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第12章 神の使者、エルフの国に降臨

第124の宴 ハルトの城のラビリンス

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やっとことで城の中に入れたエルフ達。
二百人近くいたエルフ達も残り50人ほど。
ハティ達・・・結構やったな・・・。
さて、何人上に上がって来れるかな・・・。

「城の中に入ればこっちのもんじゃ!
タナトスめ・・・きっと焦ってるに違いない!
ふふふ!」
ニヤニヤするルミリアン。

「これも全て策士様のお陰です!」
「まあ、当然のことをしたまでだ。」
(全部ラッキーだけどね・・・。)
「流石策士様・・・!
カッコいいです!!」
「え、かっこいい!?」
ドキッとするジーク。
「はい!私は何故か策士様を見るとドキドキしますから・・・。
きっと策士様はかっこいいのです・・・。」
顔を赤らめて告白するサブリナ。

「え!?それって・・・」
「何をくっちゃべっておる!!
先に進むぞ!
さっさと妾の城を取り戻すのじゃ!!」

(くっ!女王め!邪魔しやがって!!)

エルフ達は城の中に入る・・・。
するとそこにはハルトとミーナが立っていた。

「よくここまで辿り着いたな・・・。」
「雑魚のくせにぃなかなかやるですぅ!」
「タナトス!妾の城を返して貰うぞ!!」
「くっくっくっ・・・
何を言っている?
ゲームはまだ終わってないぞ・・・?」
「なんだと!?」
「第4エリアはこの城の中・・・。
果たして貴様らは上に上がる階段を見つけ出せるかな・・・?」
「何を言っておるのじゃ!!
階段はその扉を開けた目の前じゃ!!」

「まだ気づいてないのか・・・?」

「へ?」
「女王様・・・城にこんな扉ありましたっけ・・・?」
「そういえば、こんな扉なかったですぞ!
城の入口に入れば階段が直ぐに見えたはずですぞ・・・。」

「くっくっくっ・・・
この扉は我が創り出したものだ・・・。
我のスキル〈煉獄之迷宮〉により、この城は偽りの空間となっている・・・。
果たして貴様らに我の創り出したダンジョンを攻略出来るかな・・・。」

「ダンジョン・・・?何だそれは!?」
そういえば、この世界にダンジョンなんてなかったな。
まあ、いいか。
「まあ入ればわかるさ・・・。
くっくっくっ・・・
では、我は王の間で待っているぞ・・・。
ミーナ、行くぞ。」
「はいですぅ!」

ミーナは空間魔法を展開し、二人は空間の向こうへ消えていく。

「迷宮・・・ダンジョン・・・初めて聞く言葉じゃな・・・。」
「大丈夫ですよ!こっちには名策士がいますから!
ね!策士様!」
「・・・ダンジョンなんて初めて聞くものだからな・・・。
とりあえず、入ってみるしかないか・・・。」
「いやーん♡私こわ~い♡
ルーン様♡ちゃんと私を守ってね♡」
「あ、ああ。
兵士長の名にかけてお守りしますぞ!」
「素敵♡」
「何がいやーんだ・・・
ぶりっ子してんじゃねえよ・・・気色悪い・・・」
「ジーク・・・何か言ったかしら・・・?」
邪悪なオーラを纏うケリー。
「いえ、何も!」
「兎に角!中に入るぞ!
相手はあのタナトスだ!
全員油断するなよ!!」

『はい!!』

そして、部下達が扉を開ける。
城の中はハルトのスキルによって迷宮化されていた!

『何じゃこりゃァァァァァァァァァァ!!!』
一同全員叫びだす!

「わ、妾の城が・・・」
「まるで山の中みたいだ・・・。」
「確か、あの方は攻略と言っていた・・・
つまり、城を山のようにしたということですな・・・。」
「山みたいに地形が入り組んでいるってことか・・・。
もう只管進むしかないな・・・。」
「オルフェノス様!
我らが先陣を切ります。
どうぞ、ご安心ください!」
「そうか・・・確かお前たちは探索スキルを持っていたな・・・。
よし、任せたぞ。」
「はっ!」

ダークエルフの探索班がスキルを使い、ダンジョンの地図を創り出す!
探索スキルにはマッピングというダンジョンの地図を創り出すスキルがある。
攻略が難しい場所ほど時間がかかる。

今回掛かったのは5分・・・。

「5分も掛かるとは・・・
ここはかなり攻略が大変ですね・・・。」
「しかし、地図があれば有利になる。
どれ、見せてみろ。」

オルフェノスの部下がオルフェノスに地図を渡し、地図を開く。

「こ、これは・・・!?」
地図に書かれていたのは、巨大迷路のように複雑な地形のダンジョンマップ。
真ん中に階段があり、その周りは複雑な迷路となっている。

「これは地図がなければ完全に迷子だな・・・。」
「地図があればこっちのものじゃ!
さあ、いくぞ!」

一行はダンジョンを進む。
ダンジョンは3人が並んで歩けるくらいの広さ。
少し狭い通路を進んでいくと・・・。

「ギャァァァ!!」
列の前から悲鳴が聞こえる!

「どうした!?」
「オルフェノス様!落とし穴です!!
前にいるものが何人か落とされました!」
「何じゃと!?」
「この入り組んだ地形に加え、罠まであるのか・・・!」
「慎重に進め!落とし穴に気をつけろ!」

それから何人も落とし穴に落とされる。
下ばかり気にしていると上から一部の天井が落ちてきて潰されてしまう!

「上からだと・・・!?」
「おい!生きてるか!?」
天井が上がるとそこには誰もいなかった・・・。

よく見ると天井にも常闇の絶望が仕掛けてあり、潰された者は闇に餐まれていた・・・。

「死んではいないか・・・皆天井にも気をつけろ!」

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

「ん?今何か聞こえませんでしたか・・・?」
「・・・後ろから・・・?」

後ろを振り向くと大きな黒い球体が迫ってくる!

『ギャァァァァァァァァァァ!!』
走って逃げるエルフたち!
エルフたちに常闇の絶望を纏った球体が迫ってくる!
足の遅い者達はその球体に餐まれてしまった!

「た、たすけ・・・!うわァァァァァァァァ!」
「うう!妾の部下達が!!」
「今は走れ!
お前まで餐まれるわけにいかないだろ!!」

「すまぬ!!必ず助けるからの!!」
「あの曲がり角を右に!」

必死に走り、もう少しのところで・・・

「ギャァァァ!!」
「ここで落とし穴かよっ!!
皆翔べ!!そしたら曲がり角に逃げろ!!」
必死に逃げるエルフ達!
何人かは必死過ぎて右に曲がってしまう!

ルミリアン達は左に曲がり、難を逃れるが・・・

ピタッ!!

球体はその曲がり角で止まってしまう!

「止まった!?
こ、これでは右に行った者たちとはぐれてしまう!!」

球体はそのまま微動だにしなかった・・・。

「仕方ない・・・先を進むぞ。」
沢山いたエルフたちも残りわずか・・・。
ルミリアン達6人と十名の部下たち。

「まだ半分も進んでないのに、もうこの人数とは・・・。」
「せめてここにいる者たちだけでも階段に辿り着かなくては・・・。」

その矢先だった・・・。

〈ガルルルルルルルルル〉

小さくなったハティとアセナが後方に現れる!
「あれは先程のフェンリル!?
何故ここに!?小さくなってるし!」

「ねえ、なんか迫ってきてない・・・?」

「そうじゃな・・・
徐々にこっちに来てるような・・・。」

〈グギャァァァァァァァ!!〉

『ギャァァァ!!やっぱり襲ってきたァァァァァァァ!!』

全速力で逃げるエルフ達!!
しかし直ぐに追いつかれてしまう!!

「くっ!ここまでか・・・!」

オルフェノスが諦めかけたその時・・・

「オルフェノス様!!ここは私達が!!」
「女王様!!先に行ってください!!」

残った部下達が6人を守るように壁になる!

「お前たち!何をしている!?」
「やめろ!!お主達ではそのフェンリルには勝てぬぞ!!」
「そんなのわかってます!!
それでも時間稼ぎ位はできます!!」
「兵士長!!女王様を連れて王の間へ!!」
「お前たち・・・!・・・わかった!
私はお前たちの勇姿を誇りに思うぞ!!
お前たちの勇姿を無駄にはしない!!
さあ、女王様!!先に行きますぞ!!」
「しかし・・・!」
部下を置いていくことを躊躇うルミリアン。
「オルフェノス殿!!女王様を頼みます!!
我々は部下たちの為に先に急ぐのです!!」
「・・・お前達・・・ここは任せるぞ!!」

オルフェノスはルミリアンを担ぎ、走り出す!

「な、何をするのじゃ!!離せ!!あの者達が・・・!」
「ルミリアンよ・・・。
お前が今やることは部下の心配をすることではない・・・
部下達の為にこの城を取り返すことだろう!!
あいつらの決意を無駄にするな!!」

「ぐっ!!」
歯を食いしばり、涙を流すルミリアン。

「お前たち!!死んだら許さないからな!!
死んでも生き残るのだ!!
これは女王の命令じゃぞ!!」

6人はその場から走り出す・・・。

「はん!死んでも生き残れって・・・
お前たちの女王は滅茶苦茶だな!」
「そうですね・・・でも、あれでこそ我らの女王様です!!
女王様の命令は絶対!!死んでも生き残ります!!」
「仕方ねえ・・・やるぞ!てめーら!!」

『ウオオオオオオオオオオオ!!!!』

フェンリル達に立ち向かうエルフ達!



そして、ルミリアン達は・・・。

「はぁはぁはぁ・・・ここまで来れば・・・」
「今はどこ辺りなの?」
「地図で言うとこの辺りだ。
まだまだ先だな・・・。
この壁の向こう側は階段なのにな・・・。」
「はぁはぁばぁ・・・疲れた・・・!
ちょっと休憩・・・。」
ジークが壁に手をかける。

カチッ!

「へ?」

ズズズズズズズズズッ!!!

壁が動き出し、目の前に階段が現れる!

『えぇぇぇぇぇぇ!?!?』

ジークが手をついたところが偶々隠し通路のスイッチだった為、隠し通路が開かれる!!
「す、凄いです!!策士様!!
まさか隠し通路を見つけてしまうとは!!
大手柄です!!
やったぁぁぁぁぁ!!」

嬉しさの余り抱きつくサブリナ!

「ちょっと!そんな大胆な!!あ・・・いい匂い・・・!
そして柔らかい・・・!」
「はっ!私としたことが!!ごめんなさい!!」
顔が真っ赤の二人。
(策士様に抱きついてしまった・・・!ドキドキが止まらない!!)
(見かけによらずおっぱい大きいな・・・!
いい匂いだし!!儲けたな!!)

「でかしたぞ!ジーク!!」
「やるじゃない!!」
「これで遂に王の間にいるけぞ!!
双子の片割れの大手柄じゃ!!」
「ま、まあ!俺の手にかかればこんなもん余裕ですよ!!」
(超ウルトララッキィィィィィィ!!)

そして、エルフ一行はまたもやジークのラッキーによりクリアするのであった・・・。

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