まり程度だったみたいだけどな。その王を倒して、そこに巨大都市を作って、周りの都市国家を従属させて、ってな感じだったらしい。まあ、やることが豪快と言うか、無謀と言うか。暴力的な魔力あってのなせる業ってところだな。」
「じゃあ、王都の建物が1000年以上前のもんで一人の人間が魔力で作ったってのは本当だっていうのか?」
「だからそういってるだろ!まあ、そんなバカみたいな作業をやってくれてたおかげで、この町はより良いものになったってことだな。最初の失敗を生かして、かなり改善されてるよ。」
「そうか。」
としか言えなかった。なんと言っていい物やら。到底信じられるような話ではないが。嘘を言っているようにも見えないし、言ったところで得もないだろう。
「でも、困ってんだよ。ジークムントの作った建物は創造主でしか破壊できないからな。正直旧市街地は作り直したいんだよな。」
「で、スキルが欲しいと。」
「そういうこった。よろしく頼むよ。」
いやいや、頼まれても。ねぇ。正直でたらめ過ぎて着いて行けない。
「さっきも言ったが、すぐに如何こうって話じゃねぇよ。まずはニホントウを作ってくれたらそれでいいさ。で、手伝えるようならこの街も頼むわ。」
そうだな。取り敢えず、カタナだな。そこからしてできるかどうかわからんが。まあやってみるさ。
と、魔王に直接聞いてよい物かどうかを悩みながら、玉鋼を掌の上で転がしている。
気さくに話してはいるが、ストレートに聞いて、今度は本気で殺されたんじゃたまったもんじゃない。
「で、ちょっと聞きたいんだが?」
「なんだ?」
そうだな。まずは何から?疑問だらけで、どこから聞いていい物やらさっぱりわからん。
「お前、何者だ?」
「ほう。そこからか。」
「まずは、そこを確認したい。魔王ってのは何だ?」
「だから、魔王じゃねぇっつってんだろ。俺は人間だ。」
「そんなでたらめな人間が居るかよ。」
「自己紹介乙」
「またそれか。なんだよそれ?」
「まあいい。『我思う故に我アリ』ってな、お前が信じるも信じないも、俺は人間だ。他人よりちょっと魔力が多い。至って普通の人間だよ。」
「至って普通の人間が、2万人もの敵軍を一人で滅ぼせるのか?」
「お前もその気になりゃできるだろ。少なくとも、今の実力なら問題ないと思うぜ。」
「はぐらかされてもなぁ。じゃあ、人間だとしてもよ。一体何なんだこの町は?そういう意味で何もんなんだ?俺の親父とはどんな関係だ?」
「まあ、それを説明するには、ちょっと長くなるな。」
フリードリヒは、俺についてくるように促すと、製鉄所からでて、電車の駅へと向かう。駅からは町が一望できる。赤や黄色の光がそこかしこに瞬き、おもちゃ箱をひっくり返したような鮮やかな町だ。昼間に見ても煌びやかなのがわかる。
「お前は、この町を見てどう思った?」
「ああ、すげーなと」
「それだけか?」
「あぁ、あと、ちょっと懐かしい感じはしたな。」
フリードリヒは伏し目がちになり、少し考えこんでいるようだった。わずかな沈黙の後口を開いた。
「この世界の生き物には2種類いるのは判るか?」
「ん?魔力の有る無しの事を言ってるのか?」
「まあ、そうだなぁ。そういう見方もできるな。厳密には違うんだが、今はその区別でもいい。それじゃあ「魔力持ち」と「無能者」に分けてみようか。」
「「無能者」とは随分だな。」
「言い方だけの問題だ、気にするな。」
「ああ、で?」
「「魔力持ち」の特徴は何かわかるか?」
「スキルや魔術が使えることかな。あと、こないだエリザから聞いたけど、単純に力が強いとか、色んな能力が高いとか?」
「スキルや魔術、あと能力についてもそういう場合が多いってだけだ。「無能者」と変わらないケースも結構ある。実際、スキルや魔術についても、持ってはいるが、役に立たないスキルだったり、魔術に適性が無かったりするやつも居るからな。ぱっと見で「無能者」扱いされてることもあるってことだ。」
「じゃあ、あんまり明確な違いがないのか?」
「いや、はっきりした違いがある。」
「なんだよ?勿体つけるなよ!」
「そうだな。はっきりしてるのは、魂の「有」「無」だ。」
「は?」
「理解できんか?」
「いや、魂が無いって、生きて無いじゃん?」
「まあ、そういう見方もあるわな。」
「あるわな。じゃねぇよ。そんなわけねえだろ?アンデットだって言うのか?無能者が。」
「そうだな。実際お前が思ってるほど「無能者」が多いかどうかはわからん。さっきも言った通り、「魔力持ち」でも見た目は「無能者」ってことがあるからな。」
「そうだとしてもよ。俺の周りに住んでたやつに、アンデットみたいなやつらがいたってことだろ?そんなの信じられるかよ。」
「にわかには信じられんだろうな。でも事実だ。そのことを踏まえた上で周りを見てみろ。腑に落ちることもあるはずだ。まあ、今すぐ理解しろとは言わんさ。」
どうにも納得がいかんし、気味が悪い。身近にアンデットみたいなやつらがいるとは信じられない。
「それと、アンデットではないからな。魂がないだけで普通に生活はできる。理解し考える能力もある。会話もできるから普通の人間と変わらんさ。」
「なおのこと訳が分からん。じゃあ、なんだ。話せて考えることができるけど魂がないって、それこそ俺たちとの違いは何だよ?」
「転生だな。」
「転生?」
「そうだ。魂を持ってる奴らは、死んだらいずれ転生する。死んですぐに転生する場合もあれば、数百年経ってから転生することもある。確率からすれば、自分の子孫の元に生まれるケースが多いみたいだな。」
「転生したら、同じ人間ってことか?」
「状況によるな。転生した時に記憶を持ったまま転生する奴が稀にいる。それは同じ人間と言っても差し支えないんじゃないか?」
「そんな奴本当に要るのかよ?」
「お前の身近にいるよ。」
「へ?」
「ルドルフだ。」
「!?」
ルドルフ。親父が?転生したってことか。どういうことだ?
「ルドルフは何度も転生してる。で、奴は記憶を持ったまま転生できる稀なタイプだ。」
「記憶を持ったまま転生?」
「ああ、以前の記憶を持ったまま転生できる。だから、知識も豊富だ。心当たりがあるだろ?」
「でも、それは親父が人一倍努力したから……」
「そりゃ努力はしてるさ。でも、それ以上に記憶を持ったままの転生は価値がある。」
「そんな人間、他にもいるのか?」
「俺が知ってるのは2人だけだな。」
「じゃあ、お前もか?」
「いや、俺は違う。」
「じゃあ、なんでそんなことを知ってる?それこそ転生しないとわからないんじゃないか?」
「俺は転生者を見てるからな。」
「見てる?どういうことだ。」
「ルドルフが以前ジークムントだったことを知ってるからな。」
「ジークムントは伯父貴だろ?」
「いや、同じ名前だが別人だ。この町の住人だったジークムントだ。それが、お前の親父(ルドルフ)の前世だ。」
親父がこの町にいた?いや、それ以前に
「親父が死んで30年は経ってる。その親父の前世ってことは、お前幾つだ?」
「そうだな。100より先は数えていない……と言いたいところだが、数えてはいるよ。350くらいだっけかな。」
「350?!」
「すごかろ?だが、魔力持ちで長命なのは結構多いぞ。ジークムントも200歳までは生きてたと思うし、先代の魔王や先々代魔王も100を超えてた割にははつらつとしてたけどな。ホントはもっと生きれただろうがな。」
「なんだ、なんかあったのか?」
「まあな。それはおいおい説明する。」
「おう、そうか。で、親父はそのジークムントだったころの事を覚えてたってことか?」
「ああ、この間玉鋼を取りに来た時に話したが、ちゃんと覚えてたよ。だから色々うまく立ち回ってたぜ。」
「立ち回ってた?」
「ああ、魔力持ちとしての能力からすりゃ、俺や先代・先々代とは比較にならんほどのバケモンだ。」
「は?親父がか?」
「気づかなかったろ?実の息子にさえ気取らせないしたたかさ。生半可な能力じゃないさ。まあ、お前の爺さんたちは、違和感くらいは感じてたと思うがな。」
それがフェルディナンドが言ってた事か。フェルディナンドは爺・伯父貴と一緒に王宮英雄騎士団だった男。フリッツ姿の時に剣術を習った、あの老騎士だ。親父は本当に能力を隠して穏やかな生活を望んでたんだな。俺はてっきり才能が無いので努力して鍛冶屋になったとばかり思ってたよ。すまぬ親父殿。
「この街もジークムントの手によるものだよ。奴が先々代の魔王と一緒に作り上げた街だ。まあ、そこから俺が随分と手を入れたがな。俗にいう魔改造ってやつだな。」
何を言ってるんだかよくわからんが。親父が随分貢献したことだけはよくわかった。それで俺にもその活躍を期待したってわけか。そりゃ無理ってもんだ。
「俺は親父のようにはできんぞ!」
「ああ、創造主の事か。まあ、それはいずれでいいよ。スキルは遺伝しやすいからな。何かのきっかけで発現するかもしれんし。まあ、時間はたっぷりあるんだ。気長に行こうぜ。」
「なんだか、気楽なもんだな。」
「そうでもないんだがな。ここまでせっかく育てた俺のおもちゃだ。末永く遊んでゆきたいんでね。」
「おもちゃ……ねぇ。親父が作ったって言うのはどのあたりだ?」
「どのあたりも何も、今の街の半分以上はジークムントが作ったんだよ。実際は、もっとキンダイテキな町にしたかったらしいけどな。カガク技術が伴わないのにガワだけ作っても仕方ないってことで、当時使えた技術に合わせて作ったらしい。ちゃんと拡張性を考えて道路や線路を引いてくれてたのは助かったよ。で、ようやくここまで来たって感じだな。」
キンダイテキ?カガクギジュツ?よくわからんが、まあ頑張ったんだろう。
「そうか、頑張ったんだな。で半分ってなんの?」
「お前考えるのやめたろ?顔見りゃわかるんだからな。」
おお、怖えぇ怖ぇえ。
「だから、今も言ったろ?この町の半分以上だよ。お前も王都に住んでんなら初代王が王都作った話は知ってるだろうが!」
「ああ、あのお伽噺ね。聞いたことはあるけどさ。どうせ奴隷やら家臣やらを使って作らせた話に尾ひれ背びれが付いたんだろ?」
「今の王都じゃそんな認識なのかもな。あれ本当だ。ルドルフが作った。」
「初代王はルドルフって言うのか?」
名前のバリエーション少なすぎだろ?ややこしくていけねぇ。
「さっきも言ったが、魔力持ちは転生する。で、ルドルフは魔力持ちの転生者で、記憶持ちでもある。あいつが初代王だよ。」
「は?」
「だから、あいつが王都を作ったんだよ。一人で。いやホント、バカみたいな魔力だよ。でも、作ったことに満足して技術の発展を家臣に丸投げしちまったらしいんだな。そしたら思いのほか発展しなかったらしい。まあ、当たり前だがな。で、その反省からこの町を作った時は、街の大きさよりも技術の発展に力を入れたらしい。だから、工場や設備も結構作ってくれてたよ。あれは正直助かった。あれ無しじゃここまでの発展は無かったろうよ。」
え~と。情報が多すぎて渋滞してるんですけど。親父が誰だって?
「ちょっといいか?親父が初代王ってなんだよ。どういうことだ?」
「だからそのまんまの意味だ。ルドルフがその圧倒的魔力にものを言わせて街を作って発展させたんだよ。当時も王は居たらしいが、まだ都市国家の集まり程度だったみたいだけどな。その王を倒して、そこに巨大都市を作って、周りの都市国家を従属させて、ってな感じだったらしい。まあ、やることが豪快と言うか、無謀と言うか。暴力的な魔力あってのなせる業ってところだな。」
「じゃあ、王都の建物が1000年以上前のもんで一人の人間が魔力で作ったってのは本当だっていうのか?」
「だからそういってるだろ!まあ、そんなバカみたいな作業をやってくれてたおかげで、この町はより良いものになったってことだな。最初の失敗を生かして、かなり改善されてるよ。」
「そうか。」
としか言えなかった。なんと言っていい物やら。到底信じられるような話ではないが。嘘を言っているようにも見えないし、言ったところで得もないだろう。
「でも、困ってんだよ。ジークムントの作った建物は創造主でしか破壊できないからな。正直旧市街地は作り直したいんだよな。」
「で、スキルが欲しいと。」
「そういうこった。よろしく頼むよ。」
いやいや、頼まれても。ねぇ。正直でたらめ過ぎて着いて行けない。
「さっきも言ったが、すぐに如何こうって話じゃねぇよ。まずはニホントウを作ってくれたらそれでいいさ。で、手伝えるようならこの街も頼むわ。」
そうだな。取り敢えず、カタナだな。そこからしてできるかどうかわからんが。まあやってみるさ。
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