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第10章 神の使者、魔界に降臨

第101の宴 決着・・・!そして・・・

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「貴様は俺には勝てない・・・。」
「ほう、大した自信だな・・・?
雑魚のくせに・・・。」
「今から俺はパワーアップする・・・。
これを飲んでなぁァァァ!!」

ヘルライザーが謎の薬の入った瓶を見せる!!

「そ、それは!!
だ、駄目よ!ライくん!!
それを飲んだら・・・!」
「寿命が縮まるんだろ・・・?
そのくらい別に構わねぇよ・・・!
こいつを殺せるならなァァァァァァァ!!」

そう言うとヘルライザーはその薬を全て飲み干してしまう!!

「うう・・・!す、凄い・・・!
身体中に溢れんばかりの魔力と力が・・・!!
なんて素晴らしいんだ!!」

「??ルーシー、あの薬は何だ・・・?」
「・・・あれは魔界で禁止されてる秘薬よ・・・
あれを飲むとレベルが3倍になるものなの・・・
その代わり・・・
寿命が・・・!!」

涙を流すルーシー。

「・・・どのくらい減るんだ?」
「わからないの・・・!
人によって違うの・・・。
でも、ライくんは元々のレベルが多いから・・・きっと・・・!」

あいつのレベルが80。
3倍で240。
160上がるのか・・・。
確かにやばいかもな・・・。

「さあ・・・戦おうぜ・・・!
今なら貴様を確実に殺せそうだ・・・!!」
「くっくっくっ・・・
レベルが上がったくらいで調子に乗るなよ・・・?」
「レベルだけではない!!
魔力も力もスピードも!!
全ての能力値が上がったのだ!!
最早、貴様が勝てる見込みはない!!」
「果たしてそれはどうかな・・・。
この試合、面白くするために場外はなしだ。
どちらかが倒れるまでやるぞ?」
「いいであろう・・・!
俺と戦うことを後悔させてやる!!
死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

〈ということで、決勝戦最終試合!!
ヘルライザー選手対タナトス選手!!もう始まってますが、試合開始!!〉

ガキィィィィン!!
開始と同時に剣の撃ち合いが始まる!!
両者一歩も惹かない攻防戦。
仲間たちも観客達も皆、息を呑み、その戦いを見守る!
「神の使者と言えど、所詮は人間・・・!
そろそろ疲れてきたんじゃないか・・・?
魔族と人間では体力も身体能力も違う!!
俺はまだまだいけるぞ?」
「ほう・・・じゃあ、もっと本気で来いよ・・・!
もっと我を楽しませろ・・・!!」

「いいだろう!!
カッコつけられるのも今のうちだ!!
はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ヘルライザーは魔力を込め、能力を更に上げる!!
腕の筋肉も更に盛り上がり、今までとは違うオーラを放つ!

「さて・・・じゃあ、早速貴様を殺す!!」
「ふっ!やれるもんならやってみろ!!」

今までとは違うスピードでヘルライザーがハルトを襲う!!
全ての能力値が上がり、ハルトを押し始める!!

「ふっ!どうした!!
完全に防戦となっているぞ!!
俺は今、パワー、スピード共に貴様を上回っている!!
貴様に勝ち目などない!!
しねぇぇぇ!!!!」

ヘルライザーの一太刀がハルトの鎧を直撃し、ハルトは会場の壁にふっ飛ばされる!!

ドガァァァァァァン!!

「ご主人様!!」
「フッフッフッ!
他愛もない!!
あいつを倒したら次は貴様らの番だ!!」

ヘルライザーは仲間たちに向かい、言い放つ。

「くっくっくっ・・・!」
「何!?」
「ご主人様!!」
「いいぞ・・・ヘルライザー・・・!
楽しくなってきたなァァァァァァァ・・・!」
「ま、まさか傷一つついてないだと・・・!?」
「当たり前であろう・・・?
我は神の使者、タナトス・・・!
貴様如きの攻撃でやられるわけ無いだろう?

さて、我も少し本気を出してやろう・・・。

楽しませてくれよ?」
「な、なんだと!?」

そう言うとハルトはいつの間にかヘルライザーに肉薄し、再び剣の撃ち合いを始める!!
「くっ!先程までとは全然違う・・・!」

「当たり前であろう?
先程までは全く本気を出してないのだからな!」
「何!?」
「ほら、どうした?
もっと我を楽しませろ・・・!
斬り殺してしまうぞ?」
「クソぉぉぉぉ!!」

ヘルライザーは俺と距離を取る!

「こうなったら・・・」
先程の薬を更に飲むヘルライザー!
「だ、駄目よライくん!
それ以上は!!ライくんが!!」

「うるせぇ!!これで更に俺は強くなった・・・!
今まで馬鹿にしやがって・・・!
死ねぇぇぇぇぇ!!」

更に能力を上げ、ハルトに襲いかかるヘルライザー!

「いいぞ!これだ・・・!
戦いはこれでなくては楽しくない!!」

お互い、本気の戦いが始まる・・・!
両者一歩も引かない展開に周りはただ見守ることしかできなかった・・・。

そして二人の打ち合いは二十分を超えた・・・。

「ご主人様・・・大丈夫かな・・・?」
「何言ってんのよ・・・。
ご主人様を見てみなさい・・・。」
「へ?」
「タナトス様・・・凄い楽しそうですぅ!」
「ずっと楽しそうに戦ってるのよ・・・。
こんな誰も近寄れなそうな戦いを・・・。
そんなご主人様が負けるわけないわ!!」
「そうだね!!」
「タナトス・・・頑張れ!
妾を・・・魔界の者達を救ってくれ!!」

ソフィアの声援を皮切りに会場の観客も負けじと声援を送る・・・!

「観客共が騒がしいな・・・」
「貴様のとこの雑魚ども以外は我の味方だからな。
耳障りなのはしょうがないだろう・・・。
貴様人気ないしな・・・。ゴリラだし。」
「煩い!
貴様を倒して、貴様に肩入れした魔族を死ぬまでこき使ってやる!!」
「ほう・・・ならば、そろそろ遊びは終わりにしてやろう・・・。」
「なんだと・・・!?」

「貴様がレベルを何倍にしたように我も倍にしてやろう・・・。」

「何!?
まさか貴様もあの秘薬を・・・!?」
「我は貴様のようなバカではない!!
さあ、断罪の刻!!
貴様の悪の心を終焉に誘ってやろう!!」

《幻影のマリオット!!》
スキルを発動させるとハルトが光だし、二人に増える!!

『ギャァァァァァァァァ!!
拷問のタナトスが二人にィィィィ!!』

お前らが驚くのかよ!!

「た、タナトスが二人に・・・!
は、反則じゃねえのか!?」
〈いえ、スキルによる分身はルール違反ではありません!〉
『そんなこと言ったら貴様の秘薬こそ反則だからな?』
「くっ!二人まとめて殺してやる!!」
ヘルライザーが一人のハルトに襲いかかる!
剣と剣の打ち合い!!

しかし!

「背中がお留守だぞ・・・?」
もう一人のハルトが容赦なく斬りつける!!

「ギャァァァ!!くそっ!!」
切りつけたハルトの方を振り返ると後ろのハルトが蹴りを入れる!!

「ぐわぁぁ!」
「隙だらけだぞ?ヘルライザー!」
蹴られて隙だらけになったヘルライザーの顔面をもう一人のハルトが殴りつける!

「ぐはぁぁ!」
そこからは二人のラッシュが始まる!!
傍から見たらリンチだ!!

「ぐはァァァァァァァァ!!」
ボコボコにされたあと、二人に蹴り飛ばされ吹っ飛ぶヘルライザー!

「ご主人様が二人・・・!
両手にご主人様とか・・・考えただけでも濡れてきちゃうわ・・・♡」
「そうだ!
ご主人様が5人になれば、一人につきご主人様一人と結婚できるよ!!」

『確かに!!』

「・・・いや、やらないからな?」

『そんなー!!』

「はあ、はぁ、はぁ、はあ・・・。
くそ・・・!畜生ォォォォォ!!!」

『もう降参したらどうだ?
もうお前に勝ち目などない・・・。』

「誰が降参など・・・
俺は貴様などに負けねぇ!!
俺の負けなんてありえねぇ!!
俺が魔界の支配者なんだよぉぉぉぉぉ!!」

ヘルライザーが両手を広げ魔力を掌に集めだす!!
何!?
その必殺技をポージングはまさか・・・!
ファイ○ルフラッシュか!?

「これが俺の最強魔法だ・・・!
喰らえ!!」

《ファイナルダークバスター!!》
掌に集めた魔力を目の前で合わせ、魔法を発動するヘルライザー!!
やっぱりパクリじゃねーか!!
怒られるぞ!!
色んな所から!!

とてつもなく邪悪なオーラを纏った波動がハルト達を襲う!!
「二人纏めて闇に飲まれるがいい!!
これを食らって生きていた者など・・・
え・・・!?」

二人のハルトが魔剣にヘルライザーの魔法を吸収させる!!

『くっくっくっ!
残念だったな・・・。
我が呪われし魔剣は貴様如きの魔法など、余裕で吸収できる・・・!
さあ、今度は我らの番だ・・・!
喰らえ!!』

《覇王暗黒双竜斬!!》

ハルト二人から放たれた暗黒の斬撃がヘルライザーを直撃する!!

「ギャァァァァァァァァァ!!!」
「ライくーーーーん!!」

バイオレットルーシーの叫びも虚しく、ヘルライザーは遂に地面に倒れた・・・!
その場で気絶するヘルライザー!

〈気絶・・・!
ヘルライザー選手気絶により、勝者!!
タナトス選手!!
よって次期魔王は!!
ソフィアだァァァァァァァ!!!〉

『ウオオオオオオオオオオ!!!!』

会場からの大歓声!!

「やったぁぁぁ!!ご主人様の勝ちだぁぁ!!!」
「流石は私のご主人様ね・・・♡」
「やっぱりタナトス様はぁ最強ですぅ!!」
「凄い試合だった・・・
タナトス・・・
本当にありがとう・・・!」

ソフィアは涙を流す・・・。

「まだだ・・・。」
『え!?また!?』
「まだ最後の仕上げが終わっていない・・・!」
『あ!成程!!』

ハルトは倒れているヘルライザーの元に向かう。
そこには弟を心配するバイオレットルーシーの姿が・・・。

「ライくん!!しっかりして!!」
「ルーシー・・・そこをどけ・・・。
今から其奴を浄化する・・・!」

「浄化・・・!?駄目・・・!
いくらタナくんでも許さない!!」
ルーシーは弟を守るように前に立ちふさがる!

《不動の魔眼!!》

「うう・・・!
動けない・・・!
タナくん!!
だめ・・・!
弟を殺さないで・・・!」

ハルトはルーシーの制止を気にも止めず、ヘルライザーの胸に手を置く。

《悪魂之浄化!!》

「だめぇぇぇぇぇぇ!!!」
ヘルライザーが光だし、悪の心を持ったヘルライザーが現れる!!

「へ・・・?ライくんが・・・二人・・・?」

《解除》

ルーシーの麻痺が解ける!
「我は殺しなどしない・・・。
これはヘルライザーの心にしがみついていた悪魂だ・・・。」

「悪魂・・・?」



「今から魂の浄化を始める!!」
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