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09 俺、告白される
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月光で銀色にも見える灰色の猫が、俺の前に佇んでいる。
遠藤らしいその猫は、少しの間俺の様子をうかがうように距離を置いていたが、こちらが動かないのでしびれを切らしたらしい。
顔を上げて俺の方に歩いて来ると、その場でくるりと回って尻尾を振った。
ついて来い、と言っているようだ。
この偉そうな態度、やっぱり遠藤だな。
俺は内心ムッとしながらも、灰色の猫の後を追って来た道を逆戻りする。
開いたままの遠藤の家の扉から中に入る。
遠藤の両親は無反応のようで、家の中は静まり返っていた。
猫の姿で階段を登るのは面倒だと思っていると、灰色の猫は階段を登らずに居間に入った。なるほど。俺も暗い居間に入ってソファの影で人間の姿に戻る。
前回の感覚を思い出すと、すぐに変化は訪れた。
猫化の影響か、電気の付いていない暗い居間でも普通に家具や物が見える。
俺は座り込んで自分の人間の手のひらを見つめた。
「戻れたか」
ソファの上から静かな声。
遠藤が俺を覗き込んでいる気配がする。
「……なんであんなことをしたんだよ」
俺は振り返らずに低い声で問いかけた。
遠藤の身じろぎする音がする。
「すまない」
「謝ってくれなんて頼んでねえよ。理由を聞いてんだよ」
なんで俺相手に盛ったんだよ。
ああ、自分で言うのも恥ずかしいな。
「満月の夜は本能が押さえ切れなくて……君の匂いに反応してしまった」
「匂い?」
「僕らは匂いで発情するんだ」
へえー。匂い……。
んん?
結局、どういうことなんだ。
「須郷。言いにくいがこの際はっきり言おう。僕ら猫族は、匂いの相性さえ良ければ、相手が男でも女でも関係ないんだ」
……。
「僕は君のことが好きらしい」
「は?」
ちょっと待て。考える時間をくれ。何が何だか……。
遠藤の告白を受けて、俺はバクバクする心臓を抑えてうずくまる。なんでか後ろの遠藤の顔が見れない。いったいぜんたい何だってんだ。
猫になってしまってから俺は色々とおかしい。
遠藤らしいその猫は、少しの間俺の様子をうかがうように距離を置いていたが、こちらが動かないのでしびれを切らしたらしい。
顔を上げて俺の方に歩いて来ると、その場でくるりと回って尻尾を振った。
ついて来い、と言っているようだ。
この偉そうな態度、やっぱり遠藤だな。
俺は内心ムッとしながらも、灰色の猫の後を追って来た道を逆戻りする。
開いたままの遠藤の家の扉から中に入る。
遠藤の両親は無反応のようで、家の中は静まり返っていた。
猫の姿で階段を登るのは面倒だと思っていると、灰色の猫は階段を登らずに居間に入った。なるほど。俺も暗い居間に入ってソファの影で人間の姿に戻る。
前回の感覚を思い出すと、すぐに変化は訪れた。
猫化の影響か、電気の付いていない暗い居間でも普通に家具や物が見える。
俺は座り込んで自分の人間の手のひらを見つめた。
「戻れたか」
ソファの上から静かな声。
遠藤が俺を覗き込んでいる気配がする。
「……なんであんなことをしたんだよ」
俺は振り返らずに低い声で問いかけた。
遠藤の身じろぎする音がする。
「すまない」
「謝ってくれなんて頼んでねえよ。理由を聞いてんだよ」
なんで俺相手に盛ったんだよ。
ああ、自分で言うのも恥ずかしいな。
「満月の夜は本能が押さえ切れなくて……君の匂いに反応してしまった」
「匂い?」
「僕らは匂いで発情するんだ」
へえー。匂い……。
んん?
結局、どういうことなんだ。
「須郷。言いにくいがこの際はっきり言おう。僕ら猫族は、匂いの相性さえ良ければ、相手が男でも女でも関係ないんだ」
……。
「僕は君のことが好きらしい」
「は?」
ちょっと待て。考える時間をくれ。何が何だか……。
遠藤の告白を受けて、俺はバクバクする心臓を抑えてうずくまる。なんでか後ろの遠藤の顔が見れない。いったいぜんたい何だってんだ。
猫になってしまってから俺は色々とおかしい。
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