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第四章『過去と試練』

第十四話『終わり』

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僕は起き上がり、体を確かめた。
・・・また抱きついて寝てたな、フール。
彼女は小さい時から抱きついて寝る癖があった。
暑い時はすごく暑い・・・
でも寒い時はそれなりの快適さが約束される。
・・・少し変態みたいだけど、彼女はとても。
安心する匂いでもある。
服のシワを伸ばして、僕は隣を見た。
髪を結うフールの後ろ姿。
ポニーテールにするみたいだ。
フールは髪が長い。背中の半分くらいにまである。
というのも、僕が1番反応が良かったのが長髪だったらしい(フール談)。
ちなみに全然嫌いではない。
いつもはストレートで流してるけど、今日はお風呂にも入れないから、かな?

「んー!さて!行きますか!」

「みんなそろそろ集まってるかな?」

イヴとマップを書いた所へ戻る。
そこから小さな部屋へと続いているのだ。
命は僕らが寝ていた部屋の前のソファに寝転がっていた。
今は立ち上がり、書き上げたマップを見ている。
・・・どうやら全員いるらしい。

「おはよう。今が何時かは分からないけど・・・みんな休めたかな?」

「おはようございます。アダム様」

僕らは席につき、マップの説明を始める。
恐らく察しはついているだろうけど、まぁ一応ね。

「これなんだけど・・・今までのルートからこの先のルートを予想してみた。作成の大半はイヴだから、信頼してくれていいよ」

「んん?なんでその嬢ちゃんなら信頼出来んだ?」

「話すと長くなるけど・・・まぁそう言う能力があるって思ってくれればいいかな」

ミルからの質問に応え、僕らは作戦を立てる。
ここまで来れたのはミルの索敵能力と暗視のおかげ。
だけど、ここからゴールまで一気に行くって言うのは、少しだけ不安要素がある。
・・・ゴールがどこにあるかなんて、誰にも分からないのだ。
例えばの話。
スタートの真横がゴールでも、おかしくは無い。

「ちょっと聞いて欲しいんだけどさ。僕らがここまで来た道は多少曲がったりはしたけど、基本的に真っ直ぐだったよね。つまり、次に辿り着くのはまたセーフゾーンだと思うんだ」

「うーん?でも、途中で曲がったりしてたんだから、もしかしたら曲がり曲がってゴールっていう可能性もあるんじゃないの?」

「それはないかな。あっちの目的はあくまででしょ?多分、あらゆる手を使って引き伸ばすと思う。でも、絶対的にルールは変えないと思うから、僕らの動きを見て何かを変えるんじゃないかな」

この迷路は動かない・・・そう言うのも、もしかすれば変化してしまうかもしれない。
ゴールが無限に動いてる可能性だってある。
・・・もしかしたら、真ん中にあるのかもしれない。

「セーフゾーンは2つ。ここと、あともう一つだ。それが本当なのかはわかんないけど・・・ともかく、次に目指すのはゴールじゃなくてセーフゾーン。そういう心持ちで行こう」

「わかった」

「かしこまりました』

「了解」

僕らはここまでのように、ミルを先頭に進んで行く。
・・・魔力はまだ10分の1程度しか減ってないから、まだ平気だ。
行ける。
そう、この時はまだ。
少しだけ、安心していた。


まさか、先延ばしじゃなくて。
直接、楽しみに来るとは。



──げろ!

「アタシの事はいい!!早く逃げろ!」

唐突だった。
僕の意識が一瞬だけ消え、その瞬間。
そこには、白竜が居た。

『ははは!我もまた、神話の魔物なり。我が背後にこそ、その『終わり』があるぞ!さぁどうする人間共!』

ミルを殿に、ヤミエを連れてそこから逃げる。

『ほう、貴様が我の相手をするのか』

「すこーしだけ、時間稼がせてもらうよ」

『ふんっ!やってみろ!』


そして、僕らは今。
絶望の中、そこに居る。
僕の魔力は何故か、空っぽだ。
歩くのがやっと。
走るのも・・・もう、無理だ。

「・・・あれ?ヤミエさんは・・・?」

「・・・・・・・・・仇、討ちに行くって」

・・・そうか。
僕らには止める資格はないし、追いかける資格もない、か。
今はとりあえず・・・僕の仲間が、助かる方法を・・・
ドゴンと、2回目の大きな音が響く。
・・・フールは随分と落ち着いてるな・・・

「さて、と。どうしようかな」

「アダム様・・・魔力が・・・」

「そう、なんだよね。多分、僕の魔力を媒体に顕現したんだろうさ」

僕らは一旦、中央へ行こうという話になり、途中から真ん中をめざしていた。
そしてまさかまさかの、その真ん中がゴール・・・
何かあるとは思っていた。
あの4体との戦闘かと思っていた。
・・・しかし、違った。
それよりも、最悪だった。

「・・・フール、どうすればいいかなぁ・・・」

「そうだねぇ。走り抜けるのは・・・無理そうかなぁ」

あの巨体だ。
横を通り抜ける時に、少しズレるだけで塞がれてしまう。
・・・であるなら。
選択は、1つか。


「目潰し?」

「うん。僕の魔力はもう・・・ほぼ無いと言っていい。例えば今指輪を壊しても、魔力は戻らない。だから、フールとイヴで、煙幕と光で目潰ししよう」

「そんな子供だまし・・・上手くいくかなぁ?」

「多分上手く行くんじゃないかな。あのデカさだから、下手に動けば身動きが取れなくなってもおかしくない。目潰ししている間に、僕らはゴールへ向かう」

ソファに座っていたイヴが立ち上がる。

「マスター。その際の『最悪』は想定しておりますか?』

「もちろん。でも、多分物理的な目潰しは効くんじゃないかな。僕の魔力を媒体に顕現してるとしたら、あれは完全体じゃない。そもそも、最初に見た時より魔力が全然なかった」

あの白竜の総魔力は、僕から奪った魔力の量そのものだろう。
ならば、やりようは、ある。
最悪・・・フール達だけでも、助けられれば。
それで、いい。

「行こう」

「うん」

「はい」

「かしこまりました』

僕らは向かう、その場所へ。
どうしてだろう、僕らが向かっているのは、絶望の場所なのに。
笑っているのは、正常だから?
それとも──
僕は初めから、おかしかった?

§

そして、その時が来た。
僕が先じて、中央の部屋へ入る。
装飾を見る余裕はさっきはなかったけど、今ならわかる。
コロシアムみたいだ。
入口から入ってすぐに、いくつものシミを見つけた。
そこには、砕けた骨のようなもの。
2つだけ、肉と骨がぐちゃぐちゃに混ざったものがある。
僕はそれに反応せず、白竜を見た。

『早かったな。アダムよ』

「覚えてくれていたのか。光栄だね」

『当たり前だろう。それより、何か策があるのだろう?見せてみよ』

「その前にさ、僕の魔力返してよ。少しでいいからさ」

『ならん。これは我の仮初の肉体を維持するものの、ギリギリなのだ。もう少し多ければ、渡しても良かったが・・・』

第一接触、失敗。
あわよくば少しだけでも魔力を返してもらって、それを役立てようと思ったが・・・
だが、いい事を聞いた。
コイツは、魔法が使えない。
それだけ分かれば、十分、か。

「なぁ、白竜」

『なんだ?』

「なんでお前、

『・・・貴様、いつから──』

「今だ!」

「『黒炎』!!」
「竜砲!』

フールとイヴの魔法が決まる。
仰け反る白竜。
凄い怒声だ。
恐らく痛みは無いだろうが、暫くは何も見えまい。
僕は命に抱えられ、僕らはゴールへと走った。
そして、遂に。
僕らは、ゴールへ──

『クソっ!ふざけやがって!』

白竜が怒りのままに、その魔力を全て爆発させる。
勢いのまま、僕らはゴールの方へ吹き飛ばされ、そして。

『おめでとう。挑戦者よ』

そこは、塔のような場所の、頂上だった。
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