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第三章『地下ダンジョンと禁忌の実験』

四話『本物の使い魔②』

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レヴィに更に魔力を与える。
レヴィは魔力を吸収する事に少しづつ大きくなり、その色が濃くなる。
半透明だった体は深淵のように真っ黒な鱗に覆われ、ベルト位の長さだったのにとぐろ巻いて鎌首をもたげる姿は3メートルを超えるだろうか。
・・・大きくし過ぎた・・・

『この程度であれば、大抵の不祥事は問題ないかと思われます』

「そう?僕まだ余裕あるからもっと取っていいよ?大きさは自由に変えられるんだもんね?」

『はい。しかし、牽制にもなりますので、ある程度の大きさは許容して頂けると・・・』

「もちろん。君が望む大きさでいいよ。なるべく小さくね?」

『・・・ありがたき幸せ』

頭を下げてくるレヴィ。
その頭を撫で、感触を確かめる。
霊体のはずだけど、高密度の魔力で実体化している。
なのに、本当に超巨大な蛇を目の前にしてるような気分だ。 
触り心地もツルツルしていてなんとも言えない。
ぶっちゃけつくもの尾に匹敵する心地良さだ。
なんか安心する。

「しかしよもやあの大悪魔を創ってしまうとは・・・我が主ながら末恐ろしい男だ」

『当然でしょう。は偉大な御方なのです』

「うん。マウント取り合わなくていいからね」

僕はレヴィのとぐろに座り、その心地良さに眠りそうだった。
まずい、程よい温かさに柔らかさと反発力。
これは理想の椅子だ──

『お休みになられますか?監視はお任せ下さい』

「あ、うん・・・お願いね・・・」

そうして僕は、呆気ないほどあっさりと意識を手放した。

§

『つくもよ』

「なんだ、レヴィアタン」

人型のつくもとレヴィアタンが顔を合わせる。
お互いに警戒はしていない。
しかし、油断もない。

『その・・・お父様は・・・どう言った御方なのだ・・・?』

「・・・?」

ポカンとした顔をするつくも。
レヴィアタンはその鋭い目を恥ずかしそうに背け、再度つくもへ投げ掛ける。

『わ、私はお父様の事を何一つ知らない・・・お前なら知っていると思ったのだが・・・』

「・・・ふふ」

『・・・・・・これでも必死なのだ』

つくもは微笑を浮かべる。
自らを生み出した人間に対して、甘えたいと。
愛されたいと言う悪魔。
つくもからすれば、とても可笑しい話だった。

「あぁ、良いぞ。まずは此奴の許嫁の話からしよう」

『なぬ!?お母様がいるのか・・・?』

「出来る『予定』だ。覚えておくがいい」

そうして、主が起きるまでの間、2体の獣は語り合った。
時には笑いすらあった。
アダムが起きた頃には、すっかり。
わだかまりも消え去っていた。

§

翌日、1メートル程度まで縮小したレヴィを体にまきつけ(本人希望。全く動きづらくない)、寮門から散歩へ出かけようとする。
単純に気分転換だった。 
何故か2人も仲良くなっていたし、僕としても嬉しい限りだ。
たまに談笑しているのを聞いていると自然と笑みもこぼれる。
そして、完全に忘れていた人が現れた。

「あ、こんにち、は──」

「こんにちは。生徒会長」

『・・・?これはなんだ?つくも』

「フールの邪魔しようとする輩だ。私はフールからこいつをアダムへ近付けないよう言われている」

『なに、お母様が?・・・なるほど、殺してはダメなのか?』

「ダメだよ。僕の先輩だからね」

中々物騒な会話が繰り広げられる。
レヴィ・・・フールをお母様って呼んでるのか・・・
ていうかフール・・・つくもにそんなこと言ってたのか。
だからあんなに僕に触れないようにしていたのかな?
・・・嬉しいような子供扱いな様な・・・
まぁ悪い気はしないや。

「え、と・・・アダム君、その蛇は・・・?」

「僕の新しい使い魔です」

僕はそう短く言い残し、早々に歩き出す。
なんか生徒会長の様子もおかしいし、早く行かないと殺戮が始まりそうだ。

「ねぇレヴィ?クッキー食べてみない?」

§

あれは、ダメだ。
数日引き篭って何をしているのかと思ったら・・・
まさか、あんなモノにまで──
何者なの・・・?彼は・・・
蛇の魔物というのは、総じてとても強力なのだ。
何を隠そう、この学園の地下ダンジョンで1番多くの犠牲者を出しているのは蛇の階層ボスだ。
だからこそ、私達生徒会も蛇の魔物の研究をある程度してから挑む。
そして、生徒会に1番長く居て、この学園で1番ダンジョンに潜っている私だから言える。
あれは、ダメだ。

「──はぁ、はぁ・・・!」

黒い鱗に黒い瞳。
そしてその身に纏う死の気配。
さらには、隠しきれない黒い魔力。
アダム君が気付いてない訳が無い。
あれは、知ってて飼い慣らしているのだ。
災厄を超えた災厄。
人はそれを、神災と呼ぶ。
そして、神災とは。
悪魔の復活を指す。

「急いで・・・伝えないと──」

ゾクリと身をよじる。
そちらを見ると、アダム君が歩いているのが見える。
狐ちゃんも尾を揺らしながら隣を歩いている。
そして、その体に巻きついた蛇──
その目が、こちらを見ていた。

「──ぁ」

小さく悲鳴が出る。
その場に座り込み、恐怖に肩を抱く。
終わった──目を付けられた。
私の学園生活どころか、人生までもが・・・
崩れる、音がした。
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