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第五章 そしてハムスターは伝説になる(嘘)

女神の愛し子

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 私はアーリアの手を引いてお城の階段を駆け上る。
 しかし、踊り場で軍服の騎士に呼び止められた。

「待て!その娘は……皆の者、彼女を止めろ!」

 脇をすり抜けて外に出ようとするが、騎士さんの声で集まってきた人達が出入り口を塞いだ。万事休すだ。

「内通者か、拐かされたか……大人しく牢に戻るなら良し。抵抗するなら切り捨てるぞ」

 しゃらんと騎士が腰の剣を抜く。
 わお、格好良い。なんて言ってる場合じゃない。ピンチだ。
 私はアーリアを庇いながら近付いて来る騎士を睨んだ。

「待て!」

 私と騎士さんの間に黒髪の青年が割り込む。
 青ざめた顔でいつでも抜刀できる姿勢で、私達を守るように前に立つ。
 イッシュ君だ。

「何故邪魔をする?!」
「……彼女は、パドリック殿下の大切な想い人だ。俺は、殿下が守りたい者を守る!」

 黒髪の青年の気迫に押されて、取り囲む人達は戸惑ったように動きを止める。
 その場の人達は次の行動に迷っているようだった。
 ええと、どうしようかなあ。
 出入り口塞いでる人達をどかさないと外に出られない。
 私も悩んでいると、後ろからアルジェンが現れる。

「皆様、殿下を殺めようとしたこの娘は、イーリアス国教会が預かります!」

 彼は並み居る騎士や文官や城勤めの人達を見渡して宣言する。

「何の権限があって…?!」
「女神イーリアスの名の下に!この栗色の髪の娘エステルは女神がこの世界に遣わされた愛し子です!彼女の意志は女神イーリアスの意志!」
「女神の愛し子だって……?」

 城の人達の視線が私に集中する。
 うう…視線が痛い。

「その証拠に聖獣パムスターは彼女に従い、彼女を守ります!ご覧なさい…」

 アルジェンが大仰に腕を振る。
 私の足元にクリーム色のパムスター、メグが走ってくる。
 物影から次々とパムスターが姿を現して、私を取り囲んだ。
 皆……ありがとう。

「聖獣が……」
「なんと可愛らしい光景だ…」
「本当なのか?本当に女神の愛し子…?」

 人々がざわめいてパムスターと私を見比べる。
 後ろでアーリアが息を呑んだ。

「エステル、貴女はいったい……」

 私はただのパムスターだよ。
 ちょっと太ってて、ぽっちゃりで、愛され体質なだけだ。

 いつの間にか静まり返った群衆を見回して、私は言った。

「祭壇はどこ?イーリアス様とお話がしたいの」

 困った時は神頼みだよね。
 さあ神様、王子様殺人未遂事件をぱぱっと片付けちゃって下さい!


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