上 下
130 / 137
第12章 神の使者、エルフの国に降臨

第130の宴 ポンコツはいつまでもポンコツ

しおりを挟む
創造神の話も終わり、やっとのことで山の中に入る俺達。
山の中の壁は薄っすらと青い。
青というよりは水色かな?
まさに水の山であった。

「水の魔石は他の鉱石のように採掘することによって出てくる。
本当ならそこら辺にいっぱい転がってる筈なんだがな・・・。」
「ん?どういうことだ?」
「昨日も言った通り、水の石は俺達にとって不必要な物だ。
採掘したところで皆そこら辺に放り投げる。
しかし、次来る頃には放り投げてあった石が何故か消えているんだ。」
「当たり前じゃないの。
水の石は魔石ですもの。
水系のモンスターが好んで食べるわ。」
「モンスターは魔石を食べるのか!?」
「ええ。
魔石を食べることにより、モンスターは強くなるの。
魔石の魔素を食べてるの。
だから、このまま水の石を放置し続けると全てのモンスターが強くなって、この山に入ることが出来なくなるわよ?」

『えぇぇぇぇぇぇ!?』

「まあ、ご主人様の様に強ければ大丈夫だけれども、エルフやダークエルフの実力じゃねぇ・・・。」
「つまり、これからは水の石も回収しないといけないってことだな。」
「ええ。
これ以上、この山のモンスターを強くしたくなければね。」
「まさか・・・そんな事実が・・・。
レナ、感謝する・・・。
教えて貰えなかったら将来、俺達は鉱石を取ることが厳しくなっていた。
それは死活問題だからな・・・。」

だから、ここのモンスター達は強かったのか・・・。
オルフェノスがモンスターはBランクからと言っていたからな。
このままだったらホントにダークエルフ如きじゃ太刀打ち出来ない山になるところだったな・・・。

そして、俺達は山の中を進む。
「そうだ、お前たちこれを持て。」
俺は皆にオリハルコン製のツルハシを渡す。
「久しぶりの採掘だね!」
「いっぱい掘るわよ!!」
〈ミーナもやりたかったですぅ!!〉
「ミーナは危ないから駄目よ!
私がミーナの分まで掘ってあげるわ!!」
「採掘にゃんて初めてにゃん!
楽しみにゃん!」
「ルーシーちゃんは疲れることしなーい★」
「別に疲れないわよ?
ほら。」

レナがそこら辺の壁にツルハシを振り下ろす。
軽い一撃で壁が崩れ、偶々そこに水の石が埋まっていた。

「ええ!?レナちゃんそんなに力あったの!?」
驚くルーシー。
エルフ達やティナも驚く!
「このツルハシはどんなに力が無いものでも簡単に掘れるようになっている。
我が創り出した特別製のツルハシだからな。
だから、疲れることもなく掘ることが可能だ。
ルーシーもやってみろ。」

ハルトにツルハシを渡され、渋々壁を掘りだすルーシー。

「じゃあやるよー★えいっ☆」
ルーシーが力いっぱい壁に向かってツルハシを振り下ろすと凄い勢いで壁が砕け散る!!

「きゃぁ!!」
「壁が弾け飛んだにゃん!!」
「ルーシー!
お前はレナよりも力があるんだから思いっきり降ったら駄目だろ!」
「だってー★」
「な、なんて凄い道具なんだ・・・!」
「これがあれば鉱石なんて簡単に採掘できますね・・・!」
「こんな道具があったなんて・・・・!」
「ん?お前達はどうやって採掘したんだ?」
「土魔法が使える者が時間をかけて掘っているのだが・・・。」
「一回掘るのに10分から20分もかかる。
だから、一日の収穫量は重さで言うと50キロ程かそこらで・・・。」

「たった50キロなの!?
タナトスならそんなの一瞬よ?」
「まあ、我にはスキルもあるからな・・・。
鉱石を見つけるなど、不肖の作業だ・・・。
さあ、刮目するがよい!」

《洞窟王の奇跡!!》
ハルトがスキルを発動させると、あちこちと壁が壁が光りだす!

「壁が光りだした・・・?」
「その光っているところをこのツルハシで採掘するがいい。」
サブリナはハルトからツルハシを受け取り、光っている部分にツルハシを振り下ろす!

サクッ!!

「わあ!見てください!!
鉱石が埋まってますよ!
それにしてもすごいです!!
簡単に掘れました!」
「なんと!?
これならあっという間に鉱石を採掘出来る!!」
「すげぇ!!
普段何処にあるか分からないからさらに時間が掛かるのに!!」

「くっくっくっ・・・
我に不可能はない。
さあ、貴様らもこのツルハシを使い、採掘に忘我するがよい!!」

『おー!!』

それから採掘が始まる。
水の石も沢山採れた。
しかし、その石を鑑定すると・・・

〈水の魔石(小)〉
湧き水程度の水を発動させることのできる魔石。

・・・これじゃ船は動かない。
辺りを見ても水の石は〈小〉しかない。
この階層は駄目だな。

《八咫烏の導き!!》
大きな黒い鳥がハルトの前に現れる!!

〈ガァァァァァァァァ!!〉
「八咫烏!最上階まで案内してくれ!」

〈ガァァァァァァァァ!!〉
「この階層は駄目だ。次に行こう。」

『え!?』

「なんだ?不満か?」
「いや、楽しくなってきたところだったから・・・」
「上の階に行けばもっと良いものが掘れる。
金とか銀もあるだろう。」

『金!?銀!?』

3人は驚愕する!

「なんだよー!先に言ってよー!
タナトス様ー!
よっしゃ!
金と銀を大量に掘り起こすぞ!!」

金、銀と聞いてきてさらにやる気を出すジーク!

「まさか、そんな高価なものまで掘れるとは・・・!」
「それがあればエルフの国も潤いますね・・・!」
目をキラキラ光るさせる二人。

と言うことで、採掘作業を中断し俺達は先に進むことにした。
階段までは八咫烏が案内してくれるので、迷うことなく進むことが出来る。
だけど、ここは山。
やはり、モンスターが現れる。

「よし、ここは俺が相手を・・・」
「待て!オルフェノス!!」
「え!?」
「折角のモンスターだからな。
我が呪われし魔眼よ!!
その哀れなモンスターの正体を暴け!!」

《鑑定(アプレイザル)!!》

〈ウォーターラビットlv58〉
Bランク(元Cランク)
水の魔石によりパワーアップした水うさぎのモンスター。
生えてる角や水魔法で攻撃してくる。
角、毛皮、肉が高価で売れる。

「やはり、水の石でランクが上がっている。
角と皮と肉が売れるらしいから綺麗に倒さないとな。」
「・・・売れる・・・?」
「そうか、エルフにはそんな文化がないんだな。
まあ、話はあとだ。
見てろよ・・・。」

そう言うとハルトはアイテムボックスから真・覇王幻影剣を取り出し、一瞬でウォーターラビットの頭と胴体を切り離す・・・!!

『!!!!』

「嘘だろ・・・!
Bランクを一瞬で・・・!?」
「タナトス様はこんなにも強かったの・・・!?」
「当たり前じゃない!
ご主人様は世界最強よ!
ドラゴンだって一撃で倒すんだから!!」

ドヤ顔のレナ。

『ドラゴンを一撃ィィィィィィ!?!?』

「お、俺達は逆らってはいけない人間に歯向かったのか・・・」
「・・・生きてて良かった・・・!」

ダークエルフの二人は寒気を感じたと同時に生きてる幸せも感じた・・・。

「よし、綺麗に斬れたな。
これを・・・」

《真・完全解体秘術!!》
倒されたウォーターラビットは綺麗に素材と変わってゆく。

「あっという間に素材に・・・!?
解体するのだって大変なのに・・・!」
「ん?お前達、素材は集めないんじゃないのか?」
「いや、肉は別だ。
俺達はモンスターの肉と育てた野菜しか食べ物がないからな。」
「そりゃ、そうか。
じゃあ皆のために肉を大量に持っていかないとな。」
「貰ってもいいのか!?」
「当たり前だ。我は神の使者だぞ?
我は困っている者の味方だ。」

「ありがとうございます!!
助かります!!」

まあ、若干一匹、〈ええっ!!〉って顔したフェンリルがいたが無視する。

そして難無く5階まで辿り着いた俺達。
2階から5階で見つかった水の石は〈中〉までだった・・・。
船を動かすには〈大〉以上が欲しい・・・。
この上にあるといいが・・・。

「あっという間に5階に着いたな・・・。」
「俺達来るのに一日位かかりますよね・・・?」

啞然とする二人・・・。

「さあ、上に行くぞ。八咫烏、頼むぞ!」

〈ガァァァァァァァァ!〉
俺達は八咫烏の案内通りに進む。

途中出てきたモンスターはハティによって瞬殺される。
最近戦ってなかったから嬉しそうだ。

そして、八咫烏が壁の前で止まる。
ハルトの前にウインドウが表示される。

〈階段はこの先。隠し扉あり。〉
「やっぱり睨んだ通り、この先に階段があるらしい。」

「えぇぇぇぇぇぇ!
ここはいつも通り過ぎる場所ですよ!
こんな、なんの変哲もない通路にあるなんて!」

ジークがガックリして壁に手をつく。

カチッ

「へ!?」

ガガガガガガガガガ・・・・・

壁が動き出し、階段のある部屋が現れる!!
「へ、部屋が現れた・・・!」
「さ、流石は策士様です!!お手柄です!!」
「・・・うそ・・・?」

開いた本人が1番驚愕していた!

「またこのポンコツが隠し部屋見つけた!?」
「ホントに運がいいね!ポンコツなのに!」
〈ポンコツの癖にやるですぅ!
運のいいポンコツですぅ!〉
「こんなに運がいいのにポンコツとか・・・」
「でも、これで次に進めるにゃん!
ありがとにゃん!ポンコツ!」
「こんなポンコツどうでもいいから、早く上に行って採掘しよーよ★」
「策士様に向かってポンコツとはなんですか!!
謝ってください!!」

『絶対に嫌。ポンコツはポンコツだし。謝る筋合いなし!!』

「きぃぃぃぃぃ!!」
「うう・・・皆揃って酷い!!」
言い合いになるサブリナとハルトガールズ。
なんとかオルフェノスがその場を抑え、騒動が止む。

俺はハティ達と見てるだけだったがな。
だって面倒くさいし・・・。


そして、俺達は六階に上がっていく・・・。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

新米冒険者がダンジョンで怪しい男達の取引現場を目撃。更に背後から近づく仲間に倒され、その男に実験中の薬を飲まされて目が覚めると……?

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
パロ村に住む『ルディ』は茶色い髪、百六十五センチ、普通の肉体の持つ十五歳の少年だ。 特別強くも賢くもない、そんなルディの夢は冒険者として街で暮らす事だった。 冒険者とは、誰でも即日採用されるぐらいに、採用基準が恐ろしく低い仕事で有名な仕事だ。 質素な家の前で両親と別れの挨拶を済ませたルディは、馬車に揺られて街を目指した。 そして、八日間の旅で『ハルシュタット』の街に無事に到着する事が出来た。 でも、既に手持ちのお金三万ギルは、馬車台と食費で一万ギルまで減ってしまっていた。 これではまともな装備を買う前に、宿屋に何日泊まれるか分からない。 ルディの武器は片刃の鉄の短剣、防具は普段着の白の半袖シャツ、茶の半ズボン、布のパンツ、布の靴だけという頼りないものだ。 槍のように尖った建物という情報を手掛かりに、ルディは冒険者ギルドという冒険者になれる建物に辿り着いた。 そこで綺麗な受付女性や爽やかな青年冒険者の手を借りて、無料の仮登録の冒険者となり、初クエストに挑戦する事になった。 初クエストは、洞窟にいるスライムという魔物を倒して、スライムの核を集めるものだった。 冒険者ギルドで貰った地図を頼りに、洞窟に辿り着いたルディは、洞窟の奥を目指して進んでいく。 そして、その洞窟で灰色の服と黒色の服を着た、二人の男の怪しい取引現場を目撃してしまった。 危なそうな話にルディは急いで人を呼びに行こうとするが、突然背後から、もう一人の男に襲われてしまうのだった。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー
ファンタジー
まさに社畜! 内海達也(うつみたつや)26歳は 年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに 正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。 夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。 ほんの思いつきで 〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟 を計画するも〝旧友全員〟に断られる。 意地になり、1人寂しく山を登る達也。 しかし、彼は知らなかった。 〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。  >>> 小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。 〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。 修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。

ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~

島風
ファンタジー
とある貴族の次男として生まれたアルベルトは魔法の才能がないと蔑まれ、冷遇されていた。 そして、16歳のときに女神より贈られる天恵、才能魔法 が『出来損ない』だと判明し、家を追放されてしまう。 「この出来損ない! 貴様は追放だ!!」と実家を追放されるのだが……『お前らの方が困ると思うのだが』構わない、実家に戻るくらいなら辺境の地でたくましく生き抜ぬこう。 冷静に生きるアルだった……が、彼のハズレスキルはぶっ壊れだった。。 そして唯一の救いだった幼馴染を救い、大活躍するアルを尻目に没落していく実家……やがて毎日もやしを食べて生活することになる。

1人だった少年は貴族と出会い本当の自分を知っていく

杜薛雷
ファンタジー
 前世、日本という国で暮らしていた記憶を持つ子供リディルは、知識を使って母親と二人、小さな村で暮らしていた。 しかし前世の知識はこの世界では珍しいもの。どこからか聞きつけた奴隷商人がリディルの元にやって来た。  リディルを奴隷にしようとやって来た商人からリディルを守った母親は殺され、リディルは魔物に襲われて逃げた。 逃げた森の中をさ迷い歩き、森を抜けたときリディルは自分の生き方を、人生を大きく変えることになる一人の貴族令嬢と出会う... ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  この作品が初めての投稿なので不安しかないです。初めは順調に投稿出来ても後々詰まってしまうと思うのでそこは気長に待ってくれると嬉しいです。 誤字脱字はあると思いますが、読みにくかったらすいません。  感想もらえると励みになります。気軽にくれると有り難いです。 『独りぼっちの少年は上級貴族に拾われる』から改名しました

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫
ファンタジー
 孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。  僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。  そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。  それから、5年近くがたった。  5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。

史上最強の料理人(物理)~役立たずと言われパーティを追放されましたが、元帝国最強騎士なのは内緒です~

水無土豆
ファンタジー
 ヴィルヘルムにガレイトあり。  世界最大の国家、ヴィルヘルム帝国有する騎士団〝ヴィルヘルム・ナイツ〟  その騎士団にひとりの男がいた。  男の名はガレイト・ヴィントナーズ。  彼は出自こそ華やかなものではなかったが、皇帝にその才を見出され、騎士団に入団。  団内でもその才を遺憾なく発揮し、やがて、当時の団長を破り、新たな団長となった。  そして時は流れ――戦中。  ガレイト・ヴィントナーズは敵国の策に嵌り、行方知れずとなってしまう。  団長を失い、戦力を大幅に削られたヴィルヘルム帝国。  もはや敗戦必至かと思われたが、結果は帝国側の圧勝。  その上、行方不明だったはずのガレイトの帰還が重なり、帝国内は一気に祝勝ムードに。  ……だが、ガレイトはひとり、浮かない表情のまま。  彼は勝利に酔いしれる人々を尻目に、一路、王の待つ玉座へ。  そして、誰もが耳を疑うような発言をする。 「王よ! どうか私の、この誉れある騎士団を辞する愚行をお許しいただきたい!」  ざわざわ……!  城内にいた騎士たちだけでなく、付き人や兵たちからもどよめきが上がる。  そんな中、玉座にて頬杖をついていたヴィルヘルム王が、口を開いた。 「……ふぅん。ちなみに、団長辞めてなにすんの?」 「りょ、料理人に、なりたい……です……!」  人々のどよめきがさらに大きくなる。 「へぇ、コックか。いいね、素敵だね。いいよ、なっても」  即答。  ここで、人々のどよめきが最高潮に達する。 「あ、ありがたき幸せ……!」  こうしてガレイトは呆気なく、世界最強の騎士団、その団長という称号を捨てた。  彼はここより心機一転、料理人として新しい人生を歩み始めたのである。  帝国はこの日、ガレイトの新しい門出を祝う者。  放心する者。  泣き崩れる者。  軽蔑する者。  発狂する者たちとで、混迷を極めた。  そして、さらに時は流れ――帝国中を巻き込んだ騒動から数年後。  ガレイトは見知らぬ国の、見知らぬ土地。  そこの底辺冒険者たちの付き人として、こき使われていた。  この物語は今まで剣を握り、プレートアーマーを身に纏っていた男が、包丁を握り、エプロンに着替えて、数多の食材たちと戦う(主に悪戦苦闘する)物語である。 ※この物語の登場人物は基本的に全員ふざけています。

処理中です...