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第1話
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「アーネスト・トルコーダ、あなたはエレン・ハーディングを妻として敬い、伴侶として共に生きることを誓いますか?」
「はい、誓います。」
「エレン・ハーディング、あなたはアーネスト・トルコーダを夫として敬い、伴侶として共に生きることを誓いますか?」
「はい、誓います。」
「では、誓約の証として二人の署名をお願いします。」
「ここに一組の夫婦が誕生しました。神の祝福のもと、二人に幸多からんことを祈ります。」
○○○
私の名前はエレン。ハーディング伯爵家の長女として生まれ育ち、昨日貴族学園を卒業して今日結婚した。
そしてトルコーダ次期侯爵夫人となった。
格上の侯爵家嫡男へ嫁いだ勝ち組のように見えるけれど、実情は全く異なる。
夫となったアーネスト様と私の間で契約が結ばれている。
①お互いの愛を求めない
②不貞行為を行わない
③体の関係は持たず、侯爵家の遠縁より養子を迎えて後継者とする
④社交などの対外的な場では関係が良好な夫婦としてふるまうが、それ以外ではお互いに干渉しない
⑤アリス・グレイバックが目覚めた時には速やかに離縁する
かつては、政略結婚や契約結婚が主流であった貴族の結婚だけれど。
今では恋愛結婚が主流となっているので、私たちの結婚は珍しい。
しかも私にとっては、不利な契約内容でもある。
①~④はね。まあ契約結婚なのだからいいとして。
⑤はいったい何なのかって話でしょう。
アリス・グレイバックって誰よって思うでしょう?
まあ彼女は有名人だから、知らない貴族はいないだろうけれど。
彼女がいつ目覚めるか知らないけれど、急に離縁して放り出されるのですよ。
今にも目覚めるかもしれないし、かなり歳をとってからかもしれない。
そんな結婚聞いたことがない。
それでも、私はこの契約結婚を拒否することなど出来ない立場だった。
○○○
アーネスト様と私の結婚が決まったのは、今から1年前の事だった。
貴族学園の最終学年になった私は、ある日実家に呼ばれた。
「お前の結婚相手が決まった。トルコーダ侯爵家の嫡男、アーネスト様だ。学園を卒業した翌日に挙式を行う。」
「・・・え?トルコーダ侯爵家のアーネスト様とは・・・あの・・・?」
「そうだ。侯爵位を継承するために結婚相手をお捜しになっていてな。ぜひともうちのエレンをと、何度も交渉してやっと決めてきてやったのだ。まさか侯爵家の、しかも嫡男に嫁げるとは。やっとお前もこのハーディング家の役に立てる日が来たな。」
「・・・はい、お父様。」
「これはアーネスト様からお預かりした結婚契約書だ。ここにサインしなさい。」
あの5項目が記された契約書に有無を言わせずにサインさせられた。
「・・・それで、アーネスト様との顔合わせはいつになるのでしょうか?」
「アーネスト様も侯爵様夫妻もお忙しいのだ。そんな暇はない。顔合わせは挙式当日となるが問題はないだろう。挙式の準備はして頂けるそうだし、お前はこれまで通り学園の寮で暮らし勉学に励むが良い。話は以上だ。」
私はあっけにとられたまま父の書斎から追い出された。
実の娘へのこの扱い。
もう慣れているとはいえ、あまりにも雑な扱いに言葉も出ない。
まぁ、それでも予想していた結婚よりはましかもしれない。
侯爵家の、あの美しいアーネスト様と結婚できるのだから。
「はい、誓います。」
「エレン・ハーディング、あなたはアーネスト・トルコーダを夫として敬い、伴侶として共に生きることを誓いますか?」
「はい、誓います。」
「では、誓約の証として二人の署名をお願いします。」
「ここに一組の夫婦が誕生しました。神の祝福のもと、二人に幸多からんことを祈ります。」
○○○
私の名前はエレン。ハーディング伯爵家の長女として生まれ育ち、昨日貴族学園を卒業して今日結婚した。
そしてトルコーダ次期侯爵夫人となった。
格上の侯爵家嫡男へ嫁いだ勝ち組のように見えるけれど、実情は全く異なる。
夫となったアーネスト様と私の間で契約が結ばれている。
①お互いの愛を求めない
②不貞行為を行わない
③体の関係は持たず、侯爵家の遠縁より養子を迎えて後継者とする
④社交などの対外的な場では関係が良好な夫婦としてふるまうが、それ以外ではお互いに干渉しない
⑤アリス・グレイバックが目覚めた時には速やかに離縁する
かつては、政略結婚や契約結婚が主流であった貴族の結婚だけれど。
今では恋愛結婚が主流となっているので、私たちの結婚は珍しい。
しかも私にとっては、不利な契約内容でもある。
①~④はね。まあ契約結婚なのだからいいとして。
⑤はいったい何なのかって話でしょう。
アリス・グレイバックって誰よって思うでしょう?
まあ彼女は有名人だから、知らない貴族はいないだろうけれど。
彼女がいつ目覚めるか知らないけれど、急に離縁して放り出されるのですよ。
今にも目覚めるかもしれないし、かなり歳をとってからかもしれない。
そんな結婚聞いたことがない。
それでも、私はこの契約結婚を拒否することなど出来ない立場だった。
○○○
アーネスト様と私の結婚が決まったのは、今から1年前の事だった。
貴族学園の最終学年になった私は、ある日実家に呼ばれた。
「お前の結婚相手が決まった。トルコーダ侯爵家の嫡男、アーネスト様だ。学園を卒業した翌日に挙式を行う。」
「・・・え?トルコーダ侯爵家のアーネスト様とは・・・あの・・・?」
「そうだ。侯爵位を継承するために結婚相手をお捜しになっていてな。ぜひともうちのエレンをと、何度も交渉してやっと決めてきてやったのだ。まさか侯爵家の、しかも嫡男に嫁げるとは。やっとお前もこのハーディング家の役に立てる日が来たな。」
「・・・はい、お父様。」
「これはアーネスト様からお預かりした結婚契約書だ。ここにサインしなさい。」
あの5項目が記された契約書に有無を言わせずにサインさせられた。
「・・・それで、アーネスト様との顔合わせはいつになるのでしょうか?」
「アーネスト様も侯爵様夫妻もお忙しいのだ。そんな暇はない。顔合わせは挙式当日となるが問題はないだろう。挙式の準備はして頂けるそうだし、お前はこれまで通り学園の寮で暮らし勉学に励むが良い。話は以上だ。」
私はあっけにとられたまま父の書斎から追い出された。
実の娘へのこの扱い。
もう慣れているとはいえ、あまりにも雑な扱いに言葉も出ない。
まぁ、それでも予想していた結婚よりはましかもしれない。
侯爵家の、あの美しいアーネスト様と結婚できるのだから。
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