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第四章『過去と試練』

第六話『最悪なレベリング』

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「よろしくお願いします、アダム様」

「うん。任せて」

僕がなんで今までレベルを見なかったか。
それは単純にやり方が分からなかったのもそうだけど、実力とステータスの差を知りたかったからでもある。
・・・主にやり方が分からなかったんだけどね。
このタイミングで使い始めたのは、未来視を使ってて少し違和感があったからだ。
左眼に魔力を込めると未来が見える。
逆に魔力を送るとレベルが見える。
これに気付けたのは幸運だった。
僕の右眼は魔力を込めると、魔力の残滓やらその道が見えたりする。
まぁ、要は魔力が見えるだけだ。
これは特に意味もなくて、体内にある魔力は見えない。
というか、見えてたらレベルが見える瞳なんて必要ない。
魔力量で大体力量が計れるからだ。
・・・それはともかく、命のステータスを見よう。

★──§§──★
ステータス

名『紅葉 命』

レベル・・・『735』

攻・・・『735000』
防・・・『147000』
魔・・・『735』
体力・・・『147000000』

次レベルまで『35746830』EXP

★──§§──★

ちょっと意味がわからない。
え、え?
なんでこんなにレベルが高いんだ?
確かに、ダンジョンの攻略やら模擬戦やらはしていた。
ただ、それだけでここまで行くものなのか?
・・・いや、落ち着こう。
EXPを得られるのは、モンスターを倒した時だけじゃない。
この世で生きてるだけで少しずつ溜まるのだ。
そう彼の研究書にも書いてあった。
命がEXPをここまで得られた理由で、考えられるのはこれしかない。
・・・被虐だ。
彼は産まれてから直ぐにあの場所へ売られ、暴力とストレスの捌け口にされていたのだ。
・・・それだけで、ここまでレベルが上がるものなのか。
それだけで、こんなにEXPが得られるものなのか。
どれほどの地獄を見たんだ、命は。

「ど、どうされたのですか?アダム様」

僕はハッとして命の肩から手を離す。
命の体には傷一つない・・・筈だ。
僕が回復したのだから、それは間違いない。
しかし・・・しかし、だ。
なんで、なんでこうも平然と生きてられるんだ?
リグレットじゃないが、復讐を考えたっておかしくない。
この合戦で復讐を?
いや、命は自分の意見は全て言うタイプだ。
短い付き合いでもそれは分かる。
・・・ならば、放って置くのが吉か。

「いや、なんでもないよ。命はレベルがすごく高いみたいだね。ステータスも魔力以外はとても高い」

「なるほど・・・修行の賜物ですね!」

本気で言っているのだ。
この笑顔も、言葉も、嘘じゃあない。
・・・純粋・・・?
それとも・・・悪意がどんなものなのか、分からない?
・・・まぁ、いいか。
ともあれ、命のステータスは本当に高い。
魔力以外はイヴすらを凌駕している。
命とイヴのステータスを比べると分かるのは、倍々ではなく、固定された数値分上乗せという方なのだろう。
現に、命の魔力はレベル1の時は1だったことが伺える。
そして、その体力。
まさかイヴよりも高いとは。
いや、自動回復がない中、あれだけ生きていたのはこれが理由なのかもしれない。
ずっと生死を彷徨っていたのだ。
自然と体力も底上げされたのだろう。
・・・底上げされた分、減らされたのだろう。
しかし、そのお陰で彼の生命力は凄まじい事になっている。
超能力を使えるのならば、キュー二ちゃんよりも凄まじい力を扱える様になるだろう。
まぁ、彼女は今、超能力使えないんだけどね・・・

「それじゃあ、また2人で訓練しててくれる?僕は自分のステータスも見たいから」

「よろしいのですか?本日はアダム様の修行では・・・」

「いいよいいよ。それよりほら、イヴはやる気満々みたいだけど?」

「そのような事は・・・無きにしも非ずで御座います』

命がそれを見てクスリと笑う。
・・・さて、僕のステータスでも見てみようか。
まぁ大体、予想は着いてるけど。

★──§§──★
ステータス

名『アダム?』

レベル・・・『75463』

攻・・・『75463』
防・・・『75463』
魔・・・『7546300000000』+?
体力・・・『75463』

次レベルまで『17050000000』EXP

★──§§──★

§

ステータスを確認してから四日後。
僕らは旗?幕?に囲まれた拠点に居た。
そこには既に何人も集まっており、少し経ってからショウグンと呼ばれる人が出てきた。

「よく来たな皆の者。我ら大和の勝利を信じ、来てくれた事、殿もお喜びだろう」

そう言い、ショウグンはその団扇のような物を振るう。
なんだか演劇を見ている気分だ。
そしてなんやかんや激励し、場の熱が上がる。

「狙うは敵大将の首!持ってきた者には更なる褒美を取らせようぞ!」

それを聞いた瞬間、湧き上がる戦意の声。
うわぁ。
金で釣ったよこの人。
僕は白い目でこちらを見るイヴを放って、大声を上げて拳を天高く突き上げた。

「行くぞ皆の者!!」

作戦はこうだ。
まず僕らが真正面から攻め、あわよくばそこで大将首をとる。
だがあちらも戦慣れはしているはず。
簡単にはいかない。
そこで、正規軍が両翼とさらに外側から回って四方向攻めにする。
そして、相手国から買収した味方も協力し、ほぼ完璧な布陣を用意したらしい。
素晴らしい!なんて頭がいいんだ!
・・・なんて、思う訳もないが。
しかし、ちゃんと裏切りの可能性も考えているらしい。
で、その仲間には伝えていない戦法もあった。
それが、上空と背後からの暗殺。
シノビ?とやらをトノ?から借りたと言うショウグンだったが、それらは暗殺に特化した部隊らしく、それを使って戦うらしい。
まぁなんとも分かりにくい解説だが、子の通りに言われたのだから仕方ない。
とにかく、僕らは真正面から戦えばいいのだ。
今回はつくもやレヴィ、銀とフールも居ない。
僕ら3人の個人戦。
戦いの為だけの戦い。

「さて、2人とも」

こちらを見る命とイヴ。
今回の戦の目標は、そう。
だ。

「僕をがっかりさせないでよ」

途端、目の色が変わる。
僕はもう、2人がなんて言えば戦意が上がるかを理解していた。
この2人は、あくまで僕のために戦うのだ。
そして今回は、僕が2人の戦力を計るという名目で参加している。
きっと2人は、躊躇なく殺るだろう。
だから僕も、全力で。

「勝つぞ」

「「承知っ!』」
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